create.freedesktop.orgでアイデアとリソースを共有しよう

オープンソース・ソフトウェアを成功させる要因の1つが、コードの共有と再利用である。freedesktop.orgのCreateイニシアチブは、この点を狙いとしており、InkscapeScribus、Krita、Open Clip Art LibraryGIMPなどの開発者たちや、個人的に興味のある人たちが集結している。ここに集まった人たちは、力を合わせて、一連の仕様の取りまとめに取り組んでいる。そして、これらの仕様によって、開発者やディストリビューションの作業が簡単になり、エンド・ユーザのユーザビリティも向上するものと確信している。

これらの仕様は、いかなるアプリケーションに対しても、準拠を義務づけるものではない。仕様についての議論に参加した場合であっても同じである。この協力作業は、そうしたものではなく、すべてにとってプラスとなるソリューションを生み出すことを期待してのものなのだ。

たとえば、共有リソースの仕様では、グラフィック・アプリケーションがブラシ、パターン、グラデーション、色見本を格納する場所を、ある共有ディレクトリの下にするよう定めている。具体的に言うと、現在のドラフトでは、art-supplies というディレクトリに配置することになっている。システム全体では/usr/share/art-supplies/、各ユーザでは~/.art-supplies/だ(ただし、このディレクトリ名については、まだ議論の余地がある)。

この案は、ユーザと開発者の双方にとって有益だ。たとえば、GIMP、Cinepaint、Kritaは、いずれも同じブラシ・フォーマットを使用する。利用可能な各ブラシはグレースケールまたはRGBカラーのラスタ・イメージである。プログラム本体には多数のブラシが装備されているし、ユーザは、ブラシを1から作成したり、既存のブラシに手を加えたりして、独自のブラシを作成できる。各ブラシはごく小さなファイルだが、まったく同じブラシを3か所に格納しておく手はないし、エンド・ユーザも、3つのアプリケーションすべてでカスタムのブラシ・サイズを作成し直す必要がないということを歓迎するはずだ。

また、別の例で言えば、将来有望で広く普及しそうな新しいグラフィックス・アプリケーションを人知れず開発している若者が仮にいたとして、その若者がこの仕様に準拠してコーディングすれば、考慮すべき心配の種が1つ減ることになる。あるいは、商用ベンダが自社のアプリケーションをLinuxに移植することになった場合に、「Linuxではこれをどのように実現するのか」という疑問への答えが、あらかじめ用意されていることになる。

一方、もっと盛んな議論の的になっている点として、ユーザの操作という面がある。たとえば、メディア・アプリケーションには、「ズーム」の類のコマンドがあるものがほとんどだが、これを実行するキーボード・ショートカットは、プログラムによって大きく異なる。

問題となっているのは、こうしたショートカットをアプリケーション間で統一したら、ユーザビリティは向上するかどうかという点だ。1つ言えるのは、アプリケーションを切り替えたときに、一瞬手を止めて考える必要がなくなるということだ。だが一方で、互いに関連性のないアプリケーションどうしでは、ズーム・コマンドで実行される処理の内容が大きく異なる可能性があるということも言える。たとえば、「100%にズーム」というコマンドを考えてみると、ラスタ・グラフィック・プログラムの場合なら、画面上の1ドットで1ピクセルを表すという意味になるのが普通だが、ベクタ・グラフィック・プログラムの場合なら、実際の出力サイズにズームするという意味になるのが普通だ。

この問題は、当然ながら、答えが簡単に出るものではない。Createプロジェクトを立ち上げた人たちもその点はわきまえており、自分たちの意図をきわめてオープンに表している。すなわち、規則で押さえつけるのではなく、問題について協力して議論を行うということだ。前述のような仕様には、継続的に修正が加えられている。このプロジェクトは、ダウンロード・ページに固定的に置かれているものではなく、メーリングリストやwikiで育まれ、成長を続けているものなのだ。

このプロジェクトに参加してみたいと思った人は、ドラフト仕様をひととおり読んだうえで、メーリングリストを購読し、議論に加わってほしい。

複数の製品を組み合わせて統合ソフトウェアにすると、その製品にとって推進力になるというのは周知のことだ。MicrosoftにはOfficeがあり、AdobeにはCreative Suiteがあり、AppleにはiLifeがある。統合ソフトウェアの形になっていると、買い手にとっては、価格の面で魅力がある(「必要ないものも入っているけれど、同じ値段でたくさん買えるぞ」)のに加え、統合性という面でも魅力がある(「これ一式をまとめて買えば、何はともあれ、きちんと動くのは確実だ」)。

となると、フリー・ソフトウェアにとっては、統合というのが努力目標になる。現時点では、Creative SuiteやiLifeと直接競合するような、オープンソースのグラフィック・ソフトウェアとマルチメディア・ソフトウェアを統合したものはない。このプロジェクトの試みによって、その日が来るのが近付くことになるかもしれないが、統合のメリットは、現時点でも得られるものがあるはずだ。

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