GOSCON、オープンソースに対する見積もり依頼を論ず

第1回Government Open Source Conference(GOSCON)が、先週、オレゴン州ポートランドで開催され、200名を超えるオープンソース関係者・行政職員・コンサルタントが参加した。カンファレンスでは、行政機関は考え方や方法を改めなければオープンソース・ソフトウェアが持つ低コストなどの利点を活用できないと説かれる一方、オープンソース・ソフトウェア側のコミュニティや企業もまた行政に食い込むためには、その考え方や方法を改めねばならないのではないかと論じられた。

昼食会では、MedsSphereのCEOでありオープンソース・ソフトウェア界の重鎮Larry Augustinが基調講演を行った。従来型の商用ソフトウェア業界では毎年ソフトウェア・ライセンス収入の70%が販売とマーケティングに費消されるというGoldman Sachsの数字を取り上げ、「(私たちもソフトウェアの販売で稼いでいますが、)お客様には効果的にお金をお使いいただいています」と笑わせ「どこか変ですよね」と述べた。

そして、ビジネス・モデルを変えつつあるオープンソース・ソフトウェアについて概要を説明し、オープンソースでは販売とマーケティングの努力が足らずソフトウェアの開発・改良に力点が偏りがちであるが、これは行政機関にとって好都合である。ただし、それは導入すべき適切なソリューションを見つけられるならばのことだと述べた。

「利用者は、(向こうから売り込みに来る)いつもとは違って、買いに行かなければならないのです」。そう述べたAugustinの背後のスライドには「オープンソース・アプリケーションは売られるのではなく、買われる」とあった。

満席のフロアからの質問に対して、Augustinは、オープンソース・アドバイザに相談すれば適切なソリューションが見つかるだろうが、行政機関は考え方を改める必要もあるだろうと答えていた。「Gartnerがしなくても、他の誰かがするでしょう」

引き続いて開催されたパネル討論――パネリストはCompiereの創立者Jorg Janke、Assemblaの社長Andy Singleton、GNOME Foundationのエグゼクティブ・ディレクターTimothy Ney、CounterclaimのCTOであるJim Beard――では、もう一方の当事者が話題となり、オープンソース・プロジェクトに対する見積もり依頼(RFP)への対応と、行政および機関によるシステムやソフトウェアの購入の特徴について論じられた。

パネリストの一人、Jankeは州政府機関から大規模な見積もりを依頼されたらどうするかと問われ、「会議室での試用」――数日間かけてソフトウェアが正常に動くことを確認する――を挙げた。そして、CompiereにもRFPが来ているが回答していないと述べ、ソフトウェアを数日間試用したいというのであれば応ずるがと付け加えた。

パネルの司会者、EasyStreetの社長兼CEOであるRich Baderは「RFPをひねり潰したって? 何てことをする人だろうね。調達部門の連中は首をひねっただろう」と述べて、行政側からの参加者の微笑を誘った。

Jim Beardは、自社がRFPに関わった経験から、RFPへの対応には何百時間もの作業と何万ドルもの経費がかかることがあると指摘した。これは、オープンソース企業にとって、小さい数字ではないという。

「私たちは喜んでお客様に説明しますが、無理に売りつけようとはしません。私たちが提供している購入前の試用というのは本当に素晴らしいことです。これは、プロプライエタリな企業では行われていません」

しかし、フロアにいたOpen Source Software Institute(OSSI)のエグゼクティブ・ディレクターJohn Weathersbyは、オープンソースのプロジェクトと企業は「相手の土俵に乗る」必要があるとコメントした。

「行政を相手にビジネスをしようというのなら、行政のルールに合わせなければなりません」

行政の機関や部門からのRFPにC++や.Netなどの類が含まれていればオープンソース・プロジェクトにとっては埒外であるという点では意見の一致を見た。しかし、Salem-Keizer Public Schoolsの技術・情報サービス担当ディレクターJohn Cuddyは、行政などの機関では購買手続きが決まっており、RFPなどの書類が必要だと指摘した。

「公金の支出には競争的手続きが必要です。RFPに回答しなければ行政との契約はありえません」

一方、カンファレンスの参加者の方を見ると、大方はオープンソースに慣れており、それぞれの所属機関ですでにオープンソース・アプリケーションを使っている者が多かった。カンファレンスに参加したのは、ソフトウェアとそのサポートに関する最新情報の収集が目的だったようだ。

参加者の一人、Larry Niswenderによると、同氏がCIOに就任したOregon State Lotteryでは、すでに、Apache、MySQL、PHP、Putty、Linux、FileZillaなどのオープンソース・ソフトウェアを使っているという。

「IT部門の職員はオープンソース・ソフトウェアをすでに活用しており、今後も注目していきたいと言っています。宝くじ業務の課題は、一般のビジネスと同様、常に動いていなければならないということです。いつでも動けなければならないのです。しかも、リスクは最小にする必要があります。ですから、できる限り最良の情報が得られるようにしています」

また、Oregon Department of RevenueのCIOであるStan McClainは、Webを介して従業員と顧客向けにサービスを提供するという同部門が設定している戦略の参考にとGOSCONに参加したのだという。「共有サービス環境」を掲げて来年発足するオレゴン州CIOカウンシルの会長に就任する予定のMcClainは、オープンソース・ソフトウェアによって州全域でのソリューションの活用が可能になるだろうと述べた。

「オレゴン州にある既存オープンソース団体との協力も考えられます」と述べ、Open Source Development LabsOregon State Universityの名を挙げた。「大きな可能性があり、私たちが率先して取り組むべきです」

ワシントンD.C.で統計調査部門などの行政機関のためのコンサルタントを務めていたDan Wojcikは、GOSCONでオープンソース・ソフトウェアの発展を目の当たりにしたという。「私自身、オープンソースを真剣に考え始めたのはつい最近のことです。参加してみて、オープンソースがこれ程に発展していようとは思いもよりませんでした。全く驚きです」

原文