オープンソース・アプリの行政向け全米支援センターがオープン
NCOSPRの目的は、行政機関に対し既存オープンソース・ソフトウェアの活用について助言すること、および、付属のリソース・センターを活用して各機関固有のソリューションを開発することにある。また、行政機関などの公的組織に関連するオープンソース・ソフトウェアの管理と保守を行うポータルGovernment Forgeを支えているのもNCOSPRである。
NCOSPRの設立者John Weathersbyは、次のようにその目的を語っている。「すでにあるのに同じようなものを作るつもりはありません。公的部門の必要性に対して既存プログラムで使えるものがないかを調べ、なければ新たに開発したり既存プログラムを修正したりしようというのです」
NCOSPRが自前で職員を確保するまでは、Open Source Software Institute――Weathersbyも運営に関わっている――がスタッフを派遣する。OSSIが引き受けたプロジェクトがNCOSPRを生んだという経緯を考えれば、これは当然の成り行きだろう。
Weathersbyは、活動の一端を次のように語った。ミシシッピ州湾岸行政区では刑務所の管理システムを更新する必要があったが、市販のプロプライエタリな刑務所管理ソフトウェアを導入すれば100万ドルもの経費が必要となるため、同行政区の保安官たちは安いソフトウェアを求めてOSSIに相談してきた。そこで、NCOSPRは、およそ35万ドルで専用のソリューションを開発したという。
「オープンソース環境での開発には6か月かかりました」とWeathersbyは言う。「開発したソリューションは行政向けに無償で提供する予定です。開発には35万ドルという公的資金を投入しましたが、その成果はすべての公的機関で利用することができます」。製作は完了しており、現在、テスト段階に入っている。完成すれば、Government Forgeに置かれることになる。
米国連邦政府にとってのメリット
L3-Titan Groupの主任研究員でありサイト管理者、そして米国国防総省(DoD)のコンサルタントでもあるMark Lucasによると、DoDは有用なオープンソース・ソフトウェアを探す際のリソースとしてNCOSPRを利用するだろうという。Lucasは、現在、同氏言うところの連邦政府向けオープンソース・ソフトウェア活用手引きをまとめているところである。
「オープンソースという考え方が、机上のものから現実のものになりつつあります。特に、DoDの研究開発分野では顕著ですね。今流行っている言葉に、改革が必要だ、という決め台詞があります。投下している資金は大きくても、システム・コストに食われて成果は今ひとつ。それで何とかしようと。現状を変えようとしているのです。実際、DoDはオープンソース技術の活用がそうした改革の一つの方法になりうると考えています」
さらに、現在のDoDはソフトウェアの維持コストに振り回されていると述べ、一例として、軍艦の建造コストの約半分がソフトウェアの経費だという事実を挙げた。この問題を解決するために、Lucasは、オープンソース・ソフトウェアを導入するための実用的な手順書の作成を計画している。それによると、6か月ほどで、試験を行い安定性を確認して新しいソフトウェアに切り替えられるという。
多くの行政機関がオープンソース・ソフトウェアに移行すれば、さらに多くの機関が追従するだろう。Weathersbyはそう言い、一方、NCOSPRが軌道に乗ればさらに多くのソフトウェアを行政や公的部門向けに改造できるだろうという。そして、重要なことは、利用できるものを示し、その効果と対象業務を明らかにすることだと指摘した。
「直ぐに使えるものを明示したいと考えています。同種の行政機関ですでに利用されているものなら安心して使えるでしょうから。私たちは、そうした同種の機関を結ぼうとしているのです」
大学にとってのメリット
南ミシシッピ大学(USM)はNCOSPRの本部を受け入れているだけでなく、主要パートナーともなっている。その結果、オープンソース・ソフトウェアのさらなる利用が始まりそうである。
USMの研究経済発展担当副学長Cecil D. Burge博士によると、NCOSPRはステニス宇宙センターにほど近い同大学構内に置かれており、興味深い研究が生まれる可能性がある。一方、湾岸行政区の経済的発展に繋がるのではないかと期待されているという。
また、同大学としては純粋な研究のみに参加し、それによって学術的な雰囲気を作りだすことになろうが、それは高等教育機関に本部を設置した非営利団体であるNCOSPRにとって大きな役に立つはずだと言う。
「大学というのは中立的な場です。理由はともあれ営利団体が同じことをしても動機を疑われるでしょう。大学であれば中立が保たれ、公平な参加が実現できると期待されます。おそらく、これが最大の効用でしょうね」
NCOSPRは501(c)3非営利団体として米国国税局に登録されており、公的資金による支援の取り付けや、資金の受け入れ方法が検討されている。Weathersbyは企業の参加を探っているが、その果たすべき役割を明確に描くことはできていない。
「企業に求めているのは、今のところ、助言と協力だけです。NCOSPRは公的な存在であるべきだと考えているからです。目的はオープンソースを公的資産として共有することですから、私たちが企業に資金の提供を求めることはありません」
当面は非営利団体であることを前提とし、USMの他、シラキュース大学やオレゴン州立大学OSLにNCOSPRのパートナーになるよう働きかけている。
OSLのアソシエート・ディレクターScott Kvetonは、OSLは参加を熱望しており、広くNCOSPRに対する期待があると言う。企業同様、OSLにどのような貢献ができるのかは明確ではないが、求めに応じて、プロジェクトの共同開発や共同作業などに14名の陣容で対応できるだろうと言う。
「私自身NCOSPRの活動にワクワクしています。全米で起こっている改革のセンターができたのですから。こうすればあれができますよ、これについてはこういう政策がありますよ、これとあれはこうやって組み合わせられますよとNCOSPRに伝えれば、全米に伝わるのですよ」
実際、OSLの実績がNCOSPRに有用なことは確かである。それはOSLがGOSCONに関わっているからというだけではない。OSLにはすでにMozillaインフラストラクチャ、master.kernel.org、Gentoo、Debianインフラストラクチャが置かれており、OSL自体多くのオープンソース・ソフトウェア開発に参加しているからである。オープンソース・プロジェクトとの共同に多くの実績を持つOSLは、NCOSPRにとって重要なパートナーとなるだろう。
WeathersbyとしてはNCOSPRが公的部門すべてが利用するリソースとなることを望んでおり、NCOSPRはオープンソース・コミュニティの人々もそれ以外の人々も、誰もが参加できる場であるべきだと希望を語った。WeathersbyやKvetonの目には、マサチューセッツ州におけるOpenDocumentの推進やNCOSPRの始動が大きなうねりの始まりに映っているのである。「さまざまな流れが、ここに集まりつつあるのは確かです。本当にワクワクします」(Kveton)
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