マサチューセッツのOpenDocument転換に対立するCAGW

「政府の無駄遣いに反対する市民」(CAGW: Citizens Against Government Waste)が、オープン標準およびオープンソースソフトウェアは相互運用を損ない長期的に見て結局高く付くと再び警告している。今度はマサチューセッツのOpenDocument採用命令を同州の「不当な調達政策」の典型と決めつけている。

CAGWは、これまでもオープンソースソフトウェアに批判的で、マサチューセッツのオープンソース政策に噛みついてきた。同グループには独禁法に悪戦苦闘するMicrosoftを支持してきた長い歴史がある。

この問題に関する最新のプレスリリースを見ると、同グループはどうやら文書フォーマットとITアーキテクチャおよびアプリケーションを混同して「マサチューセッツの計画は同州のすべてのコンピュータネットワークをオープンソースフォーマットに移行するもの」で、同州は「2007年1月1日までに州当局がオープンソースとオープンな標準ソフトウェアだけを使うようにせよと命じた」と非難しているようだ。

NewsForgeが連絡をとったところ、CAGW代表Tom Schatzは、件の声明(複数のLinuxおよびオープンソースページに原文のまま転載されている)は「誤り」であり、「CAGWは本日、マサチューセッツのオープンフォーマット文書への強制移行計画を非難した」と訂正すると述べた。もう1点は、マサチューセッツの政策に関するもので、「2007年1月1日までに文書の保存をオープンソースフォーマットでだけ行うよう命令」と訂正するという。

マサチューセッツ州の子供や犬を含むすべての人々が現実にFOSSの使用を強制されないと知りながら、CAGWは同州の動きは企業や市民に「州当局と文書をやり取りする際の互換性の問題」を生じさせると喧嘩腰で構えていた。

OpenDocumentフォーマットの互換性問題について説明を求めたところ、Schatzはマサチューセッツのフォーマット政策に関してもっと情報が欲しいと述べた。

「たった1州なんだ」とSchatz。「せめて政策的な調整は必要だ。国民的な政策を求めているわけではないが、現実のコストと長期的な見通しは検討する必要がある」

マサチューセッツ州の情報主任Peter Quinnによれば、同州のオープンソース政策に対するこの手の批判はいくつもあり、その多くは政策の真の意味と影響を誤解しているという。

「これまでFUDファクタを実行しようとする人々と、時としてその意味がわからない人々の組み合わせができた」とQuinnは言う。「我々が発表したのは、2007年1月1日までに、国際的な標準化組織によって承認されたフォーマットを採用する予定ということだ。それは調達でもなければ、標準でもない。オープンソースに関する何物でもなければ、それ以外の何物でもない」

互換性問題に関して、Quinnは、マサチューセッツ州は企業や市民に何の変更も求めておらず、今後も同州のすべてのユーザへの対応に努力すると述べた。また、拡大する文書アーカイブへの継続的なアクセスを保証する意味でもオープンなフォーマットが必要だと強調した。

「これは行政執行と沿革に関する情報で、市民に常に公開されるべきものだ」と彼は言う。

CAGWは、プレスリリースでオープンソースへの移行に伴うコストに触れ、既存の文書の変換や新規ソフトウェアのトレーニングに追加コストがかかるとの懸念を示している。

Quinnや、マサチューセッツ州の計画を支持する人々は、Microsoft Officeのアップグレード・コストを例に挙げその懸念に答えてきた。また、OpenDocumentフォーマットをサポートするならMicrosoftその他のプロプライエタリベンダの入札参加を歓迎することを示唆している。

「特定のテクノロジーに固執しているわけではない」とQuinn。「我々が求めているのは標準のフォーマットである。標準に対応する限りテクノロジーはいくつあってもよい」

Microsoftなどのプロプライエタリ・ドキュメントのフォーマットだけを使用した場合、Quinnのオフィスの調査によれば、Microsoft Office 12のアップグレードに必要な時間と訓練はコスト的に見て同州のそれと変わらないという。

「それでチャラ」と彼は言う。

CAGWのオープンソースに対する敵対の歴史は、複数の関係者にレーガノミックス生まれのグループとレドモンドの間でどこかで結論を出すよう促してきた。

Schatzは、Microsoftからの支援についてコメントを避けつつも、非営利団体の資金源はどこも同じようなものだと示唆した。以前、MicrosoftはCAGWに出資していることを認めた。

Open Source And Industry Alliance(OSAIA)の公共政策担当部長Will Rodgerによれば、CAGWの最新のプレスリリース(オープンソースに関する包括的な声明に続き、オープンソースへの転換に関する相互運用問題とコストについての批判の改訂版が記載されている)は、やはりオープンソースソフトウェアおよびオープン・テクノロジに対する誤解、心配、誇張を焼き直したものにすぎないという

「かつては文章を練り上げることで定評があったが、現実には時機を逸してばかりいた。思惑があって、誰かがそう言わせているのだろう」

オープンソース開発者の業界組織の代表であるRodgerは、マサチューセッツのOpenDocument政策を支持しているが、連邦および州の情報主任はオープンソース・フォーマット政策を監視はしても口は出さないと言う。

「州の情報主任は連邦政府の情報主任とよく似ている。彼らはソフトウェアで自分が行っていることが政治論争のたねになることに興味がない。水面下でひっそりやっているのだ」

Rodgerによれば、マサチューセッツの動きがもっとオープンソース寄りの段階に達していたら、CAGWは最初のプレスリリースをそのまま使いたいと思っただろうと言う。

「この点に関して、マサチューセッツはオープンフォーマットの文書に多くの利点があることを指摘している」と彼は言う。「一般に、オープンフォーマットは長期の仕事にかかわる人にとって意義がある」

「次の衝突がいつ起こるかわからないが、全体の動きがオープンソースに向かっている手ごたえはある」とRodger。「その衝突が、当局にオープンソースへの移行を思いとどまらせる最初の一撃になることも考えられる」

マサチューセッツの文書戦略は米国を越えて、ヨーロッパ、オーストラリア、日本、その他の国々の専門家の関心を集めているとQuinnは言う。

「問題の深刻さが本当にわかってきた」と彼は言う。「我々と立場を同じくする人々はそれほど多くないが、まずはフォーマットからだろう」とQuinn。「フォーマットに関する問題全般と、彼らのプロプライエタリ特性および我々がこれから向かう場所について、彼らはみな注目している。テクノロジの問題ではない。これは標準、つまりオープンな標準の話だ」

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