Blosxomでブログする
まず、あなたのワークグループのコミュニケーション・インフラストラクチャにおけるブログの位置について考えてください。wikiはパブリックな共同作業に優れたツールです。それに対し、電子メールは個人対個人のコミュニケーションに優れたツールです。ブログは両者の間のニッチを占める有用なツールとなります。
ブログはある種の情報に対して重要な場を提供できます。たとえば営業マネージャなら、契約成立などの具体的な進捗報告(会社レベルの電子メールとして伝達されるもの)に先立って、日々の営業活動に関する情報を提供することができます。営業活動の詳しい内容を提供してもらえば、設計会議のメンバーたちにとって、来るべき機能リリースを検討するうえで大いに参考になると思われます。
あるいはプロジェクト責任者なら、プロジェクトの意図と長期目標を詳述した一連のブログエントリをリリースすることができます。そうすれば、共働者たちが責任者のアイデアに応答したり磨きをかけたりすることができます。また責任者から指示を受ける従業員たちも、責任者の意向に沿って各自の仕事を遂行することができます。
簡単に言えば、個人やチームの仕事に非公式なウィンドウを導入することで、共働者のコミュニケーションを強化・促進できるということです。
これでブログを試してみたくなった方は、ブログ・パブリッシング・ツールをインストールする前に、いくつかのファクタを検討すべきです。ブログの基本原則は単純ですが(一連のエントリで最新のものがページのトップに置かれます)、HTMLを直接編集するのは特に便利でもスケーラブルでもありません。
ブログのプラットフォームを選択する
すでにMySQLを扱っている人が内部にいれば別ですが、そうでなければ、WordPressのような機能豊富なパブリッシング・ツールを保守しようとすると、初期の試験的デプロイメントに意外なほど手間がかかるかもしれません。何かうまく行かないことがあれば、なおさらです。GoogleのBloggerなど、セットアップを必要としない無料ホスト・サービスもありますが、誰もが利用できる外部のサービスに会社のコミュニケーションを委ねるのは気が進まない方もいるでしょう。ブログを組織内のイントラネットに置きたいのであれば、セットアップと管理が容易なツールが必要になります。
そこで登場するのがBlosxomです。Blosxom(作者はRael Dornfest)を使用すると、ブログの保守と発行がとても簡単にできるようになります。Blosxomはディレクトリ・ツリーの内容をブログにマップするだけです。ツリー内の各テキスト・ファイルがエントリで、最初の行がエントリのタイトルで、残りがブログ・エントリの本体になります。エントリはファイルのタイムスタンプに従って並べられます。ツリー内のサブディレクトリはカテゴリを表します。ユーザは正しいディレクトリ内でテキスト・ファイルを編集するだけで、新しいエントリを作成できます。
Blosxomのインストール
PerlベースのBlosxomも、その兄弟分にあたるPythonベースのPyBlosxomも、インストールは簡単です。この2つのプロジェクトは機能セットに若干違いがあるものの、どちらを選択するかは主として言語の好みによると言えます。Perlに通じている組織なら、Blosxomを選ぶでしょう。Pythonショップなら、PyBlosxomを使ってみたくなるはずです。
インストールのアウトラインは次のようなものです。まず好みに合わせてどちらかのバージョンをダウンロードし、次にWebサーバに単一のCGIスクリプト(PyBlosxomの場合は数個のサポート・ファイルも)をインストールし、それからデータ・ディレクトリ(システムがブログのエントリとして使用するテキスト・ファイルのツリー)の場所を指定するなど、コンフィグレーションに少しだけ修正を加えます。なお、ここではBlosxomのインストールを説明しますので、PyBlosxomのインストールについてはPyBlosxomのドキュメントを参照してください。
以下では、LinuxまたはUnixタイプのOSが動作しているサーバー上でBlosxomを使用することを前提に話を進めます。まずBlosxomのサイトからzipファイルをダウンロードし、アンパックします。blosxom.cgiファイルを目的のディレクトリに移し、chmod 755 blosxom.cgi
を実行して、このファイルに適切なアクセス権を設定します。blosxom.cgiスクリプトはCGIスクリプトが実行されるディレクトリ内に「生存」している必要があります。
次に自分の環境に合わせてblosxom.cgiスクリプトを編集する必要があります。編集できる変数はいくつもありますが、大部分はデフォルトのままで大丈夫です。ただし、$datadir
と$blog_title
と$depth
はたぶん変更する必要があるでしょう。種々の環境へのインストールの詳細については、Blosxomのインストール手順を参照してください。
Blosxomを起動すれば、自由に使用できる非常に有能なブログ・システムが構築されます。あとは好みのテキスト・エディタを使って、ブログの実際の内容を作成していくことができます。BlosxomとPyBlosxomはカスタマイズすることもできます。カスタマイズにより機能を追加すれば、ブログがさらに便利なものになるでしょう。
Blosxomのカスタマイズ
真っ先に行われるカスタマイズは、おそらくブログの見た目を調整することでしょう。これはBlosxomでフレーバー(flavour)と呼ばれているものです。デフォルトのフレーバーは「html」です。つまり、Blosxomがデータ・ディレクトリからhead.html、footer.html、story.htmlというファイルを探すということです。これらのファイルはブログのさまざまな部分のテンプレートとして機能します。ブログの見た目を変更するときは、これらのファイルを編集すればよいのです。BlosxomとPyBlosxomのどちらについても、プロジェクトのサイトにフレーバーのサンプルがあります。あなた自身のニーズや組織のスタイルにとって都合のよいフレーバーが見つかるかもしれません。
BlosxomとPyBlosxomのコア・インストールはブログ・システムが可能な限り単純なものになるように構成されていますが、どちらのプロジェクトもいろいろな点でカスタマイズできるようにプラグインAPIをサポートしています。プラグインを使用するためには、まずBlosxomまたはPyBlosxomのプラグイン・レジストリからプラグインをダウンロードし、それをプラグイン・ディレクトリにインストールすることが必要です。プラグインによっては、コンフィグレーションも必要になる場合があります。
プラグインを使用すると、ブログのセットアップをできる限り使いやすくすることができます。そのための1つの方法は、簡素化されたマークアップ・メカニズムを提供して、生のHTMLを直接編集しなくてもブログ・エントリをフォーマットできるようにすることです。Blosxom用のTikiプラグインでは、大部分のwikiに見られるものと同じようなマークアップ構文によってブログ・エントリをフォーマットすることができます。PyBlosxom用のTxtlプラグインでは、Dean Allenの”Humane Web Text Generator” Textileマークアップを使用できます。どちらのプラグインでも、うまくフォーマットされたブログ・エントリを簡単に作成できるようになります。
ブログを双方向コミュニケーション・プロセスに組み込めるようにするには、コメントを有効にする必要があるでしょう。読み手がブログ・エントリに直接コメントできるというのは非常に強力な機能です。コメントが利用できると、ブログ・エントリがアドホックなディスカッション・グループになり得ます。
Movable Type(こちらも人気のあるブログ・システムの1つです)の開発者であるBenとMena Trottが開発したTrackBackシステムもたいへん便利な機能です。TrackBackを利用すると、他のブログの作成者があなたのブログにコメントを直接投稿するのではなく、自分のブログ・エントリへのリンクをあなたのブログのエントリに追加できます。通常、彼らはあなたのブログの内容に対して自分のブログの中で返答するからです。元のブログ・エントリの読み手は、このリンクを見て、関連エントリにたどり着くことができます。そのため、読み手はそれぞれのTrackBackリンクを順にたどっていくだけで、ブログ・ベースの対話を追跡することができます。
BlosxomでもPyBlosxomでも、標準のコメント機能とTrackBack機能を結合して1つのプラグインにしています。Blosxomでは、この結合された機能を有効にするプラグインをwritebackと呼んでいます。
PyBlosxomプロジェクトでは、PyBlosxomのコメントとTrackBackシステムなど、いろいろなプラグインが含まれている寄贈されたプラグインのパッケージを提供しています(”contrib”ディストリビューション内のplugins/comments
ディレクトリを参照してください)。
Blosxomをカスタマイズする方法はプラグインとフレーバーだけではありません。エントリ・メカニズムが非常に単純であるため、興味深い可能性が開けてきます。たとえば、夜間ビルド・システムで結果カテゴリのエントリを生成できます。Procmailを使用すれば、特定のsubject(件名)行を持つ電子メールをBlosxomデータ・ディレクトリにコピーすることができます。これらは可能性のほんの一例にすぎません。BlosxomもPyBlosxomもオープンソースなので、自分の組織のニーズに合わせて修正することができます。
BlosxomもPyBlosxomも、組織内でのブログ機能の簡単なデモに役立ちます。どちらのツールをインストールするにしても、必要となる前提条件やリソースがわずかで済みます。あなたとチームがブログにもっと詳しくなって、要求も高くなると、プラグイン・システム(および利用できるプラグイン)によって、あなたのデプロイメントの能力を簡単に拡大できるようになるでしょう。いずれもブログをあなたのチームの有用なコミュニケーション・ツールにするのに役立つはずです。
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