Cherryキーボードがやってくる

Cherry社のLinux版CyMotion Masterキーボードがアメリカにやってくる。ドイツCherry社の発表では、このLinux向けキーボードがアメリカの主要販売店に並ぶのは今秋の後半、Red Hat Linuxへのドライバ移植が終わりしだいとのことだ。私は、今週、このキーボードをテストしてみた。そして、迷わず推奨する。

Cherry CyMotion Masterを見てまず思うのは、黒と銀のツートーンカラーが実に美しいということだ。次にLinuxのマスコット、Tuxに目がいく。普通ならMicrosoft Windowsロゴがあるはずのキーに、魅力的なペンギンが鎮座している。このキーはWindowsキーと同じキーコードにマッピングされていて、これを押すと、普通はKDE/GNOMEのメインランチャーがオープンする。

だが、そうした見た目のよさより、このキーボードの売りはむしろ内部にある。高品質の代名詞、ドイツ製の名に恥じない。USBを標準装備しているキーボードというのは、今日売られている有名ブランドのデスクトップ用PS/2キーボード/マウスパッケージにはまれである。

タイピングを始めた直後は、多少の違和感があるかもしれない。左のShiftキーを押そうと指を伸ばすと、そのキーのさらに左に置かれているホットキーに触れてしまうことがある。だが、大層な学習が必要なわけではなく、すぐに不便さはなくなって、このキーボードに隠し味のように存在する数々の美点がわかってくる。たとえば、CapsLockキーの溝(うっかり押しが減る)、大きなキートップ(20%も大きい)、フルサイズのレイアウト、等々である。キーがソフトタッチのプラスチックと聞くと、押せたのかどうかわからないという、あのいらいら感を想像する向きがあるかもしれないが、それはまったくない。めりはりが利いていて、手応えがよく、タイピングはこうあるべきだという見本がここにある。さて、感想はこのくらいにして、ホットキーの説明に移ろう。

キーボードの左右両脇に、5個1列ずつのホットキーが配置されている。このホットキーはキーボードの機能拡張を目的としたもので、1回のキー操作で「切り取り」「貼り付け」「元に戻す」「やり直し」などの機能を実行できる。ホットキーが不要という人は、キーボードボタン1つでそれをオフにして、F1 -> F12として使用することもできる。この両側のホットキーのほかに、キーボードの上と下にもひっそりと特殊キーが置かれている。こちらはアプリケーション制御のためのキーで、たとえば、Webブラウザのショートカットキー(「進む」「戻る」「中止」「更新」)として使えるし、マルチメディアの音量や再生の制御にも使える。ただ、これらのキーの利用には、多少のシステム修正が必要である。

キーボードの拡張機能の制御には、Cherry社からリリースされているkeymanというGPLプログラムが使用できる。公式発表では、SuSE、Debian、Red Hat、Mandrakeが直接サポートされるらしい。私が使用しているLinuxはここに含まれていない。だが、キーボードについてきたkeymanディストリビューションにはソースコードが含まれていて、他ディストリビューションへの移植も簡単だった。無事にホットキーが使えるようになったことを報告しておく。すべてのキーは標準のスキャンコードを発信するので、簡単な機能キーのマッピングにはxmodmap(Xに付随するプログラム)が使用できた。メディア制御とアプリケーション固有のキーには、lineakオープンソースプロジェクトを使用した。まさにこの目的のために作られたプログラムである。

自身の使用体験から、私はこのキーボードを躊躇なくお勧めできる。しっかりした作りで、触れた感じも、見た感じもよい。フルサイズであり、キーが大きいことから、長さは18インチを少し超える。デスクトップでの生産性向上に役立つキーボードと言えよう。強いて難点をあげるとすれば、カラーを選択できないことと、無線オプションがないことくらいだろうか。全体として見事なキーボードで、Linux愛好者にはこたえられない製品だろう。

原文