Orange Project:初めての「オープンソースムービー」への挑戦
Orange Projectの目的は、制作環境におけるオープンソースアプリケーションの威力を知らしめることだ。映像制作の現場では、既にBlender、Yafray、Python、Verse、GIMP、Cinepaintといったオープンソースアプリケーションが広く使用されている。
同プロジェクトのコアチームは6人の常駐スタッフから成り、彼らはアムステルダムにあるMontevideoの施設で6ヶ月間の作業を行い、オンラインのボランティアチームがそれをサポートする。どちらのチームにも、アーティストと開発者が参加することになる。
現時点では、プリプロダクションだけが開始されている。最初の3ヶ月間の作業予定には、チームの選定と台本の準備も含まれている。ムービーが完成したあかつきには、このムービーをオープンソースライセンスの下で全ソースファイルを付けて配布する予定である。
私はOrange Projectの3人のリーダー、Ton Roosendaal(Blender Foundation CEO、Orange Projectディレクター/主席開発者)、Bassam Kurdali(Blender’s Suzanne Award for Best Animation賞受賞、Orange Projectアニメーションディレクター)、Andy Goralczyk(Blender’s Suzanne Award for Best Artwork賞受賞、Orange Projectアートディレクター)と話をする機会に恵まれた。以下はその内容である。
NewsForge:オープンソースムービーを作ろうというアイデアはどこから来たんですか?
Roosendaal:Blenderはもともと内部用の3Dアニメーションツールとしてスタートしました。当時はアニメーションの制作とBlenderの開発を同時に行っていたため、Blenderはなかなか面白いアプリケーションに仕上がりました。今思えば、このように開発者とアーティストが日々フィードバックし合う環境というのは非常に有意義なものでした。しかし、Blenderを中心として一般的な会社を設立するのはあまりいい考えではないように思われました。そこでちょうどいい代替案として見つかったのがDutch Media Art Institute Montevideoです。Dutch Media Art Institute Montevideoは、クリエイティブなコンテンツを実現するためにクリエーターや技術者の小規模なチームを集めて短期的なプロジェクトをいくつも進めていました。この方式はオープンソースにもBlenderにも応用できると私は思いました。そこで、このオープンソースムービープロジェクトの提案を持ちかけたのです。
NF:このプロジェクトにおけるBlender Foundationの主な目的は何ですか?
Roosendaal:もちろん第一の目的は、素晴らしい短編ムービーを作ることです。このような方法でムービー制作チームを組織、運営していくのは興味深い体験です。第二の目的は、オープンソースプロジェクトの全体的な品質を高めるための効率的な方法を探ることです。私はBlenderを再び実際の制作環境でテストできることを楽しみにしています。我々はこのアニメーションツールを大幅にアップグレードする必要があり、本プロジェクトはこの改定作業に適度な緊張感を与え、より良い成果をもたらしてくれるでしょう。
NF:今回のプロジェクト中に、Blenderのトレーニング資料を作成する予定はありますか?
Roosendaal:あります。我々はアートワークやコーディング面での活発なサポートを求めているだけでなく、それを実現するための資金的サポートも必要としています。その一部はOpenMovie DVDの先行販売から調達できる予定です。さらに、トレーニングビデオを制作して、Webサイト上で出版するものとDVDとして再販するものの両方を用意したいと考えています。
NF:Orange ProjectのメインWebサイトによると、ムービー制作に当たっては、BlenderのネットワークプロトコルであるVerseを使用する予定だそうですね。これはVerseの初めての本格的なテストということになるのでしょうか? BlenderはVerseとの統合をこのプロジェクトの目玉にしようと考えているのでしょうか?
Roosendaal:VerseとBlenderの統合については既に最初の試みが進められており、まもなくテスト段階に移行できるはずです。Verseはオンラインコラボレーションにおいて大きな潜在能力を発揮すると思います。ただ現時点では、具体的なリリース予定は不明です。
NF:できる限り多くのスポンサーを集めたいというご意向のようですが、興味を示した個人や企業にどのような見返りを提示できますか?
Roosendaal:このプロジェクトは、参加企業に非常に大きな共同マーケティングのメリットをもたらすものです。
NF:アニメーションディレクターのBassam Kurdaliさんにお聞きします。このプロジェクトでのあなたの主な仕事は何ですか?
Kurdali:私はこのプロジェクト内で複数の役割を受け持つことになりそうですが、実際にチームが編成されるまでは、他にどんな役割が与えられるのか正確にはわかりません。アニメーションディレクターという立場で言えば、私がまずすべき仕事は、Blender内の各種アニメーションツールを再評価することです。これらのツールを今回の制作パイプラインにフィットさせるにはどうするか、どのツールをいつどのように使用するか、という観点で見直す必要があります。また、このアニメーションシステムのどの部分を変更する必要があるかと、このプロジェクトにとって最も有益な新機能は何かをアニメーションの観点から見極めなければなりません。プロジェクト期間中は、誰にどの仕事を振り分けるかと、外部のボランティアに何を依頼できるかをアニメーター達と決めることになります。さらに、完成したアニメーションを承認することも私の仕事になるでしょう。キャラクターのデザイン基準の設定や、短いアニメーションのスタイルの決定にも関与すると思います。たくさんのアニメーションに携わることになるでしょうね。
NF:このプロジェクトの難しい部分はどこですか?
Kurdali:私が予想する最大の問題は、制作のさまざまな側面を調整し、6ヶ月の予算の中で完成まで導くことです。不可能だとは思いませんが、難しい課題になるでしょう。このチームは一緒に作業した経験がありませんし、おそらく参加者の多くはそれほど多くの制作経験を持っていないと思います。これは厳しい試練です。また、お互いの待ち時間ができるだけ少なくなるような制作パイプラインを作らなければなりません。本プロジェクトのスケジュールでは、プロジェクトの開始から終了までを滞りなくこなすことが求められます。したがって、たとえばすべてのアニメーションが完成するまで待ってからテクスチャを適用するような余裕はありません。さまざまな作業を同時に進行させる必要があります。コアチームのメンバーは複数の役割を兼任することになると思うので、これをうまく整理するのは至難の技です。ディレクターが主席アニメーターやテクスチャアーティストを兼ねることもあれば、アートディレクターがアニメーターやモデラーを兼ねることも考えられます。
NF:オンラインボランティアに興味を持った人に向けて何か言いたいことはありますか?
Kurdali:この難しいプロジェクトを可能にするためには、オンラインボランティアが重要な役割を果たします。3Dグラフィックの作業には非常に時間がかかります。趣味で取り組んでいる人の場合は、どんなに才能があっても、自分の作品を完全なプロジェクトとして完成させるまでに至らないことがよくあります。締め切りは大きなモチベーションになります。6ヶ月の間に、自分の作成したモデルやオブジェクトや照明セットが完成版アニメーションの中で実際に使われている様子を見ることができるのです。これはなかなかいい気分です。さまざまなインターネットプロジェクトで最も恐ろしいのは、誰にも興味を持たれなくなってプロジェクトが活動停止になることです。今回のプロジェクトでは、フルタイムで従事するコアチームを設けているため、成功への強い意思があることをボランティアの方々に感じてもらえるのではないかと思います。
NF:アートディレクターのAndy Goralczykさんにお聞きします。このプロジェクトでのあなたの主な仕事は何ですか?
Goralczyk:私の仕事は、ムービー全体を通じて一貫した視覚的スタイルを維持することです。ムービーの背景と小道具のルックアンドフィールについては私が責任を持ち、キャラクターデザインについても積極的役割を果たすことになります。モデリング、シェーディング、テクスチャリング、ライティング、アニメーティングにも携わります。演出、ストーリー展開、その他もろもろ、私の手が届くところなら何でも手伝うつもりです。
NF:このプロジェクトの難しい部分はどこですか?
Goralczyk:6ヶ月の制作期間中は、コアチームもオンラインボランティアも作業に忙殺されることになるでしょう。オンラインボランティアとコアチームをうまく連携させるのが非常に難しい課題になると思います。
NF:オンラインボランティアに興味を持った人に向けて何か言いたいことはありますか?
Goralczyk:気軽に参加してみてください! 自分のスキルがこのような緊張感のある制作プロジェクトの需要に合っているかどうか自信がない人は、まず参加して、その中で学んでいってください。皆同じようにして学んできたのです。
原文