オープンソース・プロジェクトに無償提供されるSSL証明書

ドメイン登録業者のGoDaddyがSSL証明書をオープンソース・プロジェクト向けに無償で提供するとして、 オープンソース・プロジェクトに応募を呼びかけている。

GoDaddy(本社米国アリゾナ州)のこの申し出について、少々考えを巡らしてみるのも一興だろうと思う。果たして反響はどうなのか。真のオープンソース・プロジェクトとその紛い物とをどうやって区別しているのか。Turbo SSL Certificateを真のオープンソースに無償提供することで何を得ようとしているのか。逆に言えば、この種のサービス、つまりSSL証明書やホスティングなど、コードの開発に専念したいオープンソース・プロジェクトにとって瑣事となるサービスを干渉なしに無償提供してもらうには、オープンソース・プロジェクトはどうすべきなのだろうか。

オープンソースへの恩返し

GoDaddyの社長であり創立者であるBob ParsonsがNewsForgeに語ったところでは、SSL証明書の無償提供を開示してから1週間で80件の問い合わせがあったという。ただし、その中には、オープンソース以外からの問い合わせも含まれている。

「興味深い応募がある一方で、少数ではあるが、対象外の企業や、オープンソースを使ってはいても自身はオープンソースではない電子商取引サイトや個人サイトからの応募もあった」

対象者の中では、Mambo、PerlStunnelなどの著名なオープンソース・プロジェクトからの応募もあると言う。

同氏の説明によれば、大企業VeriSignの向こうを張ってドメイン・ビジネスに参入した同社では、オープンソースに拘っており、主にFOSSリポジトリ――SourceForgefreshmeatOSI――を利用してきた。

また、今回の無償SSL証明書の提供では正当なオープンソース・プロジェクトを募っており、応募者にもそのように説明している。証明書は「数分以内」に発行、そこに含まれるドメイン名は登録済みで、電子メールを介する公式のwhois登録に見合った妥当なものだと言う。

同氏は自身のブログで、オープンソース運動は「世界中のパーソナル・コンピュータ・ユーザーにとってまさに最良のもの」であり、同社が多くのオープンソース・ソフトウェアを利用していることに鑑み、そうしたプロジェクトに対する支援、そして一種の「恩返し」としてSSL証明書を無償提供するのだと述べている。

「我々のシステムでは、Linuxホスティング、アプリケーション、NessusやSnifferなどのセキュリティ・ツールなど、多くのオープンソースを使っている。オープンソースの開発者たちは真の意味で革新に貢献しており、それに報いたいと思っている」

1年後オープンソースをどのように遇するかについて、同氏は具体的に説明しようとしなかったが、オープンソース・プロジェクト向けの無償Turbo SSL Certificateはそのプロジェクトがオープンソースである限り、プロジェクトが終了するまで無償で更新すると同氏は述べている。

「プロジェクトが続く限り、(無償で)更新するつもりだ」

コードがすべて

よく知られているPHP Webアプリケーション・フレームワークのbinarycloudは、GoDaddyの無償SSL証明書を早くから採用している。このプロジェクトの創設者であり会長であるAlex Blackによれば、同氏のプロジェクトでワイルドカードSSL証明書が必要になったとき、無償で速やかかつ容易に入手できた言う。

このプロジェクトはAktiom Networksから無償でホスティング・サービスを受けているが、同氏は、オープンソース・プロジェクトの要件はかなり単純だと言う。

「一般的に言えば、コードが確かに存在することを示す必要がある。公開されたCVSがあり、それが本当に案件のコードであり、それに関するコミュニティが存在することを示すのだ」

同氏は、主要なオープンソース・リポジトリ――SourceForgeやTigrisなど――の価値を評価した上で、プロジェクトが自身のドメインを取得してプロジェクト全体の姿を示し、伝統的なネットワーク上に何らかの存在感を示すことの重要性も指摘する。メーリングリスト、バグトラッキング、wiki、セキュリティなど諸々の問題から、オープンソース・プロジェクトは「ソフトウェアか、ポリシーか」の狭間で迷っていると言う。

「問題なのは柔軟性だ。必要なサービスはあるが、現実には(完全なソリューションを)提供できていない」

同氏は、フリーソフトウェアやオープンソース・ソフトウェアのプロジェクトは企業から無償のサポートを受けている場合、付帯条件に注意する必要があると言う。

たとえば、GoDaddyからは、binarycloudのWebサイト上に「広告のような」ロゴを出すことを求められたと同氏は言う。しかし、GoDaddyは柔軟に対応し、掲載を求めていたロゴを実際のロゴのサイズに戻すことを承諾した。

「GoDaddyはすぐに要求を引っ込めた。その点では潔い対応だった」。しかし、その以外の支援要請では、オープンソース開発者に「見返りを求める」など、それほど好意的ではなかったと言う。

にもかかわらず、同氏は、オープンソース・プロジェクトが機材などについての心配をせずにコードの開発に専念できる可能性は十分にあると言う。実際、ほとんどのオープンソース・プロジェクトはそうした支援について知っており、すでに利用していると言う。そして、無償支援によってプロジェクトが得ているものと、それを提供している企業の負担とを比べれば、一般に、企業側の負担の方が大きいと評価する。

「彼らもビジネスになるものを手に入れ、一方でサービスを無償で提供する。そういう道もあるのだ」

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