japan.linux.comの編集方針
jlcとは何か
jlcは、オープンソース全般に関心を持つ中上級の技術者からマネジメント 層を主要な読者として想定した、日本におけるオープンソース分野のオンライ ン・クオリティ・ペーパー (quality paper)を目指している。個々の細かい技 術論にはあまり踏み込まないが、オープンソースにおけるその折々でホットな 話題について、簡潔に整理されていながらも、内容的にはできるだけ突っ込ん だ、かつ軸のぶれない議論を読者の皆様に提供することを使命とする。
jlcの主要なコンテンツは以下の三つである。
- jlcオリジナルの論説記事
- 米OSTG社が運営するニュースサイト群 (NewsForge、Linux.com、IT Managers’ Journalなど)の主要記事の翻訳
- jlc diary
RSS News Feedの所在やリンクポリシーに関しては、japan.linux.comについてを参照して頂きたい。
jlcの位置づけ
これまでjlcは、そのURLからも明らかなように、少なくとも名目上は、米OSTG(旧OSDN)社が運営するニュースサイト の一つでどちらかと言えばGNU/Linuxに特化した話題を取り上げることの多いLinux.comの日本版として運営されて きた。その点で、「本家」Slashdotとスラッシュドット・ジャパンの関係に似た面がある。
しかしながら、スラッシュドット・ジャパンがSlashdotの単純な焼き直し でないのと同様、当jlcも独自性を有している。そしてその度合は、おそらく スラッシュドット・ジャパンよりもjlcのほうが大きい。
というのも、現在のjlcは実質的にLinux.comの日本版ではないからだ。ど ちらかといえば、同じOSTGの運営するNewsForgeの日本版に近い。 NewsForgeは「The Online Newspaper for Linux and Open Source」を標榜し、 GNU/Linuxに限らずオープンソース全般に関して論評記事やニュースを主に掲 載しているニュースサイトである。
実のところ、構想段階から狙っていたのはNewsForgeの線であって、 Linux.comではなかった。japan.newsforge.comではなくjapan.linux.comにし たのは当時における言葉の知名度の差という問題に過ぎない。すなわち、jlc を開始した時点では、日本における「オープンソース」という言葉の知名度は、 「リナックス」という言葉のそれに遠く及ばなかったというだけのことであ る。
また、forge (鍛造する)という単語は、英語に相当堪能な人以外にはそれ ほど知られていないという懸念もあった。forgeには「偽造する」「でっちあ げる」というような意味もあり、News-Forge というのはある種の洒落でもあ るのだが、これもなかなか分かりにくい。オープンソース開発支援サイトSourceForge.jpの場合は、もともと 前例の無いタイプのサービスであることもあり、本家の名称をそのまま踏襲し たが、jlcは多くの方々に読んでいただくことを前提としたメディアなので、 すでに知名度のある名称を選択したというわけだ。
なぜこのような細かい話にあえて触れたかと言えば、どうやらjapan. 「linux」. comであることに過剰な意味付けを感じてしまう方々がおられるという話を耳にしたからである。確かに「本家」Linux.comはOSTGではGNU/Linuxに特化した運用ノウハウを中心に取り上げるサイトに過ぎないが、jlcは別にGNU/Linuxに限定されず、*BSDやGNU HURDなど、いわゆるオープンソースOSに関わる話題であれば積極的 に取り上げている。また、場合によっては、著作権や特許に関する話題など、 オープンソースに直接、あるいは間接的に関わってくる分野に関しても踏み込 んだ議論を展開する場合がある。GNU/Linuxはあくまでjlcが関心を持って採り 上げる選択肢、テーマの一つに過ぎないということは、ここで強調しておきた い。
jlcが読者の皆様にお約束すること
そもそも本稿を書こうと思ったのは2004年の7月、NewsForgeにNewsForge主 筆(Editor in Chief)のRobin `Roblimo’ Miller名義で掲載されたWhy NewsForge doesn’t publish only pro-FOSS storiesを目にしたときだっ た。すぐにjlcに関して同様の記事を書こうとは思いつつ、私用で多忙だった ためそのままになっていたものである。jlcの編集方針も基本的にこの記事と 全く同じなので、できればご一読頂きたい。簡単に言えば、「オープンソース を賛美する見解だけではなく、批判的な見解も同等、ないしむしろ積極的に取り上げる」ということである。
前掲の記事にもう一点だけ付け加えたいことがある。というのは、jlcは、 記事の公正中立も、不偏不党も、あるいは正確さも、全く保証しない と言うことを強調しておきたいのだ。意図的に誤りを混入させると いうことは絶対に無いし、極力正確な情報をお伝えすることを心がけてもいる が、それでも記事に誤りが存在することはあるだろう。また、例えば筆者はで きる限り中立的な書き方をするよう心がけているが、一方で個人としては明確 にオープンソース支持派である。このような事情から、誤りやある種の偏りが記事に入り込んでくること自体は、原理的に避けがたいものだと筆者は考える。
このように書くとjlcは甚だ無責任なように感じられる方もおられるだろう。しか しその代わり、jlcの記事では、ある結論に至ったとして、その過程をできる だけ読者に分かりやすいよう公開することをお約束する。すなわち、読者が書 き手の思考を追体験できるような記事を心がける。全ての記事にはニュースソー スの在処と結論に至るまでの思考のプロセスや論理が明記され、希望によって は読者がそこから書き手の考えを後から検証できるようにする。そうした記事以外は、jlcには掲載しない。これによって、実質的な公正中立性を 確保したいというのが筆者の願いだ。そのためにも、誤りや不明確な記述を見付けた際には、読者から厳しくご叱正頂けると幸甚である。
なお、読者からのフィードバックに関して、NewsForgeでは記事にコメント を付けられるようになっている。当初jlcでもコメント欄を付けることを考え たが、愉快犯的な人々に荒されることを懸念してつけなかった。一応記事内容 を評価する投票機能を用意しているが、この種の論説記事に関して「この記事 は役に立ちましたか?」と言われても困るという読者が多くいらっしゃること も重々承知している。しかし、できれば興味深かった記事に関しては「とても 役に立った」に投票して頂けると執筆や記事選定の参考になるので、ぜひお願 いしたい。記事に関して何かあれば、筆者までメールで直接ご連絡頂いて構わない。
さて、以下では個々のコンテンツについて簡単に触れることにしよう。
論説記事
jlcのメインコンテンツである。これまでのところ、jlcでは主に筆者が論説記事を執筆してきた。しかし、実は 立ち上げ当初から外部の方の投稿は受け付けており、外部の方に執筆して頂いたイベントのレポートなども掲載した実績がある。
今後も主に筆者が執筆していくこと自体には変りないが、これからは、さまざ まに異なった立場の方々が、さまざまに異なる意見をある程度まとまった形で ぶつけ合う場として、jlcの論説欄を育てていきたいと考えている。一般的な ウェブ日記やブログで期待される以上の数の読者に伝えたいこと、知ら しめるに値すると考えられることをお持ちの方で、本稿で今まで述べてきたよ うな当jlcの方針を汲んだ文章を書いていただける方は、是非記事を投稿して 頂きたい。継続的に執筆して頂ける方には薄謝を進呈している。ただし、原則 として実名(ないしそれに準ずるもの、例えば仕事でお使いのペンネーム)を記した署名記事であることに留意して頂きたい。
翻訳記事
jlcでは、米OSTG社が運営するニュースサイト群の主要記事の翻訳を掲載し ており、記事の選定に関しては昨年末から、主筆である筆者が責任を負ってい る。大体NewsForgeに掲載されてから1日から2日後には翻訳が用意できるよう になっているので、それなりの速報性も確保されていると考えている。なお、 先述した通りjlcが範をとったのはNewsForgeであるが、翻訳に関しては必ずし もNewsForgeに限らず、Linux.comやIT Managers’ Journalなど のOSTGサイト群全般をチェックし、興味深い記事を翻訳して紹介している。た だし、インストール方法や個別ツールのHOWTOのような単純なノウハウものは、 jlc以外のウェブページで優れたものが存在することが多いので、原則として 省いている。
なお、そういった通常は省くようなHOWTOものも含め、NewsForge等で掲載された記事で、一般の読者にも重要と思われるにも関わらず筆者が見逃した(翻訳がしばらく経ってもjlcに掲載されなかった)と思われる記事があれば、是非筆者までお気軽にご連絡頂きたい。
jlc Diary
jlc Diaryは最近開始され た試みであり、jlcの通常の論説記事よりは軽い内容を、より手軽に執筆して 頂くことを目的としている。広く使われているウェブ日記システムtDiaryをカスタマイズし、本サイトの運営システム(backSlash)に組み込んだものを利用させて頂いているが、まだβ版という位置づけであり、システム的には今後変化する可能性はある。
現在は筆者と、jlcを運営するOSDNジャパン の佐渡秀治氏に加え、プログラミング言語Rubyの開発者として世界的に有 名なまつもとゆきひろ氏にお願いし、日記を執筆して頂いている。日記の内容に関しては、大枠ではオープンソースに関係する話題についてということではあるが、具体的な内容に関しては各筆者に完全に任されている。今後、日本のオープンソース世界のキーマンと目される方々をさらに招聘し、執筆者を順次拡大していく予定である。執筆したい方、あるいは執筆者を推薦して下さる方は、是非筆者までご連絡頂きたい。
主筆について
現在のところ、jlcの主筆は本稿の筆者である八田真行である。翻訳記事の 選定、投稿記事の審査、及び論説の執筆に関して責任を負っている。ただし記事内容に関する責任は個々の筆者に帰属する。
NewsForgeにおいて同様の立場にあるのが、主筆(Editor in Chief)のRobin `Roblimo’ Millerである。NewsForgeの読者の方は、私のjlcにおける仕事も Roblimoとほぼ同じと考えて頂いて差し支えない。
至らぬところも多いと思うが、読者のご叱正を頂く中で、jlcを実 質的に信頼できるメディアへ仕上げていきたいと考えている。NewsForgeのポリシーである「Ask your readers what they want, then give it to them.(読者に読みたいものを訊け、そしてそれを提供せよ)」は本サイトのポリシーでもあり、筆者の個人的なポリシーでもある。今後もご愛読のほど、宜しくお願い致します。