レビュー:Ubuntu試用レポート

Ubuntu Linuxは、Canonical Ltdがスポンサーとなった、Debianベースの新しいディストリビューションだ。私は1週間にわたりUbuntuを使ってみたが、いくつかの初期不良を除けば、かなりよい出来になっている。

Ubuntuは、完全なGNOMEベースのディストロだ。私が試したリリースはWarty Warthog 4.10と名付けられており、GNOME 2.8とカーネル2.6.8.1を利用している。また、次に示すとおり、有名なアプリケーションが数多く含まれている。

  • オフィス・パッケージ:OpenOffice.org 1.1.2
  • Webブラウザ:Mozilla Firefox 1.0 Preview Release
  • 電子メール:Evolution Groupware Suite 2.0
  • グラフィック:The GIMP 2.0
  • 動画プレイヤー:Totem 0.99.15.1
  • 音楽プレイヤー:Rhythmbox 0.8.5
  • インスタント・メッセンジャー:Gaim
  • IRCクライアント:Xchat

私はISOイメージを1つダウンロードして、再起動した。UbuntuのインストーラはDebianと同じくテキストベースだが、ずっとシンプルで使いやすい。いずれかのLinuxディストロをインストールした経験があれば、Ubuntuのインストールに苦労することはないだろう。

私の環境では、ブートローダのインストールでいくつか問題が発生した。私が使用しているハードディスクは、1台がSATA、もう1台がIDEである。プライマリとして利用しているのはSATAのほうなので、ブートローダのコードをこちらのマスター・ブート・レコードにインストールしたかったのだが、Ubuntuは私とは違う考えだったようだ。さまざまな方法を試したが、SATAドライブにはインストールできず、IDEドライブにブートローダのコードがインストールされてしまう。Googleを検索したところ、私と同様のハードディスク構成で同じ問題が発生したという報告を発見した。結局、私はIDEドライブをシステムから引っこ抜いた。これでやっとUbuntuをSATAディスクにインストールできた。同じシステムに、Mandrakelinux 10.0、SUSE 9.1、Slackware 10、Fedora Core 2は、いずれも滞りなくインストールできたので、なぜUbuntuだけがシームレスにいかなかったのかは不明だ。

この問題を解決し、インストールを続行した。ユーザを作成し、インターネットからパッケージをアップグレードするかどうかを選択し、Xの設定を行う。これが完了すると、さまざまなコンポーネントが解凍され、すぐにログイン・プロンプトが表示される。

Ubuntuのインターフェイスは非常に簡潔だ。デスクトップにはアイコンが1つもなく、壁紙も控えめだ。Ubuntuのメニューは小さいが操作しやすく、同じタスクにいくつものオプションを表示してユーザを悩ませるようなこともない。Webブラウザやオフィス・スイートを1つずつしか用意していないのもいい考えだ。

まず、apt(Debianのパッケージ管理システム)用のグラフィック・インターフェイスであるSynapticを起動した。ここで私は、Ubuntuにはrootユーザがいないということを発見したのだ。rootに関連するタスクは、すべてsudoを使って行う。これはユーザには透過的に行われるが、最初パスワードを入力するよう求められたときには、少々混乱したのも事実だ。インストール時にはrootパスワードの入力が要求されなかったので、Red HatやSUSE、そしてMandrakeに慣れていた私は「rootパスワードは何だったっけ」と頭をかきむしってしまったのだ。実際は、プロンプトで入力を求められたのは私のパスワードだったのだが、rootパスワードを入力しなければとすっかり思い込んでいたために、説明を読んですらいなかったのだ。しかしながら、初心者がrootユーザの権限を持つとシステムをめちゃくちゃにしてしまうのが常であるから、これはUbuntu開発者たちの英断だったと言えるだろう。

この後、私はシステムを更新した。これは200MB以上もある非常に大きな更新で、Ubuntuの開発がかなりのスピードで進んでいることがわかる。最初の更新を適用してから3日後、もう一度更新したところ、今度は40MBあった。

続いて、私が使用しているビデオ・カード用のNvidiaドライバをダウンロードした。Ubuntuは、適切な解像度(1600×1200、85Hz)を自動的に検出してくれた。

今度は、Javaのダウンロードと設定だ。ここでは、シンボリック・リンクを通常通り作成することが必要だ。Javaのダウンロード・サイトにある説明に従い、問題なく設定することができた。

Ubuntu Desktop Screenshot
Ubuntuデスクトップ

これで必要不可欠なコンポーネントが揃い、システムを利用できるようになった。Ubuntuの動作は、SUSE 9.1やMandrakelinux 10.0よりもはるかに機敏だ。インターフェイスは簡潔で見やすい。SUSEやMandrakeのようにカラフルではないが、落ち着いた雰囲気だ。システム全体は、一通りどんな作業でも行えるようになっているようだ。

SUSEまたはMandrakeを使っていた人にとっては、Ubuntuは付属しているソフトウェアの面でかなり地味だと感じられるだろう。基本的な機能は揃っているが、CD作成用のきちんとしたアプリケーションはあってもよかっただろう。NautilusでもCDへの書き込みはできるが、既存のマルチセッションCDにファイルを追加する必要があっても、これを行う手段がない。そこで、K3bを入手するためにSynapticを起動し、検索ボックスに「K3b」と入力した。すると、24MBのダウンロードを経て、K3bが使えるようになった。数回クラッシュしたが、全般的にはうまく動作した。ただし、sudoを使ってターミナルから実行しないと、root権限がないためのエラーが発生してしまう。

私は主に、Webブラウザやワープロを使ったり、音楽を聴いたり、動画やテレビを見たりするためにコンピュータを利用している。私のお気に入りのブラウザFirefox 1.0 PRは、Ubuntuにプリインストールされており、デフォルトのブラウザだ。マルチメディアに関しては、大きな問題はなかった。デフォルトのMP3プレイヤーであるRhythmboxはよくできたアプリケーションだが、個人的にはXmmsのほうを好んで使っている。SynapticからXmmsをダウンロードしたが、使えなかった。

動画についてもいくつか問題がある。デフォルトのプレイヤーであるTotemは、Divxムービーを再生しようとすると毎回エラーが出てクラッシュしてしまう。結局、SynapticでXineをダウンロードしたが、こちらは文句なく使うことができた。おかしなことに、Xineをダウンロードしたとたん、Totemもうまく動作するようになったのだ。問題はコーデックにあったのかもしれない。

OpenOffice.orgでも問題が発生した。システムを更新した後で、スペル・チェッカーが使えなくなってしまったのだ。この理由はわからない。

このUbuntuでは、最初のリリースに付き物の問題が数多くあった。たとえば、Firefoxが突然消えてしまうことがある。これがFirefoxの問題なのかUbuntuの問題なのかは不明だが、SUSEやMandrake、そしてWindowsでさえも起こったことがないのを考えると、やはりUbuntuが原因ではないかと思う。また、ネットワークのブラウジングも動作が不安定だ。Windowsワークグループの表示は、うまくいくこともあればいかないときもある。この問題は突然起きるもので、原因はわからなかった。もう1つ、NTFSパーティションがfstabに追加されていなかったので、手作業で追加する必要があった。

Ubuntuでもっとも評価できるのは、間違いなくSynapticだ。Debianでは数多くのソフトウェアがパッケージ化されているので、他のリポジトリを利用することもできるが、Ubuntuで用意されているもの以外、必要になることはなかった。

GNOMEは使いやすかった。私はずっとKDE派だったので、GNOMEに偏見を持っていたが、今回、UbuntuでGNOMEを使ってみて、GNOME派の人々が「とにかくGNOME」と言う理由がわかった。インターフェイスは単純明快で、設定オプションはわかりやすく、KDEのように行き過ぎていない。KDEにも長所はたくさんあり、KDEではすばやくこなせる作業がGNOMEでは若干時間がかかることもあるが、それは、私がずっとKDEを使ってきたからだ。つまり、UbuntuはGNOMEに関して特筆すべき仕事をしたと言える。システムは信頼でき、かつシンプルだ。すべての機能がうまく統合されており、全体のインターフェイスにも統一感がある。

1週間Ubuntuを使ってみて言えるのは、いくつかの問題や初期欠陥はあるものの、感嘆に足る出来だということだ。日常必要とする作業のほとんどを簡単にこなすことができる。Ubuntuは生き残るだろうという印象だ。

このリリースは、Windowsネットワーキングやマルチメディア、そしてインストールに問題があるため、単独のOSとしての利用はお勧めできないが、新しいディストロを試してみたいという場合は、ぜひ使ってみてほしい。Ubuntuは、他の多くのディストロとは異なる道のりを歩んできた。今後も方針が変わらないなら、これは大きな特長になるに違いない。