LiveCDは初級ユーザーに最適

LinuxがマスコミやTVで取り上げられる頻度が高くなるにつれて、興味を持つ人が増えている。居心地のよいWindowsの世界から出たがらない人も相変わらず多いが、興味をかき立てられていることは間違いない。そういう人はLiveCD Linuxを試してみてほしい。

ハードディスクにインストールしなくても、CDから完全に起動できる本格的Linuxオペレーティングシステムだ。最近、Linuxの使用経験がない人やごく基本的なコンピュータの知識しかない10人のユーザーを選んで、いくつかのLiveCDを非公式にテストしたので、ここに結果を報告する。

ハードウェア

384MBのRAMとnVIDIA GeForce2ビデオカードを搭載したGatewayデスクトップをテストPCに使用して、各ディストリビューションの読み込み時間を計測した。ここで紹介するブート時間には、デスクトップの起動に要する時間は含まれるが、BIOSの実行時間は含まれていない。このテストPCには、そのほかの周辺機器として、Epson Stylus 440プリンタ、Olympus D-390デジタルカメラ、Lexar 128MB USB JumpDriveが接続されている。また、ハードウェアの互換性テストのために、別に10台のPCも使用した。

これらは233MHzのPentium IIから800MHzのPentium IIIまでさまざまで、コンポーネントや周辺機器も異なっている。

9種類のLiveCDでテストを始めたのだが、このうちの6種類は途中で脱落した。主として、ハードウェアの検出機能が劣っていたためである。調整やブートコードなしでは、大半がテストマシンのうちの約5台でグラフィカルモードでのブートに失敗した。調整したりブートオプションを指定したりすればどのLiveCDも起動させることは可能だろうが、初級ユーザーには無理な話だ。

テスト対象として残ったのは、Knoppix、MandrakeMove、Slaxで、ハードウェアの検出機能、アプリケーション、美的センス、使いやすさ、および設定を調整しなくても初級ユーザーが動かせるかどうかを試した。

Knoppix

最も有名なLiveCDはKnoppixだろう。LiveCDというジャンルを作り出したのはKnoppixではないが、有名にしたのはKnoppixだ。作成者Klaus Knopperの名前に由来するKnoppixは、Debianをベースにしている。2001年の登場以来、革命的な存在としてLinux信者から熱烈に歓迎されてきた。おかげでさまざまなLiveCDが雨後の竹の子のごとく登場したが、成功したものはほどんどない。新入生にLinuxの能力を示す目的で、Knoppixは特にアカデミズムの世界で人気を得ている。

Knoppix thumbnail
Knoppixのデスクトップ

非グラフィカルブートプロセスで2分58秒と、Knoppixの起動時間は非常に優秀だった。ハードウェア検出機能も優れており、すべてのリムーバブルデバイスもデスクトップアイコンとして表示された。フロッピーディスクドライブがマウントされないことに不満を抱くテスターが少しいたが、それ以外のデバイスはすべて読み取り専用でマウントされた。FDDがマウントされなかったテスターは、ハードディスクやUSBキーを使用してコメントを記録せざるを得なかったため、それが少し負担だったようだ。デスクトップに関して、テスターは使いやすいと感じたようである。Knoppixは、OpenOffice.orgや、シンプルだが有用なユーティリティが揃った追加Knoppixメニューなど、KDEや非KDEのアプリケーションを豊富に備えている。アプリケーションの速度は、ハードディスクから直接実行した場合とほぼ同様だった。

Knoppixに関するテスターたちの意見はまちまちだ。速度には満足したようだが、デフォルトのメニュー構成は不評だった。これは、KDEメニューに関してささやかれている一般的な不満点でもある。デフォルトのデスクトップは洗練さに欠けており、Windows 95の時代に戻ったように感じられた。Knoppixがグラフィックモードへの移行に失敗したマシンは2台だけである。

評価としては、特に旧式のコンピュータでLinuxデスクトップについて知りたいと考えているユーザーにとっては、手っ取り早い入門用ディストリビューションだろう。

MandrakeMove

LiveCDというジャンルに最後発で参入したMandrakeMoveは、商業LinuxディストリビュータのMandrake Linuxが開発した。MandrakeMoveの登場によって、ユーザーはMandrake Linuxをどこにでも持って行けるようになったわけだ。テストに使用したのは無償版のMandrakeMoveだが、この会社はもっと高度な機能を備えた有償版も販売している。有償版の価格は、装備しているUSBキーの価格と言っていいだろう。

Mandrake thumbnail
Mandrakeのデスクトップ

MandrakeMoveの起動時間は4分35秒と遅かったが、公平を期すために言っておくと、テスト対象の中で最も対話形式のブートプロセスだった。ブートソフトウェアによって、言語の選択、ライセンス契約の受諾、ユーザー名とパスワードの入力を求められた後、印刷サービス用のプロンプトが表示される。グラフィカルなブートはテスターに好評だったが、有償版のMandrakeMoveでは可能でも、無償版では設定を保存できないため、途中のピットストップはどれもこの無償版には不要だと思われる。

ハードウェアの検出機能は優れており、すべてが完璧に検出された。USBキーとカメラも正しく検出されたが、USBキーのアイコンは表示されなかった。

MandrakeMoveには、OpenOffice.orgやこの会社の標準「Drake」ユーティリティを含めて、多種多様なソフトウェアが付属している。

なお、バグが1つあった。KDEの初めての読み込み時に「Welcome to MandrakeMove」というポップアップウィンドウが表示されるが、「This Computer」を読み込むためのリンクでdrakconfigが読み込まれず、不足ファイルに関するエラーが発生した。

MandrakeMoveのデフォルトデスクトップは、見た人への訴求力という点では最も魅力的だろう。このオペレーティングシステムでは、LiveCDを取り出して、音楽CDを聞きながら一休みすることができる。ただし、DVDの再生はできない。libdvdcssは備えていない。what-do-you-want-to-doと表示されるMandrakeMoveのメニューシステムは全員が気に入ったようである。大半のアプリケーションは「All Applications」という項目の下位階層に収められている。

Linuxデスクトップについて学ぶにはこれが最善のLiveCDだという点では、全員の意見が一致した。持っている「どのオペレーティングシステム」よりも優れていると述べたテスターも1人いた。テストした中では最もユーザーフレンドリーなインターフェイスだったことは間違いない。最大の不満点は時間のかかるブートプロセスで、Mandrakeのユーティリティ固有の欠点も個人的にいくつか感じた。それでも、ハードウェア検出機能や使って楽しいユーザーフレンドリーな操作性のおかげで、総合的に見てほかのLiveCDを凌駕している。

Slax

SlackwareをベースにしたSlaxは最も意外な決勝進出者だった。Linux.Slackwareはまじめ一方の堅物専用ディストリビューションと評されることが多い。Slaxも根は同じだけに、純粋主義者が気に入るような面白味のないアプローチを取っている。ちょっとしたカルチャーショックを受けたのだが、驚いたことに、Slaxは我がテストチーム内で好評を博したのである。

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Slaxのデスクトップ

Slaxのブートプロセスは、コンソールプロンプトが表示されるまでが58秒で、Blackboxをベースにした簡素なデスクトップFluxboxまでの合計が1分05秒、KDEまでの合計が1分38秒だった。非グラフィカルブートでは、いくつかのオプションを備えたコンソールプロンプトが表示される。おとなしいテスターの大半にとっても、これはちょっとしたショックだったようだ。パスワードでrootとしてログインした後、利用可能な選択肢の中から「gui」と入力すると、どのマシンでもすぐにKDE 3.2(beta2)に切り替わった。コマンドラインと比べると、全員がKDEの方を快適と感じたようだ。

壁紙、テーマ、アイコンセットに関するSlaxの選択肢には誰もが微笑みを禁じ得なかった。質素だが楽しいアイコンとテーマは大半のテスターに好評だったが、最も興味を引いたのは「Aww, he’s just too cute」と叫ぶ壁紙である。Trash Bin以外にデスクトップアイコンはなく、使えるようにできるアイコンはほかにないようだ。バグなのだろうか。Slaxでは、テスト対象のほかのLiveCDの2倍の速度でアプリケーションが動作した。OpenOffice.orgは付属していないが、代わりにKOfficeが利用可能で、そのほかにも多数のソフトウェアを備えている。

高速なパフォーマンスとKDE 3.2(beta2)の外観のおかげで、Slaxはテストグループ内で大の人気者になった。このディストリビューションがブート設定を調整しない状態でグラフィカルモードでの起動に失敗したのは1台のマシンだけである。コンソール自体ではなく、コンソールログインに関するテスト項目だけは不調だったが、大半のテスターはグラフィカルメニューの方を使いたがった。コンソールに関する不満がなければSlaxがナンバー1の座を得ていただろう、と誰もが口を揃えた。初級ユーザーならではの選択かもしれない。

個人的にはSlaxが気に入った。Slackware 3が動いている私のマシンIBM Thinkpad 360CSEも喜んでいるだろう。Frozen Bubbleがない点は残念だが、それ以外の点では満足した。おかげで、Slackwareの良さも再認識できた。

結論

テストグループ内で話し合った結果、MandrakeMoveが最も好ましいLiveCDの座を獲得し、Knoppixが次点になった。また、1人を除く全員が、Linuxを常用デスクトップにすると述べている。

私個人としては、Slaxが最も気に入った。総合的なパフォーマンスと機能強化を鑑みて、MandrakeMoveを次点にする。

その他

途中で脱落したほかの6種類のLiveCDは、Adios、Cool Linux、Freeduc、Gnoppix、Mepis、Morphixである。どれも試してみる価値のあるものばかりだが、最終候補の3つが卓越していた。

Gnoppixはこのジャンルへの新規参入者で、Gnomeデスクトップを愛するユーザーの人気を集めるだろう。今回のテスターの大半は、KDEに比べてGnomeはあまり好みではなかったようだ。Bruce Perens氏よ、聞いてるかい?

Mepisには今後も注目すべきだろう。Joe Barrが受けたほどの感銘を私は受けなかったが、正しい方向に向かっているとは思うし、ダウンロードしてみる価値はあるだろう。

Freeducが目指している方向と目標にも触れておくべきだろう。子供向けの教育ソフトウェアであるという点以外に特筆すべきものはないが、独善的な商業主義に満ちた世界に新風を吹き込んでいる。Freeducのxfceは最悪のデスクトップインターフェイスで、私の娘はこれを見て「何、これ!」と叫んだ。誰もが(特に母親でもある3人のテスターは)、この目新しいジャンルに興味を覚えたようだ。この優れたプロジェクトを改善するのに協力してやってほしいと思う。

本来ならSUSE Live-evalもこのテストに加えていたはずなのだが、いくつかの理由で外さざるを得なかった。7〜15分と、ブート時間が異常に長いほか、合計100MBを超すファイルをハードディスクにインストールしなければならない。また、ある程度のキャッシュ機能がないと、これを使ってデスクトップインストールを実行することができない。SUSEのYaST管理ツールは個人的に非常に気に入っているのだが、このブート時間では私も含めて誰も使おうとは思わないし、手を出すためにはかなりの経験が必要だろう。このCDをテスターに渡さなくて幸いだった。

最終的考察

どのLiveCDを使用すべきだろうか。Linuxの初級ユーザーにはMandrakeMoveを勧めたい。ある程度の経験を積んだLinuxユーザーにはSlaxとMepisがよいだろう。ただし、私の意見を盲目的に信じるのは危険だ。ダウンロードし、CDを焼いて、ぜひ自分で試してみてほしい。

どのディストリビューションを選ぶにせよ、LiveCDは初級ユーザーがLinuxデスクトップの世界を安全に探検するのには最適だろう。CD-Rを焼いて、上司、友人、家族をLinuxファンにしてほしい。

Joe Bolin――アラバマ州在住の独立ネットワークエンジニア、コンサルタント、オープンソース開発者。