対決:Fedora Core 1対SuSE 9.0フリー・バージョン

Red Hat Linuxという名で知られる製品の死が秒読み段階に入ったなかで、多くの人々が「どこに行こうか?」と悩んでいる。ITの意思決定を担う人々にとって、これより悪いタイミングはないだろう。

米MicrosoftがWindowsで最もユーザの多いバージョンのサポートを取りやめたので、コスト意識の高い管理職は、Linuxを社内のデスクトップに採用しようかと検討を始めていたが、そのとたんに今度は最も知名度の高いLinuxディストリビューションが小売市場からの撤退を決めてしまったのである。

あるコミュニティ・カレッジで講師をしている私は、この学校でユーザと管理者がLinuxを利用できるように準備していたが、やはり「どれを選ぶか」というのが問題だった。この記事では、世界で2番目に利用されているLinuxディストリビューションであるSuSE 9.0のフリー・バージョンと、Red Hatのコミュニティ版LinuxディストリビューションであるFedora Core 1をさまざまな角度から比較検討する。

私の目標は質素だった。どちらのディストリビューションが自分のクラスルームで役立つかを判断することだ。しかし、Linuxの使い方を教える立場の者として、それぞれのディストリビューションが実際にそれを使う人々のニーズをどれぐらい満たすのかも知りたかった。私の疑問は次のようなものだ。

  • 作業時間を基準に見た場合、インストールは簡単か。
  • 古いハードウェアがサポートされているか。動作するか。
  • 設定、保守、サポートは簡単か。
  • パッチの適用は簡単か。
  • 便利なものが最初から含まれているか。含まれていないものを後からすぐに追加できるか。
  • 標準インストールはセキュアか。
  • 未経験のユーザや管理者にとって習得は簡単か。
  • 最後に、誰もが気にしている疑問を1つ。Joe Sixpack(平凡なPCユーザ)に使いこなせるのか。

2つのディストリビューションに対する私の評価をまとめた採点表を次に示す。Windows 98またはWindows NTに代わるオペレーティングシステムを探している読者のために、私の(かなり主観的な)Windowsの評価も比較のため併記した。

プラットフォーム FEDORA SUSE WINDOWS
インストールが容易 A D B
設定が容易 C A D
標準のセキュリティ C C F
パッチ管理 A B F
使いやすさ/習得が容易 C B A

古いハードウェア

おおよそ600 MHz Pentium IIIよりも低いスペックのPCを使っている場合は、Fedoraが唯一の現実的な選択肢である。そのレベルのPCでは、SuSEは遅すぎて使い物にならないが、Fedoraは300 MHz程度のプロセッサでも十分に動作する。また、フリー・バージョンのSuSEには、旧型のNE2000ネットワークカードのドライバがどういうわけか含まれていない。古いハードウェアを使っている教育機関や非営利団体では困るかもしれない。

インストール

Fedoraのインストール方法は、CD-ROMとネットワークサーバのどちらを使う場合でも、簡単でわかりやすい。たいていのハードウェアデバイス(ネットワークカードを含む)は自動的に検出され、ユーザの指定がなくても正しいドライバがインストールされる。

早い話が、FedoraのインストールはWindowsよりもおそらく簡単(しかも高速!)である。一方、フリー・バージョンのSuSEのインストールは苦痛だ。技術的な作業に少なくとも倍の時間がかかり、相当に高いレベルのスキルがなければやり通せない。

CD-ROMインストールを除外して比較しても(フリー・バージョンのSuSEではISOイメージが提供されないので、ブートCDとftpを使う必要がある)、Fedoraの優位は動かない。数種類のマシンとNICで試してみたが、フリー・バージョンのSuSEをインストールするにはNICドライバを手動で設定する必要があった。技術的な作業を長時間行うことになる可能性がある。また、不要な操作(”OK”をクリックしないと各ハードウェアクラスの検出が開始されない)を行わないと、インストールを終了できない。このようなことは、どれもフリー・バージョンのSuSEをインストールするためのコストを著しく増やす要因だ。(編注:SuSE 9.0 Professionalの市販バージョンのインストールでは、この問題は起こらなかった。)

どちらのディストリビューションにも、事前設定auto-install用テンプレートをすばやく簡単に作成できるツール(Fedoraではkick start、SuSEではautoyast)がある。

設定

SuSEの設定ツールのすばらしさは圧倒的であり、他を寄せ付けない。Red Hatが(あるいはMicrosoftがこの分野において)過去に作ったどのツールよりもずっと優れている。それでいて、MCSEレベルのユーザにわかるほど使いやすい。 Windows管理者が、Linuxへの移行後に以前のように業務をこなせるようになるまでの時間を、これまでより短くできる。システム管理者がシステムのあらゆるものを設定するために使う必要があるのは、2つのツール(XFree86を設定するSaX、その他すべてを設定するYaST)だけである。

XFree86の設定が壊れている場合は、SaXをコマンドラインで実行できる。SaXには、モードライン・タイミングをその場で変更し、Xディスプレイのサイズと位置を調整する機能まである。YaSTもコマンドラインで実行できるので、sshを使ってリモートから管理するには便利である。

Fedoraには、Red Hat Linux 8で最初に導入された良質の設定ツールセットも含まれている。GUIでしか使えないツールなので、リモートシステム(またはXのないシステム)の管理はやりにくい。また、これらのツールは標準インストールには含まれない。たくさんのコマンド名を覚えなければ、これらのツールをコマンドラインで実行できない。

セキュリティ

セキュリティに関してLinuxに残された課題はまだ多いが、両ディストリビューションのセキュリティ設定は、ここで触れる価値のあるものだ。どちらも不要なサービスが初期設定で無効とされ、ファイアウォールが標準でインストールされ、パッチ管理が合理的かつ手際よく行われる。SuSEはファイアウォール・ツールの点でやや優位だが、Fedoraはパッチ管理の点でやや優位である。

どちらのディストリビューションにも十分な能力のファイアウォールがあるが、SuSEのファイアウォール・ツールはFedoraのものと比べると選択肢が多く、実行される処理がわかりやすい。

両方のディストリビューションで、インストールする必要があるパッチの存在をユーザに知らせる小さいアイコンがパネルに表示されるが、SuSEではKDEを使う場合にしかこれが表示されない(Gnomeには表示されない)。Red Hatのup2dateエージェントは、伝統的にRHN(Red Hat Network)を使ってパッチをダウンロードしてきたが、RHNの購読契約はFedoraでは使えない。Red Hatの説明によると、代わりにFedoraでは、up2dateがyum(Yellowdog Linuxチームで書かれたツール)を使ってパッチをコミュニティ・リポジトリからダウンロードする方法がとられる。YaSTはSuSEミラーからしかパッチを入手できないが、yumは複数のリポジトリから入手できる。up2dateを使ったダウンロードが機能しない場合、コマンドラインでyumを簡単かつ申し分なく使うことができる。

使いやすさ

好むと好まざるとに関わらず、私たち純粋主義者は、使いやすさが移行を成功させるうえで重要であり、その評価はMicrosoftのWindowsファミリ製品を基準として下されることを認める必要がある。使いやすさはMicrosoftが掲げる最優先の目標なので(明らかに安定性やセキュリティなどの地味な目標より優先される!)、この分野でクリアすべき基準は、Linuxディストリビューションにとって非常に高い。

使いやすさに関しては、SuSEが間違いなく上である。その理由は、退屈だが多機能なGnomeではなくワイルドでセクシーな(以上は私見)KDEが、標準デスクトップ環境として選ばれていることだけではない。完全にはわからない理由で、Gnome(私の好きなデスクトップ)を使っていても、FedoraよりSuSEのほうが画面がクリアで見やすく表示される。メニュー構造も、SuSEのほうがわかりやすい。

使いやすさに関してもう1つ重要なことは、便利なものがどれぐらい最初からインストールされるかである。SuSEは、この点でも勝者だ。Flashコンテンツは、SuSEの標準ブラウザ(Konqueror)でも「とりあえず動作」するが、Fedoraではどのブラウザでも動作しない。SuSEのマルチメディア・プレーヤーはMP3ファイルを再生するが、Fedoraのプレーヤーは再生しない。SuSEにはAcrobat Readerプログラムの実物があるが、Fedoraはそれより劣る代替品しかない。このようなツールの必要性は環境によって異なるが、Fedoraインストール設定に後から追加するためにかかる時間が、Fedoraを導入するコストを大きく増やす可能性がある。

最後に、習得しやすさも使いやすさの重要な一部である。たいていの移行は、非Linuxプラットフォームから行われると想定されるからだ。ユーザやサポートスタッフが新しいプラットフォームを習得するのが簡単であればあるほど、以前の生産性を取り戻すのも早くなる。

たとえば、未経験のユーザは、フロッピーやCD-ROMのマウントやアンマウントという概念に慣れるのに苦労するだろうが、FedoraよりもSuSEのほうが苦労は少ない(特に、Gnomeを使うとfamというデーモンがボリュームをロックするので、ボリュームをアンマウントできないことが多いことを考えれば)。これは、SuSEを使った場合の学習曲線(および使いやすさ全体)をFedoraの場合よりもやや有利にする、多数のささいな要因の1つである。

JOE SIXPACK(平凡なPCユーザ)に使いこなせるか

最後に、かの空想上のホームユーザと、LinuxをGreat Unwashed(下層民)にもたらすための終わりなき探求について語るとしよう。良い知らせと悪い知らせの両方がある。どちらのディストリビューションもJoeが使いこなせるほど簡単ではないが、歯がゆいほどそれに近づいている。Joeは、おそらく少しの手助けでFedoraをインストールできるだろうが、使おうとするとたちまち泥沼にはまる。また、おそらく少しの手助けでSuSEは使えるだろうが、独力でインストールできる望みはまったくない。

理由はよくわからないが、ホームユーザは自分のコンピュータを使うだけのためにユーザ名とパスワードを入力することを好まない。LindowsやLindowsと韻を踏むあの独占製品がこの問題をどう処理するか(ヒント:セキュリティを台無しにする)を私たちはみな知っているが、SuSEでは特定の非rootユーザに自動ログインを許可することで、この問題にエレガントに対処している。キーボードの前に座っているすべてのホーマー・シンプソンを管理者にする方法としては、かなりましだ。

Fedoraの標準音楽プレーヤー(Rhythymbox)は、SuSEのプレーヤー(Kaffeine)より優れているが、RhythymboxでMP3ファイルを再生する手順はわかりにくい。SuSEには、Audacityというみごとなオーディオ・エディタがあるが、Fedoraにはない。ほぼすべてのWindowsメディア・ファイルを再生できるMplayerはどちらのディストリビューションにも欠けているが、簡単にコンパイルしてインストールできる。

まだまだ挙げれば切りがない。おそらく、この二大商用ディストリビューションのフリー版はどちらもJoe Sixpackが使いこなせるまでに至っていないが、それよりも技術に明るいユーザなら間違いなく使いこなすことができる。2つのどちらを選ぶか迷っている読者に、この記事が参考になることを願っている。