オープン・アジア:ラオスとマレーシアのオープンソース
ラオス
オーストラリアのSydneyを拠点とする豪KeyNet Consultancy社のEarl Mardleは、FLOSSは「完全無欠のツール」ではないが、多くのケースで、ボランティア参加を受け入れる融通性と許容性を備えた「唯一の利用可能なツール」であると言う。「例を挙げるなら、Jhaiプロジェクトのラオ語インタフェースは、New Yorkのラオス人コミュニティの一員を中心として作成されている。この人物はたまたま米IBM社の社員でもあり、この仕事をボランティアとして引き受けた」と、彼は語っている。
マレーシア
マレーシアでは、FLOSS(現地ではオープンソースと呼ぶ方が一般的)は重要視されている。ソースコードにアクセスできるので、ローカルソフトウェアの修正と再配布が促進されるからだ。マレーシア人は、FLOSSによって技術開発やシステム開発の環境が向上し、学習、革新、発明の能力が向上すると同時に、国内のソフトウェア産業も刺激を受けると考えている。それ以上に重要なのは、外国のソフトウェア企業からの独立を促し、国内資本の流出を減らす役割を持つと見られていることだ。
マレーシアでは、2001年11月以来、政府によるオープンソースソフトウェアの利用が進められている。 オープンソースへの移行は、2002年4月にAssociation of Computer and Multimedia Industry of Malaysia(PIKOM)のOpen Source Special Interest Groupがまとめた白書に基づいて決定された。
マレーシアは、1999年〜2004年のGNU/Linuxサーバ出荷台数の年間伸び率がアジア諸国でトップ(日本を除く)であると主張する。この伸び率は、マレーシアで81%に迫るが、インドでは79%、韓国では64%、中国では58%である。
Malaysian Open Source Groupは、マレーシアにおけるオープンソース・ソフトウェアの開発と利用、およびハッカー・カルチャーの振興に取り組んでいる。また、Kuala LumpurやPenangのような大都市だけでなく、 Sarawakのような地方都市にもLUGがある。
昨年10月、マレーシア教育省は、米Sun Microsystems社からStarOfficeソフトウェア・スイートの寄付を受け取った。Sunは、「この寄付は4億7,500万マレーシア・リンギット(約1億2,500万ドル)に相当し、全国9,000の高校、500の大学の学生250万人に役立つように用意されました」と述べている。以前にも、同社は前のバージョンのStarOfficeをSelangorとPenangの教育機関に提供したことがある。
Malaysian Institute of Microelectronic Systems(MIMOS)は、アジアのFLOSSプロジェクトをドキュメント化し、重要なりソースへのリンクを掲載するWebサイト を開設した。MIMOSの目標は、重要なアプリケーションを自国語マレー語(Bahasa Melayu) にローカライズすることであり、2003年中にはこれが具体化すると期待されている。「ほかのグループが、いくつかのアプリケーションのローカライズをすでに終えています。こういった仕事を土台にできればと思っています」と、MIMOSのImran William Smithは語る。MIMOSは、政府のために、すでに自国語のLinux GUIとオープンソース・アプリケーションを開発した。
The StarやComputimesなどのマレーシアのメディアが、国内のニュースを詳細に報道している。特にComputimesは、FLOSSに関連するニュースに強い。
昨年の5月、Starは、「この数か月の間に、Malaysian National Computer Confederation(MNCC)とAssociation of the Computer and Multimedia Industry of Malaysia(PIKOM)が、オープンソース運動を専門に扱う特別な組織を発足した。MNCCはコンピュータ・エキスパートの全国組織で、PIKOMは業界団体である。業界の情報筋によると、複数のマレーシア政府機関または準政府機関が、中国のRed Flagプロジェクトで進められているようにLinuxを基に「国定オペレーティングシステム」を作成できるかどうかを調査している」と報じた。この件については、Frederick Noronhaの投稿『Open-Source Software Opens New Windows to Third-World』(Linux Journal/2002年5月2日)が詳しい。
このニュースを先取りしたかのような記事が、2000年5月に報じられている。この記事では、Malaysian Open Source Groupが、Thalassaemia Association of Malaysiaのために、サラセミア(地中海貧血)患者とその家族、ヘルスケア業者がわずかな経費で利用できるeコミュニティシステムを構築したいきさつが読める。このWebベースのeコミュニティシステムには、患者プロフィールのオンラインデータベース、患者と医師または患者どうしの連絡に利用できるフォーラムとチャットが含まれている。また、このシステムは、Desferal――サラセミアの主な治療薬――の入手依頼を取りまとめ、販売業者から割引価格でまとめ買いできるようにすることも目標としている。