Linus:ソフトウェア特許に関するLinux開発者からの公開書簡
Date: Sun, 21 Sep 2003 13:31:12 -0700 (PDT)
From: Linus Torvalds
欧州議会議長Pat Cox氏宛て公開書簡
Cox殿
特許性の適用範囲がコンピュータプログラムへと広げられつつあるヨーロッパの状況を、私たちは憂慮をもって見守っています。現在、欧州議会はこの動きを止めるか、さらに悪化させる法案を採決しようとしています。どちらに転ぶかは、議会による修正にかかっています。
アメリカでの経験が示すとおり、従来の特許とは違い、ソフトウェア特許は革新とR&D(研究開発)を促進しません。その正反対です。特に中小企業と新規参入企業は、ソフトウェア特許に苦しめられます。技術革新と研究を犠牲とし、市場を弱体化し、特許と訴訟への出費を増やすだけなのです。
特に危険なのは、技術的な才能との競争を避けるために相互運用を妨げる目的に、特許制度を濫用しようとしていることです。標準を特許にすべきではないのです! それと同様に、特許を情報公開を妨げる手段として使うべきでもありません。特許はその発想そのものが、期限付きの独占を発明の公開と引き換えに提供することなのです。
ソフトウェア特許は、Linuxとその他のフリーソフトウェア製品の開発にとっても最悪の脅威です。これは、Linuxの開発に携わっていると毎日いやでも感じることです。私たちは、ユーザに本当の力を与え、デジタルデバイドを狭める最良で唯一本当のチャンスを提供する、高級で高品質の高度に革新的なフリーソフトウェア製品を世界に提供できることを望んでいます。すでに十分に厳しい状況を、さらに厳しくすることはどうかなさらないでください。結論としては、私たちは次のような修正を貴殿が提案するようお勧めします。
- コンピュータプログラム、アルゴリズム、ビジネス手法を特許化できないように特許性の限界を明確化する
- 競合製品との相互運用を妨げることで技術的な競争を避ける目的に特許を濫用してはならないと定める
- 情報公開を妨げる目的に特許を使用してはならないと定める
この後に、この法案に対するFFIIの投票勧告を続けることを提案します(www.ffii.orgを参照)。
敬具Linus Torvalds, Alan Cox
原文