オープン・アジア:イランとイスラエルのオープンソース

先週に引き続き、アジア諸国におけるオープンソースソフトウェアの利用状況を国別にレポートする。今回はイランとイスラエルを取り上げる。

イラン

最近、あるアメリカの著名な教授が、「(オープンソースは)猟犬の追跡を妨げる燻製ニシンのようなものだ。オープンソースをどう使えば重要な問題を解決できるのか、誰か教えてくれないか」と、BytesForAll_Readersメーリングリストに投稿した。 イランのArash Zeiniの返答は、非常に明快だった。「イラン人はアメリカの制裁下で生活をしています。イラン人である限り、アメリカ企業とビジネスはできません。良いことでもあり、悪いことでもあります。しかし、いずれにしても、私たちに力を与えてくれるのはFLOSSだけです。FLOSSは、必要な自由を与えてくれます。最良の技術が手に入り、しかもそれはFree/Libre/Openであり、制約はないのです。私たちを鎖につなぐことはありませんし、アメリカが私たちへの政策を決めるまで待つ必要もありません。イラン政府がこういった見方をしてくれればよいのですが」

民間のFLOSS推進者によると、イラン政府がFLOSSに熱意を持っている兆候はない。これまでのところ、FLOSSを利用する試みは、Free/Libre and Open Source Softwareの自由な側面にではなく、セキュリティが高いという事実に焦点を合わせている。

さらにZeiniは、巨大ソフトウェア企業米Microsoft社がペルシア語を正しくWindowsに実装することを決めた時点で、これまでのことは「過去のもの」になると思われたと説明する。「しかし、KDEを使うとペルシア語の実装を自分自身で、もっとうまくできるのです。今では、FarsiKDEを使えば、ペルシア語のデスクトップを利用できます。私たち自身の標準に基づいた環境であり、M$のペルシア語サポートに含まれている誤りはありません。学校でコンピュータを使うときにこれが役立たないでしょうか? 12才の生徒は、英語の勉強をしなくてもコンピュータを使えるのです。少なくとも、M$の支離滅裂なペルシア語アルファベットではなく、正しいペルシア語アルファベットで入力することができます」

今年初め、イランで進められている主要なプロジェクトに関するZeiniのレポートが、linuxiran.orgの Webサイトおよび同組織のメーリングリストに投稿された。また、KDEのペルシア語ローカライズも進められている(イラン国内のペルシア語人口は推定3,600万人)。FarsiWebからはいくつかのLinuxの話題が提起され、Iranphpは、ペルシア語のPHP関連プロジェクトを数件抱えている。イランの多くのISPでは、GNU/Linuxをプラットフォームとして利用しているが、それ以外の用途での利用は進んでいない。また、Linuxはイランのネットワークセキュリティを向上するために導入されつつある。

Sayyed Mohammad Hossein Hamidiは、Sharif University of Technologyのコンピュータ・エンジニアリング学部のネットワーク・セキュリティ研究室に所属する開発者である。彼はこう語る。「専門はセキュリティ製品(ファイアウォールやURLカテゴライザ)です。開発プラットフォームは基本的にLinuxです。第一世代のファイアウォール製品はHadidという名ですが、この研究室で1年半前に開発されたものです。開発チームは、博士課程や修士課程の学生で構成されています」

現在、新世代のMultiNode Firewallというファイアウォール製品が2年間のプロジェクトとして開発されている。LinuxIranメーリングリスト への投稿で、Hamidiはこう述べている。「私の組織では、WindowsからLinuxへの移行が大々的に進められました。ワークステーションのOSは、WindowsからLinuxに変更されています。私たちのコミュニティには、Linuxの愛好者がたくさんいます。Linuxには多大な信頼が寄せられています。昨年、活動の場をモバイルに広げました。Short Message Service(SMS)センターを設置したのです。この開発プラットフォームもLinuxです」

イスラエル

イスラエルは、中東では群を抜いてフリーソフトウェアの開発が盛んな国だ。OpenMosixクラスタリングソフトウェアは、ほんの一例に過ぎない。Oleg Goldshmidtは、インターネットにはニュースサイトを含む多数のイスラエル関連リソースがあるが、ヘブライ語を知らなければ読めないと指摘する。彼によると、「英語しか知らない場合は、Israeli Group of Linux Usersから始めるのが妥当」ということだ。