Linuxに今求められているもの

最近、多くのニュースグループやメーリングリストを対象に、「Linuxに今求められているものは何か」というアンケート調査を実施してみた。規模が小さく、科学的な調査とはとても言えないが、その結果がまとまったので上位10位を紹介することにしたい。

回答のほとんどは標準的Linuxユーザから寄せられたものだ。Linuxを徹底的に使いこなしているユーザや、デュアルブート環境でLinuxを簡単な仕事に使っているユーザからの回答もある。また、単にLinuxに興味がある(Linuxを試す機会を伺っている)だけのユーザや、一部のアンチLinuxユーザからの回答も混じっている。

回答はカテゴリ別に分類した。たとえば、Linux版のPhotoShopや税金計算プログラムが欲しいという回答は「アプリケーション」に、という具合だ。ゲームに関しては多くの回答が寄せられたので、「ゲーム」という独立したカテゴリを用意した。

1位: アプリケーション

回答のほぼ1/4は、新しいアプリケーションの登場を望むものであり、具体的な名前としては、Quark、PhotoShop、AutoCAD、Microsoft Officeなどが挙がった。RealPlayerの新しいバージョンが欲しいという回答もあった。また、具体的なアプリケーションではないが、OCRや税金計算のアプリケーションを望む声もあった。

2位: 使い勝手

Linuxの使い勝手の向上を望む回答は16%に上った。「システム設定用のGUIアプリケーションがあれば便利だ」、「アプリケーション間に一貫性を持たせて欲しい」、「Mac OS Xに比べるとまだまだあか抜けていない」などの具体的意見のほかに、「もっとWindowsに似せろ」という意見まであった。

3位: デスクトップマシンへのプリインストール

Linuxで問題なのは機能面ではなく、プリインストールへの対応の遅れであり、それが原因でいま一歩、普及し切れていないという指摘は10%あまりに及んだ。これについては、過去にDR-DOS、OS/2、BeOSといったオペレーティングシステムと覇権を争ったMicrosoftもまったく同じ見方をしているのではないだろうか。だからこそ、Linuxのプリインストールを必死になって妨害しているのだ。Microsoftはつい最近も(和解後にもかかわらず)、Linuxをプリインストールしないよう主要OEM各社に違法な圧力をかけているとしてマサチューセッツ州に訴えられている。

Linuxブームが始まって5年後の今、主要OEMの中で初めてHPがLinuxプリインストールモデルの米国内発売に踏み切っている(WindowsモデルとLinuxモデルの両方が用意されており、使いもしないOSの料金まで支払わなくても済むのはユーザにとってはありがたい)。需要があることは、HP、IBM、その他のOEMがインドや中国、タイでLinuxプリインストールモデルを発売し、売れ行き好調なことからわかっていたことだ。ついに米国内でもLinuxプリインストールモデルが発売されたことから、このカテゴリの意見(回答)が市場の声を正しく反映したものかどうか、まもなく明らかになるだろう。

同率4位: ドライバおよびゲーム

ハードウェアメーカーとの連携を強め、ドライバ提供を求める必要があるとする意見は10%に上った。多かったのが3-D ビデオカードに対する要望だが、ボードの充実が必要ということでは、このカテゴリのほとんどの意見が一致していた。

ゲームソフトの充実を訴える声も10%に及んだ。Linuxに特化した「スーパーゲーム」の登場を期待するユーザ、すべての人気Windows版タイトルの移植を期待するユーザが各1人いた。Linuxのゲーム市場は今はまだ規模は小さいかもしれないが、だんだんにぎやかになってきていて成長していることは確かだ。

第6位: 認知度向上

Linuxの問題点を大きな視野で捉えているユーザーもいた。Linuxという名前が一般にも浸透する必要があるというのだ。認知度が上がれば、Linuxを積極的に導入する経営者が増え、ハードウェアメーカーもLinux市場を無視できなくなるだろうという見方もあった。

第7位: アプリケーション・インストール手順の簡略化

このカテゴリの意見は、特定のパッケージ管理方法に対する不満に触れるというより、普遍的なソリューションの登場を求めている。彼らが期待しているのは、ディストリビューション間の違いを埋め、軽快な動作を保証してくれる何かだ。

8位〜10位のカテゴリに分けられた意見はそれぞれ10件と同数だった。そこで私は「賢者のカード」を行使し、最終的に3つの順位を決定した。この3つのカテゴリに寄せられた意見の中で、次にLinuxに求められていることが何なのかを占うための材料たり得るものは見当たらない。

第8位: より良いMicrosoft Officeファイル用フィルタ

ここ数年、状況は改善しているが、その一方で、目標はさらなる高みへと設定され直している。今後も改善が必要であることには変わりない。

第9位: ドキュメント

これはLinuxに限ったことではない。ドキュメントはMac OS XやWindows XPにも共通する、ユーザ泣かせの問題だ。

第10位: ホット・プラグアンドプレイ

これがどれだけ役に立つのかはわからないが、魅力的ではある。

以上の結果をまとめてみて驚かされたことが3つある。その1つは、プリインストールの問題を指摘したユーザが予想以上に多かったことだ(彼らの指摘は的を射たものだが、当たり前といえば当たり前といえる)。Linuxの認知度の低さを問題視しているユーザーもまた多かった。興味深いのは、この2グループのユーザが熟練者と呼べるユーザたちだったということだ。

そして、最大の驚きは、アンチLinuxの声がすっかり影を潜めていたことである。60件を越える回答の中で、インストール手順が複雑すぎる、簡素化してほしいという意見は1つとしてなかった。インストールの簡素化に取り組んだすべての人々を讃え、そして、このリストに載った要望も同様に実現されることを心から祈りたい。

最後に指摘しておきたいことがある。それは、今回寄せられた意見、指摘のほとんどがLinuxをサーバプラットフォームとしてだけでなく、デスクトッププラットフォームとしても見据えていることだ。「Linuxはデスクトッププラットフォームとしては時期尚早だ」とするもう1つの反対キャンペーンが次に消えるであろうことを、控えめながら私の予言とさせていただく。

Joe Barr: IT全般のライターとして10年来活躍し、5年前からはLinuxについての執筆活動も始めている。その記事はIBM Personal Systems Journal、LinuxGazette、LinuxWorld、Newsforge、phrack、SecurityFocus、VARLinux.orgなどに掲載されている。Linux Liberation Armyの公式ニューズレター、The Dweebspeak Primerの創立者でもある。