MicrosoftとSCOの関係を読む

1,000万ドルから3,000万ドルでSCOからUNIXのライセンスを購入したMicrosoftは本当のところ何を企んでいるのか? 答えはいたって簡単だと思う。彼らはLinuxを傷つけたいのだ。どんなことであれ、Linuxの評判に傷がつけば、それがたとえUNIXをめぐるSCOの知的所有権の主張を支持するものであっても、Microsoftは利を得るのである。

Microsoft Watchの主席記者、Mary Jo Foley女史も私と同じ意見だ。彼女はこう言う。「Microsoftは何とかしてLinuxにもっと泥を塗ろうとしているだけよ。Linuxを傷つけ、ユーザの動揺を誘う、そんなところね。」 OSI(Open Source Initiative)代表のEric Raymond氏は「同感だ」と言いながら、こう付け加える。「SCOに金を渡すことで彼ら(Microsoft)はLinuxを傷つけるSCOに加勢することになる。実に馬鹿げた話だ。」

IDCシステムソフトウェア研究担当副社長のDan Kusnetzky氏も、SCOの法的な駆け引きはMicrosoftの勝利以外に何ももたらさないと見ている。しかし、彼はこうも考える。「SCOが勝っても負けても、あるいは引き分けても、SCOの行為に対する非難の矛先はMicrosoftに向かうだろう。」

彼は正しい。IBMとLinuxを攻撃しているSCOに財源を供給するMicrosoftを非難する人々がもう出てきている。

しかし、それ以外にもっと何かあるのか? MicrosoftはやはりSCOとぐるなのだろうか? 私はそうは考えない。この取引が行われる以前、SCOとCalderaはどちらもMicrosoftを相手に恨み骨髄の長い歴史を経験してきたからだ。

Linuxにかけられた嫌疑がMicrosoftを利することは疑うべくもないが、噂に反してMicrosoftはもうSCOの株を所有しておらず、その状態がここ何年も続いている。実際、MicrosoftがCaldera/SCOと最後に公式の取引をしたのは2000年1月上旬のことで、そのとき Microsoftは同社がDR-DOSを排除しようとしたとのCalderaの申し立てに和解するために約6,000万ドルを支払ったのである。Microsoftは非を認めていないが、和解金の支払いはそれが事実であったことを如実に物語っている。

この取引でMicrosoftに対するSCO/Calderaの感情が好転することはなかった。SCOがMicrosoftをどう思っていたか、その典型的な例は2002年2月のマーケティング白書『Caldera vs. Microsoft: Attacking the Soft Underbelly』などに見ることができる。

歴史を振り返ってみよう。MicrosoftがAT&TからUNIXコードのライセンスを購入したのは1980年のことで、それはMicrosoft版のUNIXであるXenixを開発するためだった。当時は、XenixをMicrosoftの16ビット・オペレーティング・システムにする計画だったのだ。しかし、計画が独力で実現できないことをすぐ悟ったMicrosoftは、当時UNIXの移植を行っていた小さな会社、SCOと共同で開発を進めることにした。そして1983年ごろになると、8086および8088チップ向けのSCO XENIX System Vが登場し、両社はそれを販売していたのである。

しかし、MicrosoftがXenixは自分たちの必要とするものでないと判断するのにそれほど時間はかからなかった。1984年、MicrosoftはAT&Tへのライセンス使用料の支払いに嫌気し、MS-DOSの人気が高まったのを契機にUNIXビジネスからの撤退開始を決めたのである。

だが、MicrosoftとSCOの関係がそれで終わったわけではなかった。1988ごろになると、MicrosoftとIBMは次世代のオペレーティング・システム(OS/2とUNIX)をめぐって対立していた。当時、MicrosoftはIBMがOSF(Open Software Foundation)を支持しているのを知っていた。OSFはAT&TとSun(後のSolarisにつながる)の連合にAIXベースの共通のUNIXで対抗するために設立された団体である。

このことがIBMとの共同オペレーティング・システム・プロジェクト(OS/2)の計画だけでなく、Windowsに関する独自の計画にも不利に働くと考えたMicrosoftは、一時、OSFへの参加を検討したが、結局参加しないことに決めた。その代わり、Bill Gates氏率いるMicrosoftは自社のオペレーティング・システムへの保険としてOSFのメンバであるSCOの株を1989年3月に約16%を取得したのである。

2000年、Microsoftはついに最後のSCO株を売却した。だけれども、CalderaがSCOを買収する以前から、MicrosoftとSCOの争いは続いていた。その最後の戦いが決したのは1997年のことで、その年、SCOが80年代からずっとMicrosoftに支払ってきたヨーロッパにおけるXenixの技術使用料をめぐる争いにやっと決着がついたのである。

このように長く、悪い歴史があるにもかかわらず、今日のSCOが以前のSCOともCalderaとも関係があることをはっきり言う人はいない。だが、SCOとMicrosoftがIBMとLinuxに対して共同戦線を張るにはハネムーン期間があまりに短すぎたのではないかとも思う。

また、MicrosoftがIBM、Sun、Linux関連会社を相手にライセンスをめぐって法的な戦いを仕掛けるためにSCOを買収するなんてこともありそうにないと思う。彼らは自分たちの独占禁止法の裁判でまだ手一杯だからだ。なまぬるい判決ではあったが、彼らが敗訴したことも忘れてはならない。競争相手のオペレーティング・システムを攻撃する能力を金で買うことはできても、Microsoftは痛みの世界しか得られないだろう。

それに、Eric Raymond氏の『Open Source Initiativeポジション・ペーパー』とBruce Perens氏の『The FUD War against Linux』でも指摘されているとおり、SCOの側に十分な訴訟事実があるとも思われないのである。

それどころの話ではない。Perens氏が先日教えてくれたのだが、SCOの訴訟事実について指摘されている問題以外にも問題があった。実は、SCOはほとんどの16ビットUNIXおよび32V UNIXのソース・コードを無料で使えるようにしていたのである。2002年1月23日にCalderaはこう書いている。「Caldera International Inc.は今ここに無料ライセンスを供与いたします。このライセンスは下記のソース・コードを使用、変更、配布する権利を含みます。また、当該ソース・コードから派生するバイナリ製品を作成する権利も含みます。」具体的に名前が挙げられているわけではないが、この手紙から察するに、これらのオペレーティング・システムはBSDライセンスのもとに置かれたのではないかと思う。System IIIとSystem Vのコードを含むとは書かれていないが、SCOの訴訟をいっそう混乱させることは間違いない。

SCOはそのときから現在までSCOの「Ancient Unix」ソース・コード・サイトを停止しているが、コードと当の手紙は私のミラー・サイトにまだ残っている。

こうして考えると、MicrosoftはSCOに対してやるべきことを全部やったのではないだろうか。彼らは最小の投資でFUDをばら撒くのを助けた。それ以上やっても法的な問題に巻き込まれるだけだ。だから、現在のUnix/Linux問題の責任を負うのはSCOだけであり、いずれSCOだけが法廷に立たされることになるのだろう。

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