XFree86分裂の背後にあるもの

一通のメールがオープンソース・コミュニティ全体を揺るがすというのはそうあることではない。しかし、今回一連のXFree86分裂騒動の発端となったメールは、GNU/Linuxに対してただ使うという以上の関心を持つ人々には相当な衝撃を持って受けとめられた。

問題のメールの中で、開発版ソースツリーに変更をコミットする権限のある XFree86のコアチーム5人は、プロジェクトの分裂を図ったとして同じコアチー ムメンバの一人Keith Packard氏を公 に弾劾し、コアチームから追放した。Hewlett-Packard社に勤務するPackard氏は 最近になってFontConfigやXftなどを開発してXにおけるフォントの扱いを劇的 に向上させた立役者であり、このところ最も活発だったX開発者といっても 過言ではないだろう。

Packard氏も直ちに「A Call For Open Governance Of X」と題するいわば檄文 を流し、反撃に出た。ここではGNOMEの主要な開発者の一人であるOwen Taylor氏らが協力者として名を連ねているのも興味深い。そして、Packard氏 は自分たちのプロジェクトの拠点xwin.org を立ち上げた。

XFree86の分裂劇は、オープンソース・プロジェクトにありがちな開発者の内 輪もめに過ぎないのだろうか。どうやらそうではなさそうだ。Packard氏がこ のような思い切った行動に出たのにはそれなりの理由がある。簡単に言えば、 コアチーム制が機能していなかったのだ。

以前から、「XFree86にパッチを投げてもなかなかソースツリーに反映されな い」という不満は筆者の周辺でもささやかれていた。外部からのパッチはコア チームがレビューしたのちソースツリーにコミットされることになっていたが、 多くの場合レビューされることもなく放置されてしまっていたのである。その 典型が、ATI Technologies社がわざ わざ提供したにも関わらず、XFree86 4.3.0が出るまで数ヶ月はおろか一年近 くに渡って放置されていたATI Radeon 9500用のドライバだ。かと思うと、か つては突然Xutf8関連の関数を強引にねじ込んでみるなど、どうもやっている ことが恣意的という感触が拭えない。リリーススケジュールの迷走ぶりも目に 余るものがあった。

ようするに、XFree86はプロジェクト内で明文化されたルールや役割分担が無 く、リーダーシップが不分明だったため、誰が何を考えて何をやっているのか 外部からはよく分からなかったのである。このような意志決定の不透明さが、 Packard氏らの不満の根底にあったに違いない。

XFree86の開発は今後どうなっていくのだろうか。あくまで筆者の予想に過ぎないが、おそらくPackard氏の線で事態は推移していくのではないかと思う。部外者 の筆者の目から見ても、Packard氏の批判は多くの面で正当だからだ。従来の コアチームの側も氏の挑戦を受けて、公開の議論の場を設けたり、バ グ追跡システムを設置したりしてオープンな開発形態に移行しようと試みては いるが、そもそも氏がこのような思い切った行動に踏み切らなければ変わろう としなかったというところに問題の根源が有る。

いずれにせよ、今後再び開発が一本化されるのか、それともFSF Emacsと XEmacsが分裂したままそのまま独自の進化を続けているように、このまま発展し ていくのか。今後の展開を注目したい。