必要なのは、開発の集中化ではなく広報活動の集中化
開発者はオープンソース・プロジェクト同士の競争に時間を浪費するのをやめて、全員が各分野の「最有力プロジェクト」に取り組むべきだとする声が何度となく上がっている。開発競争による無駄な労力の例として、KDEとGnomeがよくやり玉に挙がるが、ほかにも同じような例はたくさんある。
私には、オープンソース開発における競争をこのように憂慮する理由がまったく理解できない。確かに、SourceForge.net には放棄されたプロジェクトが何千もあるし、重複するプロジェクトもたくさんある。Linux用のコマンドラインファイル共有プログラムは必要以上に揃っているのに、オープンソースのまともな税務ソフトウェアはまだ1つもない。
しかし、だから何だというのだ? これらのSourceForge.netの大半のプロジェクトは、人々が空き時間に趣味で始めて管理しているものである。彼らはプログラムを書くことが好きで、私は浜辺で凧をあげることが好きだ。私はこれまでに、浜辺で凧あげをしている人々がほかにいるからといって、自分の凧あげを止められたことは一度もない。また、メキシコ湾上空に千個の凧を浮かべる代わりに、フロリダのその地域の浜辺で凧あげをしている全員が集結し、1つの巨大な凧を作ってあげるべきだと考えたこともない。千個の凧を浮かべることができるなら、千個のオープンソース開発作業を続けることも同じようにできる。もしも各用途にプログラムが1つだけあればよいのなら、全員がWindowsとMicrosoftの製品を使い、賢い開発者はみなMicrosoftに働きに行って、その他の人々はコードを書く代わりに凧をあげに行くことができる。その方がはるかに効率的だ。そして退屈だ。ソフトウェア改革は、ほぼ完全に停止してしまうだろう。
凧は遠くから見ることができる
アンナマリア島の浜辺に近付くにつれて、空に凧があがっているのを見ることができる — 風が吹いていなければ、凧が見えないこともある。人々がどの種類の凧を選んであげているかを見ることもできるし(風の状態によって、最適な凧の種類は異なる)、目の前の空の状態に応じて、ほかの人々が凧をあげるのを見物するか、自分で凧をあげるかを選ぶこともできる。また、どの凧をあげるかを決めることもできる。
ソフトウェアは、そこまでわかりやすくない。ほぼすべての開発作業の中心にいるのは、モニターの前に座り、入力と思考を果てしなく繰り返している人々である。たいていのオープンソース・プロジェクト(および多くの独自開発プロジェクト)では、彼らは同じ部屋や建物の中にいるのでなく、自宅で1人で作業をしており、近所の人々ですら彼らが何をしているかを知らない。彼らが何をしているかや、進行中の作業がすばらしく革新的なのか、単に既存のものを再発明しているのか、またはより有用な作業に取り組む前の独習プロジェクトとして行われているのかを、プログラマの自宅または職場以外からうかがい知る方法はない。
もっと目に見える選択的なプロジェクトが必要だ
確かに、 freshmeat.net はきわめて重要なリソースである。ここでは、プロジェクトの更新や作業の担当者など、オープンソース・プロジェクトのかなり完全な状況を知ることができる。しかし、ここは主に、オープンソース・ソフトウェアを既に利用したり取り組んだりしている「内輪の」人々に役立つように意図的に作られている。まだオープンソースを知らない人々に手を差し出すのに便利なツールではない。そして — 現実を甘く見るのはやめよう — 地球の人口の95パーセント以上はそうした人々なのだ。
NewsForgeとLinux.comでは、オープンソース・ソフトウェアの開発の最新動向を把握するように努めている。新しいプロジェクトや製品はできるだけ頻繁に発表および評価しているが、我々のリソースは限られており、やはり — ここでも現実を甘く見るのはやめよう — 読者の大半は、既にLinuxとオープンソースに興味を持っている人々である。
Linux International は、本来、人々への「啓蒙活動」を支援する組織のはずだが、ドットコム企業の凋落以降、企業からの資金提供を維持することが難しくなっており、サイトの「Marketing」ページ には1年以上も新しい投稿がされていない。また、「Corporate Members」ページのいくつかのリンク先は消滅している。
Linux Internationalが、ボランティアを動員してこのきわめて重要なWebサイトを維持し、好奇心の強い個人はもちろんのこと、サイトを企業の潜在的なLinuxおよびオープンソースのユーザのための主要な情報源にしようと目に見える形で努力している形跡はない。
私は常に、Linux Internationalが、特に企業レベルではLinuxとオープンソースの「唯一の」包括的な広報機関になるべきだと考えてきた。Linux Internationalの会長兼取締役のJon “maddog” Hall 氏は、世界で最も説得力のあるLinuxとオープンソースの代弁者の1人である。
しかし、maddog氏1人ですべてをこなせるはずはない。我々が手を貸す必要がある。まず、Linuxの商業的な成功談や、プレスリリース、その他の資料をLinux Internationalに送ることから始める。そして、「だれかほかの人が」すべての作業をしてくれるのを待つ代わりに、たとえ我々の何人かが貴重な自由時間の一部をLinux Internationalでのボランティア作業に費やさなければならないとしても、この資料がグループのサイトで公開され、だれからも参照できるように面倒を見る必要がある。さもなければ、主流のメディアや、企業でLinuxを採用しようと検討している人々に、Linuxとオープンソースの情報やプレスリリースを着実に提供し続けることができる新しい組織を設立する必要がある。
我々に必要なのは、Linuxとオープンソースを利用および開発している個人と、それを採用して利益を上げている企業の両方が支援する、強力で統一された「Linuxとオープンソースの公共の声」である。これは、統一されたデスクトップ、統一された開発環境、統一されたライセンス、その他のGNU/Linux、オープンソース、およびフリーソフトウェアの世界における「統一」よりもはるかに重要である。