アイルランドの大学がオープンなワークロー・ソフトウェアに良い評価を与える
KDEGでは、OpenOffice.orgのユーザとWordのユーザが混在しているため、ワークフローを整備し、クロスプラットフォームの互換性を実現する必要があった。 研究者たちは電子メールを使って共同作業を行おうとしたが、バージョン管理が大きな問題だった。 この問題に対する解決策は、通りのちょうど反対側にあるIBMのAdvanced Center for Technology Studiesで見つかった。 「IBM Workplace Collaboration Servicesに最初に出会ったときは、研究の一環として興味を持ちました」KDEGの大学院生であるAlex O’Connorは言う。彼らの研究費はEmbark Initiative of the Irish Research Council for Science, Engineering and Technology(IRCSET)によってまかなわれている。 「しかし、この製品が自分たちの研究を管理し、発表のニーズを解決するための有用なツールにもなりうることにすぐに気付きました。 最終的に、この製品によってチームの作業効率をさらに高めることができると判断しました。」
IBM Workplace Collaboration Servicesは、会社や組織内の誰もがドキュメントを共有、編集、および保存し、常に最新版のドキュメントを入手できるようにするアプリケーションである。 また、電子メール、カレンダー、予定表、インスタント・メッセージ、およびWeb会議の機能も備えているため、遠隔地にいるユーザ全員が同じドキュメントを参照し、議論に参加し、編集内容をその場で確認することができる。
O’Connorは何年も前からLinuxや他のオープンソース・ソフトウェアの“熱烈な”ユーザである。 仕事とプライベートの両方で、オープンソースとクローズドソースのソフトウェアを組み合わせて使っているという。 大学のコンピュータ・サイエンス学部に属するKDEGでは、Webサイトのネットワークを運用するためにLinuxとApacheをすでに使用しており、KDEG内の多くの研究者がデスクトップ・オペレーティングシステムとしてLinuxを使用している。 「我々の多くのコードはJavaで書かれています」O’Connorは言う。「また、TomcatとJBossを使い、Linuxで運用されているプロジェクトが数多くあります。 グループ内の多くのプロジェクト、特にeラーニングとセマンティックWebに関連するプロジェクトには、Webサービスの側面もあります。 これらのプロジェクトでは、研究者がJenaやAxisプロジェクトなどのオープンソースのツールキットを使い、プロトタイプ開発に役立てていることが少なくありません。」
オープンソース・ソフトウェアは、すでにKDEGのインフラストラクチャの一部になっているため、プロジェクト・コーディネータを説得してLinuxのWorkplaceを導入するのはさほど難しいことではなかった。 「オープンソース・モデルは、研究者にとって自然なモデルです」O’Connorは言う。 「多くの研究者が自分の研究成果を開示し、コミュニティの他のメンバーに精査および活用してもらいたいと考えています。 一般に、オープンソース・モデルと研究成果の間には自然の相乗効果があることがわかっています。」
時には、グループの研究パートナーがプロジェクトの商業展開にこだわるあまり、オープンソース・ソフトウェアの使用に抵抗することもあるそうだが、今回はそのような障害はなかった。 「Linuxや他のオープンソース・システムの使用に対する抵抗はほとんどありませんでした」O’Connorは言う。 「ここの研究者はどちらかといえば専門の技術者で、プログラムやシステムの内部を熟知しており、使用中のツールのソースをいじったり調べたりできることを好みます。 しかも、使用中のツールのソースにアクセスして研究用に改造できるのは大きなメリットです。」
Workplaceの導入に伴う最大の課題は、新しいバージョンとツールに関する最新情報を絶えず全員に提供し続けることだった。 しかしO’Connorによると、発表とドキュメント保管のための標準化されたワークフローを持つことの利点は、あらゆる障害を補ってなお余りあるほどだった。 また、ソフトウェアのソースコードがあるため、KDEGの研究者は各自に必要な方法で自由にソフトウェアを使うことができる。 「ソフトウェアがそのままの形で有用なら、異なるユーザ間で導入するのは単純で簡単です」O’Connorは言う。 「ソフトウェアそれ自体が研究の対象となりうるものである場合、オープンソース・モデルであれば、KDEGの研究者がそのソフトウェアを改良して限界を広げることができ、実践的な方法で学んだものを共有して研究コミュニティと開発コミュニティに恩恵をもたらすことができます。」
O’Connorによると、グループでは研究において、またインフラストラクチャの一部としてオープンソース・ソフトウェアを使い続ける予定だ。 「いくつかのプロジェクトの成果をオープンソース・アプリケーションとしてリリースする可能性もあります。ただし、この計画はまだ具体化の途中です。」
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