永の別れを告げたLibranet
Danzigは3か月間のイスラエル旅行に出る予定であり、2006年2月に帰国して以降Libranetディストリビューションを再開する可能性を否定してはいない。しかし、今のところ、この発表は、最古級かつ多くの人々から愛用されてきたDebianベース・ディストリビューションの終焉を告げるもののように思われる。Distrowatchは、現在「休止中」と評価している。
Libranetは1999年にJon DanzigとTal Danzigによって創設された。このディストリビューションは登場以来3つの特長、すなわち、インストーラーの使いやすさ、構成ツールAdminmenuの提供、パッケージの包括性で知られていた。その後、Linspire、Mephis、Ubuntu、Xandrosなど、他のDebianベース・ディストリビューションが追随し、こうした機能は今ではLibranetの独擅場というわけではなくなっている。
新バージョンの価格が高いことに不満を漏らすユーザーもいたが、Libranetは小さいながらも熱心なコミュニティを常に引きつけてきた。初めてのユーザーを温かく迎えることで知られるこのコミュニティのフォーラムには、3,700人を超えるユーザーが登録していた。多くの人々にとって、Libranetは「初めてのDebian」だったのである。
しかし、運営は家内工業の域を出ず、創立者のJon Danzigが6月1日に癌で死去したことで行き詰まった。Jonの子息であるTal Danzigは2年ほど前からビジネス面を担当するようになっていたが、父親が担っていた仕事を引き受けるのに困難を感じているようだ。9月30日のブログで「伝統を守りたいのは山々です。父の仕事ですし、それ以上に私自身の仕事でもあるのですから」と言いつつも、「今は少し休ませてください。先のことは、その後にしたいと思います」と述べている。
そして、11月25日には「私はビジネスマン向きではありません。ですから、私一人でこの会社を切り回すことはできません」と述べ、すべてはイスラエルから戻ってからだとする一方で、会社からの「引退」を滲ませた。
これに対して、Libranetのフォーラムにはさまざまな意見が寄せられた。この春にリリースされたLibranet 3.0を購入した直後に営業休止を宣言され怒りを露わにする人もいた。Tal Danzigが営業停止をブログで発表したことについて、フォーラム上で直接Libranetコミュニティに対して公式発表すべきだったという不満もあった。しかし、こうした批判を寄せた人のほとんどは、この1年以内にフォーラムに登録した人か、Libranetで練習してから他のディストリビューションに切り替えるつもりの人たちである。
こうした少数の意見に対して、大勢を占めたのは、これからもLibranetディストリビューションを強力にサポートするという意見であった。Libranetの最新バージョンをできる限り使い続けると表明したユーザーは一人や二人に留まらない。
その他、コミュニティとしての対応を提案する人。公開フォーラムを通じて新規ユーザーの支援を続けようという人。中には、ライセンスが明らかでないインストーラーとAdminmenuのソースコードをリリースするようLibranetに求める人もいた。さらに、Libranetを自主運営しようとユーザーの協力を提案する人さえもいた。もっとも、この記事の執筆時点では、そうした活動の具体的な計画は示されていない。
批判的なものも含め、ほぼすべての意見がTal Danzigの困難な立場に同情を示している。そして、Libranetの終焉を予想しつつも、多くは2006年に再起するという淡い期待を寄せている。
現在Tal Danzigのコメントは得られていないが、Libranetユーザーからの支援の言葉に対して、11月29日のブログに謝意が表明されている。「電子メールで、ブログのコメントで、フォーラムで、多くの人々が支援のお言葉を寄せてくれました。そうしたすべての人々に感謝いたします。身に余るご厚意に勇気づけられました」
かつてLibranetで仕事をし、今でもコミュニティで活発に活動しているプログラマーDaniel de Kokは、Libranetの発表とコミュニティの反応について次のように述べている。
Libranetのコミュニティはとても温かくとても親密なコミュニティです。豊富な知識を持つ人たちも沢山います。この発表を受けてコミュニティが真っ先にどう反応したかを見てください。そこには、私たちのコミュニティの面目躍如たるものがあります。コミュニティのメンバーは絶望の中にただ手をこまぬいてはいません。すぐさま、Libranetの夢――使いたいと思うすべての人にGNU/Linuxを届けるという夢を受け継ぐべく模索を始めています。
Bruce Byfieldは研修コースの開発者でありインストラクター。コンピュータ・ジャーナリストで、NewsForgeの常連でもある。
原文