ccHostによるメディア共有

ccMixterでは、ミュージシャンとDJがCreative Commonsライセンスのもとで音楽コンテンツを共有し、アーティストコミュニティを形成している。これには、オープンソースのバックエンドシステム、ccHostの果たす役割が大きい。ccHostは、マルチメディアコンテンツの蓄積・追跡・共有を推進するインフラストラクチャである。

Creative Commonsは、2002年、著作権の現代的かつ柔軟な理解を広めることを目的に発足した。ここで言う「理解」のなかには、著作権がなぜ有用かについて公衆を「教育」し、Creative Commons(CC)ライセンスのもとで独自のオリジナル作品を生み出し、他と共有するよう「奨励」することも含まれる。GNUライセンスがソフトウェアとその関連文書を対象にし、それに固有のニーズを満たそうとするライセンスであるのに対し、CCライセンスはもっと幅広い性格を持っている。

具体的には、写真・イラスト・音楽・ビデオなどの芸術作品への適用を念頭に置いている。だが、これまでは、個々の芸術家が自己の作品を発表・共有するためのインフラストラクチャがなく、そのため、CCライセンス自体も大きな影響力を持ちえずにいた。ccHostは、そうした状況を是正しようとする試みである。

コード

ccHostはPHPで書かれており、MySQL 4上で稼動する。もとはGeeklogウェブログパッケージをベースにしていたが、現在では、コメントモジュールとフォーラムモジュールにphpBB、メタデータの処理にGetID3を使用している。

GetID3は、名前からわかるとおり、もとはMP3タグの読み取り関数だったが、現在では50種類を超えるマルチメディアファイルフォーマットを読むことができる。ccHostも同様で、「DJ版フレンドスター(出会い系サイト)」として始まったが、かなり拡張され、いまでは非オーディオ系のデータ型もいくつかサポートするインフラストラクチャに成長した。

ccHostサイトでは、ユーザが演奏サンプル、音声、ミキシング済みトラックなどをアップロードする。誰でもそれをダウンロードして自分の曲に利用してよいし、できあがった曲をまたアップロードしてもよい。サンプルやトラックにはタグが付く。タグの内容は、埋め込まれたID3タグから読み取られたメタデータと、アップロードしたユーザ自身が割り当てたタグである。これが柔軟なメカニズムとして働き、素材探しに役立つ。ミキシングされたトラックとその要素であるサンプルや音声との関連、リミックスと元のトラックとの関連、すべての音楽と作成者との関連が明確になる。

サンプルや完成トラックを含むすべてのファイルは、中央のccHostサーバに格納される。悪用を防ぐため、管理者にはファイルアップロードを制限する権限が与えられる。訪問者は、とくにサイトに登録しなくてもファイルをダウンロードし、ストリーミングオーディを聞くことができる。

ccHostソースコードは、昨年6月に初めてリリースされて以来きわめて好評で、すでに9月にはCreative Commonsがプログラマ兼アーティストのJon Phillipsをフルタイムで雇い、ccHostとccMixterの維持・管理に当たらせるまでになっている。

サイト

ccMixterは、2,000人を超える登録済みミュージシャン、ミキサー、音楽ファンからなるコミュニティであり、Creative Commonsが用意したccHostパッケージ実験室と言ってよい。ccMixterに登録されているトラック数は、現時点で2,000件をわずかに下回る程度にすぎないが、その数は着実に増加している。

ほとんどの音楽素材は、電子音楽とヒップホップのジャンルに属している。オフラインの世界で最も頻繁にサンプリングされ、リミックスされるジャンルと一致しているが、ほかにブルース、フォーク、カントリー、クラシック、ブラジルや日本の音楽なども見つかる。初めてサイトを訪れる人は、編集者のお勧め視聴者の人気曲から入っていくとよいだろう。

プロジェクト認知度を高める活動の一環として、Creative CommonsとインディーラベルMagnatuneの後援で、7月にリミックスコンテストが開催された。参加者に与えられた課題は、Magnatune非商業カタログにあるサンプルやトラックと、MagnatuneレコーディングアーティストLisa DeBenedictisのボーカルのリミックスである。優秀なリミックス作品は、DeBenedictisリミックスCDとしてリリースされ、印税の50%がリミキサーに支払われる。

Creative Commonsは、2004年(のccMixter立ち上げ以前)にもリミックスコンテストを開催したことがある。このときは、WIREDマガジンのThe WIRED CD: Rip. Sample. Mash. Share. CDが使われた。これは、David Byrne、Beastie Boys、Paul Westerberg、Chuck D.といった著名アーティストのCCライセンス素材をフィーチャしたCDで、その内容は現在でもccMixterに置かれている。どちらのコンテストも、ccMixterプロジェクトに世間の目を向けさせるのに大きな力があった。

ccMixterには、ccHostの能力を実証し、多くのccHostユーザを誕生させるという長期目標が与えられている。Creative Commonsの公式Wikiには、すでにいくつものccHostサイトが登録されていて、なかにはオーディオに加えてビデオにまで活動範囲を広げはじめたところもある。これも、ccHostコードベースの柔軟性を示す1例と言えよう。

原文