無料でサービスを提供する英国のオープンソース・コンサルタント

OpenAdvantageは英国のウェストミッドランズを本拠地とするITコンサルタント会社である。名前からもわかるように、オープンソース・ソフトウェア・ソリューションを専門とし、オープンソースの初歩からカスタム開発サービスに至るまで、あらゆるサービスをクライアントに提供している。それがまったく無料なのだ。

英国は地域経済振興を目的として9つの地域に分割され、各地域に地域開発公社(RDA)が置かれている。それぞれのRDAに予算が与えられ、その地域の経済とインフラの向上に役立つとRDAが判断したプログラムとイニシアチブへの資金供給に使われる。Advantage West Midlands(OpenAdvantageの地域を管轄するRDA)は、地域内の企業にOpenAdvantageが無料でサービスを提供できるよう、そのための資金を同社に供給している。

OpenAdvantageの共同設立者でアシスタント・ディレクタのPaul Cooperは言う。「我々はウェストミッドランズの企業がオープンソースを使用することでうまくやっていけるように手助けしている」

Cooperと友人のScott Thompsonは同じ大学で、大学と学外のユーザのためにWebソフトウェアを開発して金を稼いだ。「我々が提供したものはすべてオープンソース・ツールがベースになっていた」とCooperは語る。「セールス・プレゼンテーションを行ったとき、オープンソースがどんなものか説明するのに最初の30分を費やしてしまった」

「たぶんセールスマンのような腕がなかっただけなんだろうが。とはいえ、オープンソースについての情報を広める組織があればいいのにと思った。そうすれば、セールス・プレゼンテーションで『オープンソースなら大丈夫です』と言って、すぐに具体的な話に移ることができるだろう」

純粋なボランティアによる普及活動が好ましいけれども、後援してくれるものが何もない、とCooperは言う。それに対し、資金援助を受けられるOpenAdvantageのようなサービス提供機関は、企業を手助けして実際に事業を始められるようにするためのリソースを持っている。そういうわけで、3年半前、CooperとThompsonはそうしたリソースを提供すべく準備に取りかかったのだ。

成功するまでに紆余曲折はあったものの、今はとてもうまくいっているそうだ。「分野によっては、サービスに対する需要が凄まじく、問い合わせに応じるだけでも大仕事だ」とCooperは語る。「Web開発、PHP、Mambo、Ploneなどについては、膨大な問い合わせがある。こうした分野やLinuxシステム管理に関係したトレーニング・コースや成功に直結するコースを告知すると、たいてい申し込みが殺到する」

けれども、まだ企業でデスクトップ用としてLinuxが大規模に採用された例はないそうだ。「主として開発者用に個別的に採用されており、試用の話も耳にするが、思い切って実際に使おうとする例は非常に少ない」

Cooperの見るところ、この状況はオペレーティングシステムのせいではなく、人の本性によるものだという。「彼らはシステム管理の面ではLinuxに慣れつつある。しかし、10年以上もMicrosoft製品を相手にしてきたので、そちらの知識がかなり蓄積されており、そこから飛び出すのは彼らにとって大変なことなのだ。仮にWindowsからMacに切り替えるとしても同じことが起こるだろう」

Cooperの知る限り、OpenAdvantageは特異な存在だそうだ。「その理由はウェストミッドランズが英国におけるオープンソースのリーダーだからだと思いたい。嬉しいことに、この地域では多くの企業がオープンソースに率先して取り組んでいる」

OpenAdvantageは10台のサーバでデモ用ラボをホストしており、関心のある企業はそこでソフトウェアとシステムのセットアップを試し、CRMパッケージや、MamboやPloneといったコンテンツ管理ソフトウェアを稼動させることができる。「我々の手助けのやり方の1つとして、いろいろと試してみて、作業をできるだけ簡単にすることがある。我々はセットアップという退屈で骨の折れる仕事を肩代わりしてあげるのだ」とCooperは言う。

OpenAdvantageに続こうと思っている人たちにCooperはこう助言する。「それが本当に自分のやりたいことでなければならない」。Cooperは忍耐が大事だという。なぜなら、英国政府から資金を得るまでには長い時間がかかることもあるからだ。「我々がアイデアを提出したのは2001年末近くだったが、2003年3月まで許可が下りなかった。そして、実際に仕事を始められたのは2004年1月になってからだった。それだけ長いこと待たなければならないとしたら、それが本当に自分のやりたいことでなければならない。そうでなければ、とても辛抱できないだろう。たぶん他の国なら、もう少しスムーズに事が運ぶと思うのだが」

Cooperによると、自らの倫理的な存在理由よりも物事の経済的影響のほうを常に気にかけている政府機関を相手にするときは、自分の計画をうまく売り込むことが重要になる。「彼らはオープンソース製品のほうが良いソフトウェアだとか、作業を迅速化するといったことには無関心なのだから」

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