Eclipseの大発展――ダウンロードが1200万件を突破
しかも、Eclipseを設計し製作したEclipse Projectに対して大きな影響力を持っている。EclipseはWebサービスやその他のアプリケーションを構築するための汎用オープンソース・ツールキットである。Eclipse.orgでの無償ダウンロードは大いに利用されている。
「Eclipseを使用すれば、開発者は我々の統合されたポータル・ライクな環境でいろいろなベンダのプラグインによって優れたツールを利用できる」とVivek Sarkarは語る。彼はIBM Researchでプログラミング・テクノロジを担当する上級マネージャである。Sarkarの主な任務は、Eclipseツールキットに加えられるような目新しいツールを探し続けることだ。「我々の目標は、テクノロジ製作者によるソフトウェア・ツールの作成/統合/使用を容易にすることだ。そうすれば、開発者の時間と金を節約することにもなる」
建前はともかく、この話にはもっと興味をそそられるエピソードがある。最近、Eclipseのダウンロード件数が1,200万を突破したのだ。これは途方もない数字である。IBMがこのツールキットを世に送り出した2001年末以来、125か国以上の何十万という開発者がダウンロードしたのだ。
多くのツールキットと多くの包括的サポートがあるということだ。
典型的なダウンロード件数:30Kキット/日
Eclipseに関する事実と数字をもう少しあげておこう。
- Eclipse.orgには1日に平均30,000件ものダウンロード要求がある。最新バージョンのV2.1がリリースされてから48時間以内に、Eclipse.orgのサーバは1.2テラバイト以上のダウンロード要求を記録した。
- Eclipse.orgは40社以上のツール・ベンダから成る委員会によって運営されており、Borland、富士通、日立、IBM、Instantiations、Intel、Merant、Oracle、QNX、RedHat、Serena、SuSE、SAP、Sybase、Ericssonなどがメンバになっている。
- EclipseはJ2EEで構築され、最新のJDKの機能をサポートしている。現在、広範な開発テクノロジのプロバイダからの提供物によってサポートされている。たとえば、モデリング、コード生成、メタデータ管理、テスト、組み込みコンピューティング、エンタープライズ・ミドルウェア、コラボレーション、サービス、リサーチ、アプリケーション・システムなどのベンダの専門家たちが協力している。Eclipseプラグインを提供しているツール・ベンダは数十社あり、IBM、Instantiations、Merant, QNX、Bowstreet、Borland、MKS、SoftLanding、Telelogic、Dessault、SAP、Sybase、CommerceQuest、Macromedia、Versant、Catalyst、BrowserSoft、Flashline、ParaSoft、Systinet、Genuitec、ObjectEdt、VA Software、Canno、TeamStudioなどがある。
- BEA WebLogicとOracle用のプラグインをはじめ、600以上のオープンソース/フリーウェアのプラグイン・プロジェクトがある。
その他の情報
フリーでオープンソースだということ以外に、どんなご利益があるのか。
「あなたはEclipseを大いに利用できるし、Eclipseはユーザを非常に快適にするのに役立つ」とSarkarは語る。「EclipseのJFace UIには、いくつかの編集ビューと読み取り専用ビューとパースペクティブ・ビューを持つハイレベルのフレームワークがある。このインタフェースとすべてのプラグインの柔軟性が気に入っているというユーザの声がいつも寄せられている。このツールはいろいろな製品で使用できるし、Eclipseの真価はそこにあるのだ」
Eclipseは6週間ごとのマイルストーン・ポイントで更新される。フル・リリースは1年に一度行われる。
Sarkarが言うには、ユーザがLinuxやMacやWindows XPなどの、自分に最も合った環境に似せてセットアップできるという点で、Eclipseはカメレオンのようなものだそうだ。
Sarkarによれば、来年にリリースされる予定のEclipse 3.0には、いろいろな新しいコンポーネントと共に、リファクタリング――IDEに特徴的なもの――が追加されるという。「我々はジェネリック型も含めるつもりだ。これは非常に多くのアプリケーションの基礎になっているC++テンプレートに似たものだ。我々はこれをIDEの生産性を高める絶好の機会だと考えている」とSarkarは言った。
研究チームはJazzにも取り組んでいる。これはインスタント・メッセージング機能を持つ新しい共同作業フレームワークで、IDEのアドオン機能の1つである。その他の研究プロジェクトとしては先進的な検証コンポーネントがある。
アスペクト指向開発に対するもう1つの決議
Sarkarは世の趨勢がますますアスペクト指向開発へと動いていると見ている人たちのひとりだ。彼とEclipse.orgの運営機関はEclipseをその方向に向けようとしている。「EclipseのAspect Javaツールと拡張パッケージはユーザの生産性が大幅に向上することを意味するので、これらの機能はタイムリーだ」とSarkarは言う。
Eclipseは持続可能な視点を提供する数少ないIDEの1つだ、とSarkarは言っている。「プラグイン・アーキテクチャの核心には拡張点という考え方がある。たとえば、Javaと共にリファクタリングを使用するのは拡張点と考えられる」
Eclipseのその他のキー・コンポーネントとしては、Java単体テスト・ツールとグラフィカル・ライブラリ・ツールがある。
完璧ではない
無論、だれもがEclipseに惚れ込んでいるわけではない。
「当然、Eclipseにも限界はある」とJeff Andersは言う。彼はSun Microsystemsのマーケティング・マネージャだ。Andersが言うには「Eclipseで我々のピュアJava(J2EE)アプリケーションができるわけではない。Eclipseで作られるものはむしろハイブリッドだ。ピュアJavaを使わなければ、J2EEサーバにアプリケーションをシームレスに統合できるとは言えないだろう。そして”J2EE is everywhere”なのだ」
IBMがEclipse開発者たちに、このIDEをWebSphereやDB2などの自社製品用のアプリケーションに対して使わせたがっているのは間違いない。しかし、Eclipseの美点はユーザが特定の会社に従属しなくて済むことにあり、それは好ましいことなのだ。
我々はEclipseを使用することの得失について、ユーザからのコメントを歓迎している。また、どういったアプリケーションを構築しているのかも知りたい。