LinuxISO.org: 入門者にとっての頼もしい味方

editors@linux.comに寄せられる質問のうち、数の多さで一、二を争うのが、「Linuxはどこで入手できますか?」というものだ。これに対する回答として最も適切なのが LinuxISO.org だろう。もっとも、同サイトが今後も存続するとの前提付きだが。
LinuxISO.orgはLinuxのベテランユーザを対象としたサイトではないが、入門者にとっては好きなLinuxディストリビューションのISOイメージを探してダウンロードすることのできるありがたい場所だ。Linuxを初めてインストールするのであれば、マニュアル付きの商用ディストリビューション・パッケージを購入し、自分が住んでいる国・地域の LUG(Linux User Group) に参加して教えを請うのが最も確実で安全だろう。しかし、インターネットからフリーのLinuxをダウンロードして、誰の助けも借りずに「ひっそり」とインストールしようと考えるユーザも多いようだ。

過密するサーバ、遅い接続速度

LinuxISO.orgは、ダウンロードページのミラーサーバをローテーションさせているようだ。たとえば、[download Mandrake]リンクを読み込み直すと、そのたびにミラーサーバが変わっていることがわかる。これはよいアイデアだ。しかし、それでもこれらのミラーの多くには過大な負荷がかかっている。Mandrakeはもともと人気が高い上、最新版(9.1)がリリースされたばかりでアクセスが異常に集中しているのだ。いろいろなミラーサーバを試してみて比較的空いているサーバを探すことをお勧めする。「maximum number of connections reached」というメッセージが出たら、それは、「ごめん、今ちょっと忙しくて手が回らないから後にしてくれないかな?」という意味だ。

接続可能なサーバが見つかったとしても安心はできない。サーバ側のデータ転送速度が問題だ。よくて6〜7 kbpsということもある。これでは、いかに高速なケーブルモデムを使っていようがどうにもならない。Mandrake 9.1のデータ量はCD-ROM 3枚分(1枚当たり最大700 MB)に相当する。これだけの量のデータをすべてダウンロードするまでには、おそろしく時間がかかるはずだ。

私も実際に試してみた。ダウンロードページをリロードし、いろいろなサーバを当たったところ、Mandrake 9.1のISOイメージをまずまずの速度(平均32 kbps)で送信しているサーバが東ヨーロッパにあることがわかった。予想されるダウンロード所要時間はそれでも5時間半。これをもう2回繰り返さなければならない。さてさて、明日の朝までにMandrake 9.1のインストールが終わるかどうか…。

ダイヤルアップモデムを使うとなると、事態はさらに深刻だ。OpenOffice.orgの最新版、Mozilla、その他主要アプリケーションを含むLinuxディストリビューションを完全にダウンロードするには「数日」はかかるだろう。LUGの利点は、この作業を実際に行うのが誰か1人だけで済むということだ。あとはダウンロードしたISOイメージをCDに焼き、グループ内で配布すればよい。

私が東ヨーロッパのサーバを使ったのはたまたまだということをお断りしておく。この原稿を書いていたとき、米東部は昼を過ぎたばかりで米国内のすべてのサーバと、西ヨーロッパのほとんどのサーバが混雑していた。一方、東ヨーロッパとアジアのほとんどの地域は夜を迎えていて、サーバは比較的空いていた。理由はそれだけだ。一昔前なら、パケットが通過する経路を短くするため、地理的に近い場所にあるサーバを探していただろう。当時、ダウンロード速度を最も大きく左右する要因が経路の距離だったからだ。しかし、事情は変わりつつある。今はサーバ自体が主要因だ。隣町の混雑しているサーバを使うより、地球の裏にある空いているサーバを使った方が高いダウンロード速度が得られるだろう。

役に立つ情報が満載

LinuxISO.orgで最も目立つのは、ダウンロードサーバへのリンクや各ディストリビューションに関する説明だが、それ以外にも注目すべきところがある。たとえば、[Helpful Stuff]セクションのリンクからは、ISOイメージをCDに焼く方法(LinuxとWindowsの両方)や、Linuxとは何かといった基本的な情報を入手することができる。また気軽に利用できる ヘルプフォーラム も用意されている。つまり、LinuxISO.orgに立ち寄れば、Linuxについて興味はあるが何も知らないユーザでも、LinuxのISOイメージをダウンロードし、CDに焼くことができるようになる。インストール手順でわからないことがあったらフォーラムで答を探せばよい。まさに至れり尽くせりだ。

しかし、このサイトには1つ問題がある。それは、ユーザの協力なくしては存続し得ないということだ。

必要なものは何といっても運営資金

Linuxは「フリー」だが、サーバスペースや帯域幅はそうではない。Linuxの開発やコミュニティサイトの運営を支えているのは、みな自らの時間を割いてプロジェクトに参加している有志だ。しかし、家庭の事情や収入の変化などで彼らがプロジェクトから離れざるを得ないこともある。

LinuxISO.orgの[ State & History ]リンクからは、LinuxISO.orgの過去と今が書かれたページにアクセスすることができる。同サイトがISOを自前でホスティングすることを断念した理由や、サイトを存続させるために何が必要かがごちゃごちゃ説明されている。以下にその大要を紹介しよう。

大要: LinuxISO.orgは企業のサポートを得ていた時期もあるが、現在は完全にボランティア(そのほとんどは個人)によって運営されている。サイトの運営にはユーザからの資金協力が不可欠だ。メインページに2つの大きな「お願いボタン」(管理人のLance自身がそう呼んでいる)が置かれているのもそのためだ。帯域幅の維持に必要な資金を調達できるかどうかは、すなわち、Lanceという人物が信頼されるかどうかということだろう。ちなみに現状を維持するだけでも毎月330ドルが必要だ。サイトの存亡は 賛同者から寄付 を得ることができるかどうか、この一点にかかっている。

Linuxコミュニティサイトの運営に必要なリソースを提供してくれる企業はここ数年で激減している。新たにボランティアサイトが立ち上げられても、その多くは、開設者が飽きて他のプロジェクトに鞍替えしたとたんに姿を消す運命にある。よく利用するLinuxサイト、すなわち、Linuxユーザ(入門者、ベテランユーザを問わない)を支援すべくベストを尽くす献身的な人々によって運営されている有用なLinuxリソースサイト(LinuxIso.orgもその1つ)に対して、自分の時間あるいは資金を提供することを検討してみるのも悪くはないと思うが、いかがだろうか(すでに実践されている読者も多いとは思うが)。