最近、オープンソース・ライセンスが多すぎるので減らそうという動きが活発化している(たとえばCNETの記事)。一部で活発化しているように見えるというのが正確かもしれない(そう、OSIは結局のところ「一部」にすぎない。それが先日の講演で話したことの骨子の一つ)。少なくとも筆者がホームグラウンドとするDebian界隈ではあまり盛り上がっていない話だ。そして、二つの点から筆者はこういった動きに好意的ではない。
まず第一の理由は、本質的な問題はライセンス間で矛盾する(incompatible)かどうかであって、数の多寡ではないということだ。いかに数が多くあろうと、矛盾しなければ実務的には問題ない。それでもなおOSIが何かしたいなら、どのライセンスとどのライセンスがどういう理由で矛盾するというような表でも作れば良いのであって(FSFはそういうことをやっている)、いったんOSD準拠だと言っておいてそれを強引に減らしていくのはおかしな話である。
第二に、OSIがやるべきことはライセンスが準拠すべき基準を示すことであって、具体的にどうライセンスを書くかを強制することではない。もちろん良い慣行として「既存のライセンスを使ったほうが便利ですよ」と提案して回るのは大いに結構だが、それをOSD自体に盛り込むのには抵抗を覚える。それに、特定ライセンスとは矛盾させる、ということも含めてライセンスをいかようにも書けるというあたりの柔軟性が実はエゴと実利をバランスさせたオープンソースの強みであって、オープンソースにおけるライセンシング戦略立案のおもしろみもそこにある。だいたい、世の中がGPLなりBSDLなり一色になればビジネス的には便利なのかもしれないが、現在多様な主体がお互いに影響を与えあっているこの競争的な環境は大きくそこなわれてしまうだろう。
というようなことをぼんやり考えた。今あまりこのあたりの話を深く考える余裕がないのだが、そのうちまとめて記事にしようかとも考えている。