Richard M. Stallman氏がFSFを退任

 フリーソフトウェアを支援する非営利団体Free Software Foundation(FSF)は9月16日、創始者兼プレジデントのRichard M. Stallman氏の退任を発表した。

 Free Software Foundation(FSF)によると、Stallman氏は同団体のプレジデント、そして取締役会を退任したという。Stallman氏はEmacs、GCCなどの開発者であり、フリーソフトウェア活動で知られる。1985年にFSFを設立、フリーソフトウェア発展のための運動を続けてきた。

 突然とも言えるStallman氏の退任は、児童売春の有罪判決を受けながら拘留中に死去したJeffrey Epstein氏に関連する児童売春事件について、Stallman氏がメールで記した見解が論議を呼んだことが引き金にある。

 Epstein氏による児童売春の被害者とされる女性Virginia Giuffre氏は、氏が17歳の未成年だった2001年にEpstein氏に強要され、AIを専門とするマサチューセッツ工科大学(MIT)のMarvin Minsky教授(2016年に88歳で死去)と性的な関係を持ったと主張している。これに対し、Stallman氏はMinsky氏を擁護する文脈で、「Entirely Willing(自発的に)」Giuffre氏はこうした行為を行なったのではないか、との見解を示した。

 このメールはMIT Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory(CSAIL)でやり取りされたもので、9月13日に友人からこのメールを取得したというMIT卒業生が自身のMediumページにて公開した。Stallman氏のメールは、MITの学生が”#They Knew”としてMITで展開した運動のFacebookイベントページに対する発言という。MITの学生はMITがEpsteinの寄付を受け取っていたことに対して抗議活動を続けており、これによりMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏などが辞任に追い込まれている。

 リークされたメールでStallman氏は、「様々な状況を予想できるが、最もらしい状況は彼女(Giuffre氏)は完全に喜んで自分自身を(Minsky氏に)差し出したと考えられる」「そうであれば、告発において、『性的暴行』という用語を用いることは完全に間違っている」などと書いている。

 Stallman氏は14日、自身のWebサイトで、「(メーリングリストでの発言についての)メディアの報道は、自分の発言の趣旨を完全に間違えている」と記している。そして、「Epsteinを擁護しているという見出しがついているが、真実とかけ離れている。私は彼を『連続レイプ犯罪者』と見ている。しかし、多くの人は私が彼を擁護したと思っており、他の不正確な主張も信じている」とし、「この誤解を防ぐことができれば良いが」と結んでいる。

 Stallman氏は16日には、MITのCSAILでの職を、「一連の誤解」によりMITのプレッシャーを受けたことから辞任すると記している。これを受けてFSFは、Stallman氏の退任発表とともに、後任探しを始めるとしている。

Free Software Foundation(FSF)
https://www.fsf.org/

Richard Stallman氏のWebサイト
https://www.stallman.org/