SAP、オンデマンドERPスイート「Business ByDesign」を正式発表――料金はユーザー当たり月額149ドルから

 ドイツのSAPは9月19日、中堅企業向けオンデマンドERPスイート「SAP Business ByDesign」(開発コード名:A1S)を正式発表した。米国とドイツを皮切りに、英国、フランス、中国での本格提供を年内に開始するという。

 米国でのサービス料金は、ユーザー1人当たり月額149ドル(25ユーザー)からで、料金には、ソフトウェア、インフラストラクチャ、サービス、サポートも含まれる。また、経費報告書や購買確認書などに記入するだけの目的で利用する限定ユーザー向けの簡易版も用意され、5人を1グループとして、グループ当たり月額54ドルで利用できる。

 SAPのCEO、ヘニング・カガーマン氏は9月19日朝(米国時間)、ニューヨークのイベントで同スイートを初めて公開し、「私がこれまで発表した中で最も重要な製品だ」と強調した。

 SAPは、大企業向けのソフトウェア・プロバイダーというイメージからの脱却を図るため、Web上でコンシューマーを対象としたマーケティング・キャンペーンを立ち上げるなど、同サービスの展開に向けて2008年末までに3億~4億ユーロ(約4億~5.5億ドル)を投資するとしている。

 カガーマン氏によると、SAP Business ByDesignは、従業員100~500人の企業向けに、ERPの全機能を安価で使いやすくしたホスティング型サービスで、製造、購買、会計、セールス/マーケティング、人事などの機能をカバーする。同社の「Netweaver」ミドルウェアとSOA設計をベースにゼロから構築されたという。

 すでに、小規模な航空機メーカー、芳香剤メーカー、ITコンサルティング会社、そして製薬会社に梱包/配送サービスを提供する会社など、ドイツと米国の20の顧客企業で試験運用が行われている。

 今回の発表では、実際に一般企業がいつから同サービスを契約できるかについては明らかにされず、提供時期については次のようなあいまいな言いまわしで説明されている。

 「現在、米国とドイツでパイロット・カスタマーと試験運用作業を続けている。英国、フランス、中国の顧客との間でソリューションの検証を行い、今年中をめどにこれらの市場での大きな需要を開拓していく」

 来年には、オーストラリアとインド(アジア太平洋地域)、イタリア、オランダ、北欧、スペイン(欧州)、カナダとメキシコ(アメリカ地域)、南アフリカにサービスを拡大するとしており、2009年にさらなる拡大を目指すという。

 SAPでは、スプレッドシートなどのオフィス・ツールを使用しているが、価格と操作の難しさからERPに手を出せずにいるユーザーを中心とした新たな市場を切り開きたい考えだ。

 同社WebサイトのFAQによると、欧州の顧客向けのサービスはユーザー当たり月額133ユーロ(184ドル)と、比較的高めの料金設定になっている。

 SAPは、Business ByDesignを従業員100人未満の企業を対象とした「SAP Business One」と従業員2,500人未満の中堅企業を対象とした「SAP All in One」の中間的な製品と位置づけている。

 ちなみに、既存の顧客がすでに導入済みのソフトウェアからBusiness ByDesignに移行することはできない。「(Business ByDesignは)他のSAPソリューションを置き換えることを目的としたものではない」というのがその理由だ。

 SAPのFAQによると、サブスクリプションの最小単位は25ユーザーだが、契約数の上限は設定されていないという。そのため、500人以上の中堅企業でも契約できる可能性がある。

(ジェームズ・ニコライ/IDG News Serviceパリ支局)

SAP(ドイツ)
http://www.sap.com/

提供:Computerworld.jp