AppleとNBC、iTunesでのテレビ番組販売契約を解消――価格面で折り合いつかず――ビデオ再販市場の独占をねらうAppleには痛手

 米国Appleは8月31日、iTunes Storesとの契約を更新しないとのNBCユニバーサルの決定を受け、来シーズンはNBCのテレビ番組をiTunesで販売しないと発表した。

 Appleの説明によると、NBCは各エピソードの卸売り価格について、iTunesでの現行価格(すべて1ドル99セント)の大幅値上げにつながる引き上げを望んだという。これには応じられなかったとAppleは述べている。

 iTunesオンライン・ストアでは、ABC、CBS、ニューズのFOX、The CWに加え、CATVネットワーク50社の番組が前記の均一料金で購入できる。

 Forrester Researchのアナリスト、ジェームズ・マックイビー氏は、NBCの撤退はiTunesビデオ・ストアがミュージック・ストアに比べていかに低調かを表していると言う。「今回の出来事により、iTunesのビデオ部門がいかに微々たるもので、影響力がないかが浮き彫りになった」

 iTunesはオンライン・ビデオ再販市場で独占的な地位を築いているが、市場自体はまだ小さい。「このセグメントは発展の初期段階にあり、オンライン・ミュージック産業と同様にビデオ市場の支配を目指すAppleに対し、多くのメディア企業は抵抗している」とマックイビー氏は説明する。

 Forresterによると、今年のオンライン・ビデオ再販業界の売上高は約3億ドルで、iTunesでの売上げがその大半を占める見込みだ。NBCは今年、iTunesでのビデオ販売で約6,000万ドルの収益を上げると、Forresterでは見ている。

 「Forresterはこの売上げを失うことになるが、ビデオ業界を牛耳るというAppleの野望を打ち砕くのに有効であれば、さほど大きな損失とはならないだろう」(マックイビー氏)

 NBCは、番組を無料で視聴できるサービスを自社サイトで提供しており、そのオンライン広告枠の来シーズン分は売約済みだという。同サービスの収益はわずか数年間で数億ドルに成長すると見込まれており、iTunesよりもうまみがあると言えそうだ。

 一方、Appleは「Apple TV」や「iPhone」、「iPod」などでビデオ表示機能を提供しており、それゆえNBCとの亀裂は大きな痛手というのが、マックイビー氏の見方だ。

 他の大手コンテンツ・プロバイダーは、NBCの決定を歓迎しつつも、これに追随することはないとマックイビー氏は見ている。ただし各社は、これを機に、変動価格を認めるよう、あらためてAppleに迫ると思われる。同氏によると、Appleは従来からすべてのビデオに均一料金を要求してきたが、コンテンツ企業の側は、独占番組や最終回に高い料金を設定できるような柔軟な料金体系を望んでいるという。

(ナンシー・ゴーリング/IDG News Service シアトル支局)

米国Apple
http://www.apple.com/
米国NBCユニバーサル
http://www.nbcuni.com/

提供:Computerworld.jp