LISA '06コンファレンスレポート:Cory Doctorow氏の基調講演など
Doctorow氏の基調講演に先立ち、 SAGE Outstanding Achievement 賞の発表があり、 Tobias Oetiker氏とDave Rand氏の両氏が MRTG と RRDTool の卓越した業績によって受賞した。 これは特にシステム管理者(LISAコンファレンス参加者)にとっては興味深いことだろう。
その授賞式が済むと、いよいよDoctorow氏が演壇に立った。 Doctorow氏の講演の内容は多岐に渡り、 インターネットについて、 私たちのプライバシーがなくなろうとしていることについて、 私たちの権利が蝕まれていることについて、 そしてそのことについて私たちができることについて、 などが取り上げられた。 Doctorow氏は非常に説得力のある話し手だ。 なおLISA ’06の講演で取り上げられた話題の大部分は、 Doctorow氏のToorCon 8での基調講演のビデオでも見ることができる。
その後、 聴衆が講演の内容について理解を深めることができるようにと 質疑応答のセッションが用意されていた。 質疑応答のセッションはとても有意義で、 実際、 講演で示された懸念に対処するために (FSF(Free Software Foundation)や EFF といった団体に単純に送金するということ以外にも) コミュニティとしてできることについて 簡単で役に立つ情報を得ることができた。
例えばEFFでは議会が法案にデジタル著作権の観点から不適切な条項を 土壇場の最終段階になって少しだけ付け加えようとした場合などに、 そのことを登録者へ知らせるメーリングリストを運営している。 Doctorow氏によるとこのメーリングリストは、 そのような法律の制定を阻止するために 即座に電話キャンペーンを展開するのに役立ってきたとのことだ。 またEFFでは、そのような電話キャンペーンの際に 具体的に電話で伝えるべき内容の案を例示した原稿も提供している。
テクニカルセッション
基調講演の後は、テクニカルセッションへ進んだ。 テクニカルセッションでは、 およそ知りたいと思うようなことは何もかもと、 それにさらにプラスアルファしたくらいの内容がカバーされていた。 電子メールに関する一連の論文が発表され、 特権メール、 電子メールのセキュリティの現状、 分散型2段階ウェブベーススパム攻撃から収集された犯罪捜査用データに関する非常に興味深い考察、 などについて詳細に議論されていた。 私の知り合いのメールサーバ管理者たちも 今回のLISAに多数参加していたが、 これらのセッションに参加しないような人は誰一人としていなかった。 また、セッションが終わると、 私が話すことのできたすべての管理者が感銘を受けて部屋を出て行った。
同じく午前中のセッションで、Elizabeth Zwicky氏による非常に愉快な講演があった。 テーマは、教えるべき相手が新米管理者やエンドユーザの場合に (彼らの抱えるトラブルの解消を手助けするために) どのようにアドバイスしたらいいのかについてだ。 そのような場合に(受講者である)システム管理者が (教える相手のレベルに合わせて無理がないように) 何をどのように教えたらいいのかということを、 教育の世界の考え方や統計を引き合いに出しながら説明し、 システム運営/システム管理の哲学を語っているところがユニークだった。
Zwicky氏は、いくつかの興味深い考え方に触れた。 例えばZwicky氏によると、 人に何かを教える上でもっとも重要なのはただ一点、 教えられる側に「自分にも実際に理解できそうだ」という自信を持たせることだという。 この考え方については、 裏付けとなる様々な研究結果が紹介され、 議論は非常に説得力があった。
昼食後は、Google社のTom Limoncelli氏による、 Google社の内部の様子や、Google社で過ごした最初の1年で学んだことについての講演があった。 この講演では、 サイトの信頼性の問題、 フェイルオーバー、 負荷分散、 問題点回避のために取るべき対処法の選択、 Google社のサービス分散方法、 優れたユーザ体験を保証するためにGoogle社が行なったいくつかの決断、 などの話題が主に取り上げられた。
Limoncelli氏は見事な話し手だ。 とてもフレンドリーで、システム管理者が普段使うような言い回しで説明する。 そのためこの講演が「第二の基調講演」とされていたことが 分かるような気がした。 実際この講演は会場で最も大きい部屋で行なわれたのにも関わらず、 空席はほとんど見当たらなかった。
講演の後の質疑応答セッションは講演ほどには有益でなかった。 というのも参加者が終始Google社の内部的なことを知りたがったために、 Google社の方針上Limoncelli氏が答えられないような質問を幾度となくしていたためだ。 よくあるように講演の最後にLimoncelli氏が 「講演後に個人的な質問も受け付けます」と呼び掛けると、 講演後はこれもまたよくあるように、 その呼び掛けに応じた人だかりでLimoncelli氏の姿がほとんど見えなくなっていた。
木曜日はいまひとつ
水曜日にわくわくする講演があったのに引き換えると、 木曜日はややつまらない感じがした。 複数の講演に出席し多くの参加者たちとも話したが、 木曜日のやま場は特に見い出せなかった。 残念ながら私が話した出席者もみな、 木曜日の講演はどれもどこか欠けているという感想で一致していた。
「 監視についてあなたが知っていることはすべて間違いだ」 という講演は、実際に間違いであるということを説明しきれていなかった。 また「アイデンティティー2.0」という講演では、 分かったことよりも分からなくなってしまったことの方が多かった。 また「品質保証とシステム管理」という講演は、 やや興味深いという程度に留まった。
木曜日の講演の後には、LISAレセプションパーティなどの最終日前夜のイベントが行なわれた。 LISAレセプションパーティはカーニバルをテーマとしたイベントで、 立食形式の夕食や、カーニバルのゲームや、 一等がモンティー・パイソンのDVDシリーズ一式であるくじ引きなどがあった。 LISAレセプションパーティの後は Google主催のBoFセッションがあり、 そこではさらに多くのビールやデザートやコーヒーが出され、 一等が今度はMacBook Proであるくじ引きもあった。 GoogleのBoFは盛況で、実際、私が話した参加者の中で この木曜夜のGoogleのBoFに参加しなかった人は一人もいなかった。
LISA ’06は今日が最終日だ。 まだ少しテクニカルセッションが残っていて、午後4時に閉会セッションの予定だ。 もし今回LISA ’06に出席できなかったのなら、 あるいは出席したがまだまだ物足りないのなら、 来年のLISAコンファレンスの参加登録の締切にはまだまだ間に合う。 次回の「LISA ’07」は米テキサス州ダラスで11月11日から16日まで開催される予定だ。