LISA '06参加レポート:滑り出しは順調
コンファレンスの主催者からは、ペンとノートが配られた他、コーヒーとお茶菓子も振る舞われている。また参加者が各自のマシンで出席予定のセッションを追跡できるようiCalの登録サービスも用意されているのだが、必要なリンクを見つけ出すのに少々手こずらされてしまった。結局、会場から呼び出す場合はical.usenix.orgにアクセスすればよかったのだが、この種の情報としては開催時刻だけでなくその場所も付記しておく方が親切だと言えるだろう。
翌月曜日の前半に私が参加したのは、『Essential System Administration』などを著したÆleen Frisch氏によるトレーニングセッション「Beyond Shell Scripts – 21st Century Automation」(シェルスクリプトを超えて――21世紀の自動システム管理)であった。講演の進行は非常にスムースで、その大部分はCfengineという、独自の言語を用いて大規模ネットワークの管理と設定作業をサポートするツールに関する内容であった。
Frisch氏のインストラクションは、敷居の高さを感じて過去にCfengineを使用したことのない未経験者に対する演習形式で進められた。こうした演習の終了後に行われたのが、同氏が知っている以外に有用なソリューションがあれば紹介してもらいたいという趣旨で開かれた、上級ユーザからのソリューション紹介コーナーである。私自身も“Cfengine仲間”ではなかった1人だが、印刷媒体のドキュメントを読みあさるだけでは習得にかなりの時間を要するであろう様々な知識を学ぶことができた。他の参加者とも意見交換をしてみたが、Frisch氏の講演でCfengineを使う自信が付いたという人間がかなりの数いたように思われる。
同日の後半に私が参加したセッションは、Strata Rose Chalup氏による「Project Troubleshooting」(プロジェクトのトラブルシューティング)であった。聴いていて心地よい講演の内容は、プロジェクト管理とコンサルタント業務に長年携わってきた同氏ならではのものと言えるだろう。寄せられた質問は1つ残らず回答されており、この演者に答えられない質問は無いのではないかと感じられるほどであった。
Chalup氏がいかに真摯な演者であったかは、実際のプロジェクトで難題を抱えていた聴衆の1人に対し、全身全霊で解決のヒントを見つけようと奮闘していたことからも伺えるだろう。
これらのプレゼンテーション以外にも何か優れた講演がなかったかを他の参加者たちに尋ねたところ、Lee Damon氏による「Issues in UNIX Infrastructure Design」(UNIXインフラストラクチャ設計に関する問題)では、シングル・サインオン・セキュリティの運用法や“マスタデータベース”の維持など、現代のインフラストラクチャサービス管理者が抱えている様々な課題を取り上げていたそうである。Damon氏は非常に多数のトピックを扱っていたので、ここで簡潔に要約するのは無理があるが、同氏によるプレゼンテーションの内容、そこで用いられた素材、ユーザへのフィードバックなど、いずれも一級品であったことだけは伝えておこう。
その他に私が顔を出したのは、Gerald Carter氏による「Ethereal and the Art of Debugging Networks」(Etherealおよびネットワークのデバッグ技術)というプレゼンテーションであった。Carter氏の講演は、システム管理者であればベテランか新米かを問わず聴き入ってしまうであろう有益な内容であった。より具体的には、ネットワークのデバッグをする際の一般的な注意点(例えば、システムログには誤った情報が混入する場合があるので、それゆえネットワーク監査が重要であることなど)や、Etherealをメインツールとしてネットワーク関連のトラブルシューティングをする際の実践的アドバイスなどである。
なおこれは、先のプレゼンテーションを熱心に聴き入っていた聴衆の1人から後になって聞かされたのだが、Etherealはtcpdumpからの出力の解析に対応しているとのことである。この種の情報は古株の管理者ほど気づかないと思われるが、これを知っているだけでEtherealというツールの有用性がかなり違ってくるはずだ。Carter氏は単に講演上手というだけでなく、すべての質問に懇切丁寧に答え、誰からの問い合わせについても気軽に相談に乗っていた。
LISA ’06の2日目
火曜日のメインイベントは言うまでもなくDavid Blank-Edelman氏による講演「Over the Edge System Administration」(常識を超越したシステム管理)であったが、スケジュール的には午前と午後のセッションという2つに分割されていた。この講演には予想以上の参加者が詰めかけ、午前のセッションの終了時、主催者により追加のテーブルとイスが運び込まれていたほどである。
Blank-Edelman氏のプレゼンテーションで触れられていたのは、システム管理上の問題を解決するための創造的な手法の見つけ方および、従来型ツールの運用法の見直しによる問題解決というものであった。Blank-Edelman氏はユーモアに溢れると同時にエネルギッシュな演者であり、会場に集まった聴衆に対しても積極的な参加を呼びかけていた。こうした配慮のおかげで同講演は、1つのソリューションが紹介されると、その変形版とでも言うべきソリューションが会場席側からも提示されるというパターンで進行し、大部分のケースにおいて非常に有用な追加意見を聞けるという余禄にあずかることができたのである。聴いていて楽しい内容の講演であったが、各種のツールを使用する際の注意点および、実験的な手法を用いる場合、新奇なソリューション構築法を模索する時のポイントを繰り返し強調することも忘れられてはいなかった。
聴衆の中には、この火曜日が参加初日という人も多数存在していた。そのため午後も遅くになると、ホテル中の共有スペースやラップトップルーム、あるいはビジネスセンタや登録窓口はもとより、バーやレストランの類までコンファレンスの参加者で溢れかえるという状況になっていた。その対策用に仮想的な集合場所として使われているのが専用のIRCチャンネル(irc.openirc.netの#lisa06)であり、ここでは参加者のチェックインや講演終了後のスケジュール確認をすることができる。補足的な情報も充実しており、近在のバーやレストランや書店を始め、地元の動物園なども日替わりで紹介されているくらいだ。このIRCチャンネルは、個々のプレゼンテーション会場における進行状況を参加者に通知するためのツールとしても使われている。コンファレンスで現在何が進行しているかは、個々の現場にいなくても、ほとんどの参加者が常に把握できるという訳だ。
当日午後に開催された「Birds of a Feather(BoF)」(同類の集まり)セッション群もつつがなく進行し、システム管理者向けにアレンジされたその内容は、ジョーク用bashスクリプトの競技大会もあれば、重厚極まりないFedora Directory Serverミーティングもあるという、非常に多様な顔ぶれであった。
BoFセッションは参加者の交流する場として有効に機能していたが、各会場は1時間ごとの交代スケジュールが組まれていたので、個々のセッション終了後は手近なホールが二次会場として機能していた。どうやら、ホールでの立ち話に疲れるとホテルのラウンジに席を移して会話を続ける、というのがお決まりのパターンのようである。