IBMがファイルネットを16億ドルで買収──大再編が進むECM市場

 米IBMは8月10日、ファイルネットを16億ドルで買収すると発表した。これは、システム・インフラ企業によるEMC(Enterprise Contents Management)ソフトウェア市場への参入という大きな動きが進んでいることを浮き彫りにしている。

 フォレスターのシニア・アナリスト、バリー・マーフィ氏は、「インフラ・ベンダーがコンテンツ管理分野のすべてを押さえようとしており、専業ベンダーの存在感が低下している」とし、そうした勢力の変化が今まさに進んでいると強調する。

 また、IDCのコンテンツ技術/デジタル・メディア担当プログラム・ディレクター、メリッサ・ウェブスター氏は、ファイルネットは苦境に陥っていたと見ている。

 ECM専業ベンダーの中でも、オープンテキストなどは汎用的なECM製品の提供から脱却し、自社製品をオラクルやSAPのようなアプリケーション・ベンダーの製品と緊密に連携させている。ファイルネットは、こうした専業他社とは異なり、一貫して自らを汎用的なプラットフォームのベンダーと位置づけていた。

 しかし、オラクルやマイクロソフトのようなシステム・インフラ企業が、基本的なコンテンツ管理機能の提供に乗り出す計画を相次いで発表していた。

 IBMのファイルネット買収が成功すれば、IBMは売上げベースでECMソフトウェア・ベンダーとしてトップの座を取り戻すことになるとウェブスター氏は語る。IDCの調査によると、現在の売上げトップは昨年キャプティバを買収したEMCで、次いでファイルネットとIBMの売上げが拮抗しており、オープンテキストが4位で続いている。

 フォレスターのマーフィ氏によると、IBMとファイルネットの製品はかなり重複しており、特に顕著なのがドキュメント・イメージング、電子フォーム、記録管理、電子メール・アーカイビングといった分野であるという。

 「短期的には、買収は顧客にとって非常にプラスに働く可能性がある。IBMが提供する選択肢がより充実するからだ。一方、IBMは今後、慎重に連携・統合を進め、顧客に特定製品の採用を強いることがないようにしなければならない」(マーフィ氏)

 IBMの情報管理部門のゼネラル・マネジャー、アンブシュ・ゴヤール氏は、IBMとファイルネットの両製品ラインの「維持と強化」にIBMは注力すると強調した。買収完了は第4四半期になる見通しで、そのタイミングでより詳細な統合戦略を発表できるとしている。

 ゴヤール氏は、今回の買収は事業の拡大が目的であり、ファイルネットの1,800人の従業員の大部分はIBMに加わる見込みだと語った。

 だが、ファイルネットを買収しても、IBMの製品ラインに強力なWebコンテンツ管理ソフトウェアが欠けていることに変わりはないと、マーフィ氏は指摘する。そのため、IBMはこの分野を得意とするインターウォーブンやビネットといったECMベンダーに接近する可能性もある。

 ほかのシステム・ベンダー、特にコンピュータ・アソシエイツ(CA)やSAP、あるいはヒューレット・パッカード(HP)がECM分野でどのような動きに出るかも興味深いところだ。マーフィ氏は、CAが最近ソフトウェア会社のMDYを買収したのは、セキュリティ、ストレージ、システムの管理を手がけるCAの「ECMへの再挑戦」だとしている。

 また、オープンテキストは6月にオラクルとの提携を発表したが、マーフィ氏は、これは両社が将来、より深い関係になることを示唆していると見る。オープンテキストは先週、同業のハミングバードに対し、シンフォニー・テクノロジーの4億6,500万ドルの買収提案を上回る4億8,900万ドルの対抗提案を提示している。

 マーフィ氏は、1年後にはコンテンツ管理ソフトウェアの80%が、EMC、IBM、マイクロソフト、オラクルといったインフラ・ベンダーのものになっても驚きではないと見る。

 これに対し、IDCのウェブスター氏は、市場再編がそこまで速く進むことはないだろうと予測している。

(チャイナ・マーテンス/IDG News Service ボストン支局)

米IBM
http://www.ibm.com/
米ファイルネット
http://www.filenet.com/

提供:Computerworld.jp