予想以上の成果を収めたKDE 4 Multimedia Meeting

KDEの主要なマルチメディア・コンポーネントおよびマーケティングに関与しているメンバたちが、5月26日~28日の日程で、KDE 4 Multimedia Meeting(K4M、以前のK3M)という会合をオランダのAchtmaalで開いた。参加者たちは、プロジェクトの目標について話し合い、KDE 4のマルチメディア・コンポーネントに有望な改良をもたらす、かなりの量のコーディングを行った。

K4Mには、4つの大陸の計15か国から参加者が集まった。オープンソース・ソフトウェアは、何千キロも離れた個人開発者たちが電子メールやIRCでやり取りしながら開発を進めることが多いが、こうした非常に有意義な会合を集中的に開くことは、その旅費や宿泊費に見合うだけのものがあろう。会合の取りまとめ役であるAdriaan de Groot氏は、ブログでこう述べている。「ここに参加することによって開発にどれだけのプラスがもたらされるか、数値化して表すのは難しいですが、これまでの会合はいずれもすばらしいものでした」。

期間中のAchtmaalはあいにくの雨模様だったため、大半の参加者は、会場のAnnahoeveホテル内にとどまっていた。だが、Sebastian Kügler氏のフォト・ギャラリーを見ると、非常に楽しそうな参加者たちの様子がうかがえる。主催者の計らいにより、プログラマたちの食事や部屋はきちんと準備されていたため、プログラマたちは、それらに気をとられることなく集中することができた。KDEのニュース・サイトであるThe Dotには、初日2日目の会合のレポートが掲載されている。

会合は、amaroKの開発者であるMax Howell氏のプレゼンテーションから始まった。amaroK 1.4の作業は現在も継続されているが、今回の話題の中心となったのは、KDE 4と並んでのリリースが計画されているamaroK 2だ。2.0に向けた最初のステップである、Qt 4へのコードの移植は、この会合の最中に始められた。コーディングを進める中で、開発チームは、Qt 4の高度な機能を使用してamaroKのインタフェースを拡張することを計画している。開発者たちは、バージョン2に向けて、Windowsのサポートの追加や、last.fmとの統合の向上を望んでいる。ユーザたちが普段よく聴く曲をサイトに送信すると、その好みに合いそうな曲のリストが返ってくるという機能は、既に実現されている。ユーザたちは、last.fmのその他の機能も、まもなく利用できるようになるかもしれない。提案された曲で自分のコレクションに入っていないものをストリーミング再生するなどだ。また、last.fmには、ユーザの好みに合ったプレイリストを自動作成する機能や、ファイルに欠けているタグを自動的に補完する機能もある。

参加者たちは、amaroKの次期メジャー バージョンについての議論に熱心だったが、現在のバージョン(1.4.1)も忘れていたわけではない。起動時間の大幅な改善と、コンテキスト・ブラウザの同様の速度向上が、会合の最中にリポジトリに登録された。ユーザたちは、次のマイナー・リリースの後で、その恩恵を受けられることになる。曲の位置を示すバーの色に現在の曲の「ムード」が反映されるというmoodbarは、既にメンテナンスの対象外となっていたため、削除された。また、新しいカーネル(2.6.13以降)のinotifyシグナルによってコレクションが更新される機能が追加された。これにより、ユーザのコレクションの変更がamaroKの曲目データベースに即座に反映される。ディストリビューション・パッケージのメンテナンス担当者に対する、amaroKについての通知は、roKymotionによってセットアップされた新しいメーリングリストで行われる。これにより、ディストリビューションでamaroKパッケージとMySQLとの依存関係が不適切に設定されるなどの問題は解消に向かうはずだ。

現在のバージョンのユーザ・インタフェースに加えられた変更には、スクリプト・マネージャでのスクリプトのカテゴリ別の表示や、コンテキスト・ブラウザの位置についての実験などがある。ユーザはコンテキスト・ブラウザを、プレイリストの作成やメディア・デバイスの操作に使用する、他のブラウザと並んだ現在の位置から、ウィンドウ上部のプレイリストの上に移動できる。これによりユーザは、他のブラウザから切り替えなくても、歌詞やWikipediaの情報などを参照できるようになる。水平の配置による幅の余裕で、Wikipediaのページやその他のコンテキスト情報の参照も簡単になる。amaroK 2.0に向けて準備されている変更の中には、1.4.1にも組み込まれるものが少なからず出てくるかもしれない。

PhononやKIOなども登場

Howell氏の話の後は、Phononの開発リーダーであるMatthias Kretz氏によるプレゼンテーションがあった。Kretz氏は、Phononの概要を説明した。Phononとは、最近明らかにされたKDE 4向けのマルチメディアAPIである。今回の会合の中では、このプロジェクトに大きな改良が加えられた。その多くは、amaroKの開発者たちが必要性を表明した要望を満たすものだった。

KHTMLの開発者であるAllan Sandfeld Jensen氏は、KDEアプリケーションのネットワーク・プロトコル処理を担当するKIOに大幅な改良を加えた。その作業の結果、メディアの再生中にプログラムでシークを行うことが可能となった。たとえば、HTTPを使用して映像を再生しているユーザが、ファイルの途中にスキップできるようになり、最初から最後まで全部見る必要がなくなる。

KDEのマルチメディア・アプリケーションのうち、amaroK以外のものは、今回の会合であまり取り上げられなかったため、Kaffeine、Juk、Noatunなどのプロジェクトにはさしたる進展はなかった。だが、PhononやKIOなど、KDEの基盤となる技術に加えられた改良は、すべてのKDEアプリケーションにその恩恵が及ぶことになろう。

今回の会合は、バージョン4の開発プロセスを促進することを目的とした、KDEの一連のサブプロジェクトの会合の1つで、KDEをサポートしているNovellTrolltechなどがスポンサーとなっている。KDEのマルチメディア・チーム(主にamaroKPhononの開発者)、KDEのマーケティング・チーム、およびOpen Usabilityから、約20名が参加していた。この会合より前には、PIM(Personal Information Management)のチームが、同じくAchtmaalで会合を開いた。他の主要なKDEサブプロジェクトからも、同様の会合が発表される予定である。

一連のサブプロジェクトの会合や、AppealやPlasmaなどの取り組みは、いずれもプロフェッショナルに実施されたマーケティング戦略であり、KDEの成功に不可欠な領域に開発者のマンパワーを集中させるための手法である。KDEは、開発者や会合のスポンサーとなっている支援者からのサポートを活用することによって、資金面や組織面のメリットの多くを活かしている。プロプライエタリな商用ソフトウェア企業が以前から有していたのと同様のメリットである。Kügler氏はWebサイトで次のように述べている。「全体としては、今回の会合は我々の予想をはるかに上回るものでした。会合のネットワーク効果は、計測できるものではありませんが、おそらくは、実際に作成されたコードよりも重要だと思います」。

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