Stallman氏の理念に準じたサイン販売

スポーツ選手やミュージシャンなどの有名人達がサインを有料販売するというのは、長年行われてきた行為だが、Richard Stallman氏が同じ試みをするなど、誰が予想できただろうか?

7th Annual International Free Software Forumに出席するべくブラジルのポルトアレグレをStallman氏が訪問した際の出来事を伝えるポルトガル語の記事が、「Han Solo, Jr.」と名乗る方から送られてきたのは今週初めのことであった。

ミスター「Solo」氏のメールにはこう書かれていた。

これはジョークのつもりなのか、それとも抗議の意思表明なのでしょうか? ポルトアレグレ(ブラジル)で先週開催された7th FISL – Internacional Free Software Forumに集ったハッカーやコンピュータオタク連中を唖然とさせたのは、Richard Stallman氏が、Free Software Foundationの創立者でGPLの創始者であるその人が、自身のサインを10レアル(約3ドル)で販売し、フリーソフトウェア支援者達によるイベントフロアでの写真撮影には5レアル(2ドル弱)の課金をしますという言葉でした。

同氏のレポートによると、200名ほどの参加者はこの“サイン税”に対する抗議の表明として、映画『Star Wars』のダースベーダーのテーマや『Glory, Glory, Hallelujah』のポルトガル語版を口ずさみながら、FSFのブースを行進したということである。また同氏は、Stallman氏は「紳士的に振る舞い、いさぎよくサイン税導入の再検討を約束されました。すべての人間が(彼自身も含めて)楽しい時間を過ごせましたが、これは多くの人間にとって何かを考えさせられる出来事でした」とも記している。

Stallman氏にコンタクトしたところ、今回のレポートに対する同氏の見解を得ることができた。

“サイン税”という大げさな表現は馬鹿げていますね。私は政治家ではないので、税金の支払いを強要することはできません。こうした馬鹿げた表現は、この種の批判を展開している連中の常套手段だと聞かされたことがあります。連中はFree Software Foundationを批判する機会をかぎ回っていて、些細なことを問題に仕立てているのだと。

あれはFISLに到着したすぐ後のことでしたが、ある人物から彼のコンベンションバッジに記念のサインをすることを求められたのです。しかし今回の参加者は何千人もおられるはずですから、全員のコンベンションバッジにサインしていたら、数時間がかりの作業になってしまいます。そこで、サインが欲しいならFree Software Foundationに10レアル(5ドル)の寄付金をお願いします、と答えたのです。同様に数百人から数千人もの人間が、写真を撮りたいのでポーズしてください、と言ってくることも予想できました。それでその場合は、Free Software Foundationに対して約2.50ドルに相当する5レアルの寄付金をお願いすることにしたのです。

サインや写真撮影を頼む人は、ある程度の時間的負担を私に求めているのであり、その分は、私個人が理念に基づいてボランティアで進めている仕事へのしわ寄せとなるのです。そのような作業に取られるトータルの時間はそれほど長いものにならないのが普通であり、効率よく物事を進める意味合いからも、そうした要望をする方々の求めに応じてきました。だからといって、私の時間を彼らが好き勝手にしていい、という訳ではありません。そうした人々に向けて、理念に対する少額の寄付を募るのは、正当な要求だと考える次第です。今回はサインや写真撮影に課金することで、FSFおよびFSF Latin Americaは数百ドルの寄付を得ることができましたし、私自身もバッジにサインするという退屈な作業の数時間分を節約できました。そうした資金は、フリーソフトウェアの理念を普及するという、困難な目標の達成に活用できるでしょう。GNUオペレーティング・システムとは“Linux”であると非常に多くのユーザに誤解されているのが現状であり、フリーソフトウェアという理念に基づいて作成されているものであると認識されていないのですから。

私の考えでは、倫理的観点からすべてのソフトウェアはフリーであるべきだと信じていますが、この場合のフリーとはユーザの自由を尊重する観点でのフリーであって、ソフトウェアを無料化すべきだとは思っていませんし、それはサインや写真撮影などのサービスについても当てはまる話です。自分の行う行為は自分で決める、という自由は誰でも持っているものでしょう。それゆえ私は、サインの無料化という最近の動きには賛同しておりません。むしろここに私は、サインをするか否かを当人が決める自由を擁護する、サインのフリー化運動を提唱したいと思います。

Copyright 2006 Richard Stallman. Verbatim copying and distribution of this entire response are permitted worldwide without royalty in any medium provided this notice is preserved.

原文