「ハリー・ポッター」シリーズに投入されたLustre

「ハリー・ポッター」シリーズ最新作、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で不気味な特殊効果の大半を担当したアニメ制作会社、Framestore CFCのレンダリング・ファームではIntelベースの強力な高速Linuxクラスタが稼働しているのにNFSサーバーのボトルネックのせいで不具合に見舞われることがあった。そこで(ハリー・ポッター風に)Lustreよ来たれと相成り、オープンソースのクラスタ・ファイル・システム、Lustreが、大手と張り合える価格で同社の並外れた食欲、すなわちI/O要求を満たすことになった。

制作スタジオでLinuxを使うのは今や珍しくないが、Framestoreはその先駆けに名を連ねていた。Framestoreが船出した6年前はUnixサーバーが主流で、「Windowsマシンもパラパラあったようだ。我々がLinux路線を選ぶのにそれほど時間はかからなかった」とFramestoreのシステム・サポート・エンジニア、Byrneは言う。OSとして低コストだったからだ。また、同社のサーバーにLinuxをインストールするだけで話は終わらなかった。Byrneによれば、レンダリング・ファームにある600台のワークステーションだけでなく、会社中のその他数百台のマシンでもFedora Coreが動いているという。

最近、ByrneはFramestoreのNFS(Network File System)サーバーを、オープンソースのクラスタ・ファイル・システムであるLustreの稼働するマシンに切り替え始めた。「我々が使うマシンは相当な数に上り、大きな3Dオブジェクトがレンダリング・ファームに送り込まれると、各サーバーで相当量のI/O負荷が発生し、大量の計算を経て他端よりフレームが吐き出される。そのような処理を行うマシンが、例えば1台のNFSサーバーに対して500台存在すると、現実にはうまくいかない。NFSはクラスタ用に設計されていないからだ」

Framestoreとしては、現在のみならず将来にわたって帯域幅不足を心配せずにレンダリング・ファームの規模を拡大できる必要があった。また、Hewlett-Packard製ファイル・サーバーの大量導入で既にかなり投資していたので、改めて特別なハードウェアを購入せず済ましたいと考えていた。「これらが大量にごろごろしていたので、もっと効率的な方法でこれらを再展開したいと思った」とByrneは言う。彼はその他のハイエンド・ストレージ・サーバーも検討したが、Bluearcは「高速のNFSサーバーのようなもので、スケーラビリティがなく」、Network Applianceは「NFSサーバー3台相当」ということだった。

Byrneによれば、FramestoreがLustreに気づいたのは2002年で、まだその初期の段階だった。「折り紙付きの製品と呼べる代物でなく、いろいろ試して、いじくり回す必要があった。そのため会社の人間に納得してもらうのにだいぶ時間がかかった。本番に投入しても大丈夫と確信が持てるまでに約1年の検討が必要だった。」Byrneはその日を見越して、全員のマシンに必要なすべてのものをインストールし、設定も済ましておいた。

Byrneはこれまでに60台のサーバーのうち16台をLustreに切り替えた。現在進行中のプロジェクトが終わればストレージが空くので、スタッフがさらに他のサーバーを新システムへ切り替えることになる。切り替えの過程で解決すべき問題もあった。多くはRed HatカーネルのパッチとLustreのアップデートに由来するもので、バグを見つけて修正することもあった。「Lustreを使い始めた時期がまだ早かったので、参考になるドキュメントがあまりなく、これに取り組む人々も現在ほど多くなかった。多くの問題を、我々や他のユーザーが解明した。現在、この状況はかなり変わった」とByrneは言う。

Byrneによれば、Framestoreにとってオープンソース・ソフトウェアの第一のメリットは、「ものすごい量のI/O」が発生する複雑な3Dショットを、やたら多くのメモリを使わずに処理できることで、それは以前からずっとそうだったという。「必要とする以上のI/O能力があり、しかも現在配備してあるサーバーをすべて使わなくて済むのだ」

もう1つはコスト面のメリット。これでFramestoreもPixarやDreamworksのような大手スタジオと競争できる。「大手には到底及ばない。最新最良のインフラを構築したければ、彼らは指をパチンと鳴らすだけで資金を用意できる。我々はそれほど資金力がないので、競争力を維持するには、もっと安く、しかも速く事を進める必要がある。オープンソースはその能力を我々に与えてくれると思う。事実、これまでずっとそうだった」

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