裁判所図書館をAMPでパワーアップ
米国議会図書館にコンピュータが導入され、図書館アプリケーションが稼動を始めたのが1967年。これが図書目録の標準化元年となった。MARC(MAchine Readable Cataloging – 機械可読目録)仕様は1970年代に米国標準となり、1980年代に国際標準になった。標準が確立されたことで、データリソースの幅広い共有はもちろん、それを操作するためのソフトウェアと、それを収容するためのデータベースの共有も可能になった。
つい昨年まで、Diener博士の図書館は毎年数千ドルを図書館ソフトウェアベンダに支払っていた。だが、ベンダの提供するサービスは、こなすべき仕事に対していかにも力不足であり、裁判所のITチームはソリューションの内製を思い立った。そのソリューションは、ベンダ製品より費用効率にすぐれ、同時に、外部からの参加にも道を開くものでなければならない。
そこで注目されたのがオープンソースである。Apache/MySQL/PHP(AMP)によるソリューションなら、外部組織や他図書館と協力しながら、常時更新可能なソフトウェアポートフォリオを維持できる。必要なら、外国の図書館との国際協力も可能である。しかも、費用を節減できるし、提供するサービスを、州境を越えた広地の法曹人に開放できる。それだけサービスの価値も高まる。
開発の過程では、有用なソフトウェアがいくつも見つかったが、どれもドキュメンテーションが不十分だった、とDiener博士は言う。「欲しいのは、十分な一次資料を記載しながら、わかりやすくて応用範囲の広い例までも収めたマニュアルですが、そういうものはなかなかありません。ただ、MySQLの場合は、2通りの資料がありました。1つはWiley社が出版した4冊からなるWAMP(Windows/Apache/MySQL/PHP)プログラミングマニュアルシリーズです。このうち3冊は一次資料が豊富で、かつ、よい例をちりばめたプログラミング情報も含んでいました。4冊目は主として高度なプログラミングだけのマニュアルです」
「もう1つの資料は、MySQL自体のドキュメンテーションです。私見ですが、MySQLのドキュメンテーションは質量ともに最高ではないでしょうか。私はあちこちをよく拾い読みしますから、全部をプリントアウトして、大型バインダ3冊に綴じ込んであります。これこそドキュメンテーションの見本ですよ」
システム実装の最大の難関は、典拠管理だった。つまり、データベースによるクエリ処理の方法である。たとえば、”jury trials”(陪審裁判)を検索語としてクエリを行った場合、その形の名前またはトピックはプログラム中にただ1つあり、1つしかありえない。システムに必要なのは、一連のキー形成アルゴリズムを実行して、参照語の存在・不在をチェックすることである。つまり、”jury trials”を入力したとき、結果として”See also juries”(「陪審」も参照)が得られるようでなければならない。”jury trials”という検索クエリは、システム中に”juries”というトピックができるまで有効とされず、データベース中に有効なクエリを生じさせない。こうすることでブラインド参照(存在しないトピックへの参照)を防止でき、プログラミングエラーを克服できる。
現在、システムの調子はどうだろう。「まだ、初歩段階」にある、とDiener博士は認める。「ごく少数ながら、指示を読まず、指示に従わず、そのくせすぐに使いこなしのエキスパートになりたがる人がいて……でも、そういう人でもハードに使いこなせるようなシステム」にしなければならない、と言う。
だが、ノースカロライナ州最高裁図書館は、すでに開発プロジェクト予算で数千ドルもの経費節減を実現している。しかも、開発結果には、他州・他国の図書館システムとの共有の可能性もある。