オープンソースに恋した弁護士たち
なんだ、ずっとフリーズしてたのか? いや、そんなの当たり前さ。法律関係の書類は長期に利用できることとプライバシーが保護されることが重要で、それは確実に保証されるべき筆頭項目である。ソフトウェア・プログラムを使っていつでも合法的にアクセスできるのはプロプライエタリでないファイル・フォーマットだけで、たとえば、OpenOffice.org 2.0の標準フォーマットOpenDocumentのようなものだ。翻ってプロプライエタリ・ソフトウェアは、DRM機能付きでロードした場合、黙ってファイルの変更や交換を追跡し、それを第三者へ自動的に報告するかもしれない。弁護士秘匿特権については述べるまでもあるまい。
この数ヶ月、同地(フォッジア)と近くの町(ルチェラ)の2つのオープンソース・ワークグループ — Gruppi di Lavoro – Open Source (GL-OS) — が、同地の弁護士間のIT知識の無償共有やFOSS(Free and Open Source Software)哲学とGNU/Linuxシステムの普及のために活動を続けてきた。実際、彼らは会議や講習会を組織したり、フリーソフトウェアや関連ドキュメントを配布したりしている。彼らの本拠地はフォッジアの裁判所(Palazzo di Giustizia)内にある弁護士会館で、そこに2台のコンピュータがFOSSの可能性を示すためにセットアップされていた。特にOpenOffice.orgについてはいつでも無料でサポートを受けることができ、初心者は個人指導を求めることができる。去る5月、このテーマで両グループが開催したワークショップは盛況を極めた。満足した参加者にはWindowsデスクトップ用のFOSSプログラムを収録したCD-ROMが配られた。
GL-OSの弁護士たちによれば、専らMicrosoftしか使わぬ同業者の多くが、オープンソースの保証するより高いセキュリティと透明性を気に入っているようだ。しかし、世界のほかの地域と同じく、弁護士にFOSSを使わせようとしても実際そう簡単にはいかない。法律関係のソフトウェアやフォームが大量にあって、それがMicrosoft環境でしか使えないからだ。あるプロジェクトのメンバーは、「オープンソースを発見して最初に突き当たる大きな障害は、人々に植え付けられた情報技術のサブカルチャーだ」と言う。つまり、技術以外の障害が最大の難関として残っているのである。
GL-OS の有志は、弁護士が世界のほかの人々と同じく、コンピュータを高級タイプライタぐらいにしか見ていないことを承知している。ツールは新たな問題を作り出すのではなく、仕事に関係する問題を解決するものだというのだ。法律事務所では、Linuxができることのたった2-3%しか実際は必要とされていない。再びGL-OSの弁護士の言を借りれば、「時速5キロでしか移動できないのだからフェラーリは必要ない」となる。したがって、GL-OSがうまく目的を果たすには、徐々に可能な限り痛みの少ない方法で入り込む必要がある。弁護士会館のコンピュータはWindows XPとMandrake 10.1のどちらも立ち上がる。WindowsパーティションにはFOSSプログラムだけが入っている(OpenOffice.org、Firefox、Thunderbird)。これらは、ある弁護士が本当に必要としているもので、問題なく使える。GL-OSを訪れる多くの人々が最初に必要とするIT支援は、フォルダやファイル・マネージャによるファイル管理と暗号化による文書の保護を学ぶことである。その上で、GL-OSはFOSS哲学を紹介する。
今後の計画
GL-OSは、OpenDocumentフォーマットのイタリア語法律フォームの公開を準備しており、カスタムCD-ROMを提供する計画だ。同グループは公式のOOo Community Distributorsになるにはどうすればよいか研究している。その行動計画には、実務講習(特にOpenOffice.org)と、法曹界のFOSSに関する会議も含まれている。長期目標は、FOSSを活用して、さまざまな法律データベースとProcesso Civile Telematicoにアクセスすることだ。後者は、裁判における紙の回覧をできるだけ減らすために進められているイタリアのプロジェクトである。これが実現すると、裁判所に対するすべての請求やその他の文書は、すべて暗号化されたXML形式で記述され、スマートカードによる署名付きで直接提出されるようになる。
GL-OSが今一番必要としているFOSSコミュニティの支援は何かと訊くと、すぐ答えが返ってきた。アプリケーションのインストールと設定のための簡単なマニュアルをもっと増やしてくれというのだ。GL-OSは、ほかの弁護士やFOSSプログラマからの連絡も待っている。彼らは互いに協力し、経験を分かち合いたいと考えている。
イタリアの同種のプロジェクト
筆者がオープンソースを標榜するイタリア人弁護士と出会ったのはGL-OSが初めてではない。Linux World Expo 2004 in Milanで、法律事務所Studio Legale Suttiの業務執行社員Stefano Suttiは、彼の会社が何年もオープンソース・ソフトウェアを使用していると説明してくれた。
また、Linux-Lexポータルは、Linuxへの移行に関心がある弁護士のために多くの情報を提供している。Studio Legale Suttiは、Webベースの法律事務所管理アプリケーションKnomosの開発を委託し、その後、それをGPLライセンスのもとで発表した。同スペースには別のプロジェクトeLawOfficeがある。最近、これはエンド・ユーザーからフィードバックを受け取るようにオンライン・コミュニティの体制を整えた。eLawOfficeの基本的な機能は便利なものばかりで、ほとんどのコードは他国の弁護士も再利用できるはずである。このプロジェクトのLinksページには、さらに多くのリソースへのリンクが掲載されているが、ここでは紹介しきれない。
今日、FOSSをめぐる法律上の厄介な問題は国境を越える傾向があり、FOSSの推進に関心のある弁護士のネットワークを構築することが重要と思われる。E.U.では、ハッカーと弁護士が協力することで、欧州のデジタル相互運用におけるFOSSの役割を最大限高めることに成功するに違いない。また、これらの(いまのところ)孤立している世界中のグループは、Software Freedom Law Centerを通じて連携の道を探ることになるのだろう。
原文