OpenLDAP:ビジネスの未来か?

OpenLDAPは、オープンソースをエンタープライズで利用できるレベルにようやく押し上げる触媒である ─ Mark Taylorは、そう信じて疑わない。そして、彼は事業の命運をこれに託すつもりだ。

Taylorは、Sirius ITの創立者で、現CEOの地位にある。英国を拠点としつつも全ヨーロッパで事業を展開するSiriusは、企業向けのオープンソースのトレーニング、配備、サポートを主な業務とする。顧客には、政府機関のほか、ペプシ、ペンタックス、トヨタ、Make-A-Wish Foundationなどの大企業が名を連ねる。

TaylorがSiriusを設立したのは1988年末。資金は「ゼロ」だった。ベンチャー・キャピタルはおろか、銀行融資も得られなかった。「フリーソフトウェアの会社を起こそうと思ったんです。フリーソフトウェアは、しだいにビジネルモデルとして真面目に検討されるようになりました。誰も知らないような企業との取り引きから始め、徐々に事業を伸ばしてきました。取り引き先の規模はどんどん大きくなって、1人きりの楽団から数人の友人へ、さらに本格的なビジネスへと成長しました」

昨年、Siriusの売り上げは300%増加し、175万ドルを突破した。正社員の11人に加え、必要な時点で契約を結んで勤務する「準スタッフ」が30人いる。

Siriusの業務内容は4つだ。まず、コンサルタント業務がある。オープンソース・ソフトウェアを導入できる領域について、民間企業や公共機関にアドバイスしている。「今使っている技術に伴うリスクを減らすためにオープンソースを利用できないか、という相談が来ますね」と、Taylorは言う。

「開発も業務の1つです。依頼によりオープンソース・ソフトウェアを作成します。ペプシには、セキュリティ、イントラネット・システム、電子メール・システムを作成しました。オープンソース・ソフトウェアだけを使用している、ある建築会社には完全なバックエンド・システムを構築しました」

第3の業務は、オープンソース・システムのサポートだ。Taylorによると、サポートは比較的新しい業務で、顧客からの要望で始めたという。

また、SambaとSquidのトレーニングも提供している。Sambaを使うと、UnixやUnix系のOSが稼働するシステムは、Microsoftネットワーキング・プロトコルを使ってサービスを提供できる。その結果、Microsoftから提供されるネイティブのネットワーキング・クライアントを使用するDOSやWindowsのマシンからUnixのファイル・システムやプリンタにアクセスすることが可能になる。Squidは、Webクライアント用の高性能プロキシ・キャッシュ・サーバであり、FTP、gopher、HTTPのデータ・オブジェクトをサポートする。

Taylorは、オープンソース・ソフトウェアに「特化した」ビジネスを維持し、エンタープライズで利用できるレベルのソフトウェアを「どの企業でも真に利用できるようにする」ことを長期プランに掲げる。

「フリーソフトウェアがビジネスにおいて成功するうえで鍵となるのは、製品をベースとする企業ではなく、サービスを提供する企業にすることですね。将来、ハードウェアは日用品として利用できるものになるでしょう。弊社は、純粋なオープンソースの専門知識をもって、サービスの側で他社をリードすることを目指しています。英国でも最高の協力者と手を組んでいます」

Siriusを通じてTaylorが熱心に取り組んでいるのは、Linux、Apache、MySQL、PerlまたはPython(LAMP)などのオープンソース・ソフトウェア・コンポーネントを使って、「完全なエンタープライズ・スタック」を提供することだ。ビジネスの世界では、スタックは、特定の目標を達するために連携させて動かす複数のプログラムの総称である。具体的には、社内のすべてのオフィス機能を担うことが目標となる。スタックには、電子メール、予定表、共有メールボックス、アンチウイルス、アンチスパム、イントラネットなどが含まれる。現在使用可能で、なおかつ利用されているオープンソース技術のうちでLAMPを基盤とするものはまだ多いとTaylorは見ているが、そう遠くない将来にOpenLDAPが「オープンソース・エンタープライズ・スタック全体を支える基軸となる」と予想している。

OpenLDAPは、Lightweight Directory Access Protocol(LDAP)をオープンソースで実装したものである。LDAPは、サーバにある連絡先情報を検索するためにプログラムで使用できるプロトコルだ。ビジネスは人とリソースを中心に組織されるので、そういったリソースにアクセスし、役に立つ情報を作成できるオープンソース技術であるOpenLDAPは価値があると、Taylorは言い切る。

OpenLDAPを使用すると、エンタープライズ・グループウェアとユーティリティに関連するさまざまなオープンソース・プロジェクトをさらに密に統合できると、Taylorは考えている。「協力して、さまざまな技術をシームレスに統合できるでしょう」と彼は言う。

そうした場合でも、ほとんどの企業にとって、たいていのソリューションで使用される技術には不適切な点があることが多いと、Taylorは言う。「企業にとり重要なのは、多くのプロプライエタリ・ソフトウェア・ライセンスに伴うコストとリソースの重荷を負わないことです。そして、大半の企業が心から憂慮することは、制御できない未来をどうすれば避けられるかです」

「私たちのビジネスは、こういった問題を解決するパッケージを顧客に提供することに専念しています」

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