SCOを自滅させよう

SCOとオープンソース・コミュニティの対立は激しさを増し、いまにも開戦しそうな様相を呈している。振り返ってみるとこれは、すべてのオープンソース・ライセンスが無効になるような理論を盾にして告訴するという意思をSCOが明らかにした時点で、避けられない事態だったのではないかと思う。

「ダール」・ベイダーの背後に隠れているパルパティーン皇帝が誰なのかは、われわれの誰もが知っていることだ。この存在が、最低でも600万ドル[注1]という多額の訴訟資金を提供して糸を引いているのだ。8月25日更新

SCO/CalderaのWebサイトには今日、大量のDoS(サービス拒否)攻撃が仕掛けられている。このタイミングと、Slashdotなどに投稿されたゴシップ、そして私のメールボックスの中身から判断するに、このDoS攻撃は、Darl McBrideがインタビュー[注2]でオープンソース・コミュニティはIBMのあやつり人形だと中傷したことと、それに対する私の反応[注3]を受けて引き起こされたとしか考えようがない。

どうやら私は、ここ数ヶ月でSCOの罵詈雑言がますますひどく、攻撃的になっていく中で、われわれの多くが感じていたことを代弁するのに成功したらしい。私は、McBrideからの個人攻撃など気にも留めなかったが、多くの人々から受け取った温かい応援のメールには非常に感謝し、恐縮している。メールをくれた方の中には、私が先陣を切ってこの戦いを戦うよう望んでいる人も相当数いるようだった。最初の「Windows Refund Day」に着るためにSVLUG(Sillicon Valley Linux Users Group)の人々があつらえてくれた、オビ=ワン・ケノービの衣装を引っ張り出すべき時が来たのかもしれない。皆さんの期待に応えられるよう、努力する。

そして、私の持つすべての権限において、DoS攻撃を今すぐやめるようお願いする。今すぐやめてほしい。この戦いに勝つには、もっといい方法があるのだから。

SCOに対してDoS攻撃を行うのがなぜいけないのか。これには3つの理由がある。

1. われわれは善人だ。しかし、善人であることが明らかでなければ意味がない。破壊行為や不正、発言の妨害などの手段で戦おうとすれば、SCOはわれわれにクラッカのレッテルを貼り、勝利を収めるかもしれない。道徳面で、優位に立とう。

2. もっと効果的な方法がある。われわれには、驚くほど強力な事実がある。SCOは複数の嘘、大規模なIP違反、名誉毀損発言で身動きが取れなくなっている。SCOを滅ぼすには、法的手段を取ればいい。

3. SCOの最大の敵は、SCO自身だ。広報担当が一言発するたびに、SCOの墓穴は深くなっていく。SCOforumでの発言内容を追っていけばわかるとおり、たった3日前に比べてもわれわれの立場は有利になっている。

SCOが公衆の面前でたわごとを言ってくれた方が、われわれには有利なのだ。SCOは何か言うたびに自らの首を絞めているのだが、そのデマ戦術に自らはまってしまったために、賢い対応をしたり、言葉を慎んだりすることができなくなっている。彼らが抱えている問題は、FUD活動をやめ、人々が真実を見つめる[注4]ことができるようになってしまうと、彼らの信頼性は消えうせ、株価は暴落してしまうであろうことだ。Microsoftがサクラや専属のアナリストを総動員して根回しを行っても、SCOを救うことはできない。

だから、DoS攻撃はやめて、SCOが自らの発言で自滅するのを待とう。

現時点で最も役立つ行動は、SCOが発表した声明を集め、いかに彼らが矛盾していて、真実をねじ曲げているかを指摘することだ。ここ連合本部のリサーチ・チーム[注5]も見つけられなかった事実面と法律面での脆弱性を明らかにした、非常に有用な資料を電子メールで受け取った。 たとえば、Greg Leheyの分析[注6]では、SCOforumでSCOが公開したコードでは、うかつにもカーネル・ツリーにBSDの著作権が表示されたままだということが指摘されている。また、UnixwareのLinux Personality ModuleにGPLのコードが含まれていると考える根拠を示したいくつかの報告も有用だった。

われわれの大きな武器は、SCOにはない、分散された頭脳だ。われわれには大勢の仲間がおり、インターネットでの調査にも優れている。SCOに戦いを挑みたいなら、SCOのWebサイトやFTPサイトから入手できる、彼ら自身の声明や10K、10Q、そしてマスコミの報道を利用すればいい。情報を照合し、まとめてみよう。事実はわれわれの味方なのだから、事実を集めて利用すべきだ。Star Warsのたとえは忘れてほしい、これは情報戦争だ。信用でき、証明できる真実こそが、武器となる。

IWeTheyのSCOvsIBMページ[注7]やWeLoveTheSCOInformationMinister[注8]などのサイトがただのジョークで終わっていないのは、SCOの悪意や嘘、そして知的財産の大規模な窃盗を弁護士たちが立証するための貴重なリファレンスとなっているからだ。これをより強力にしよう。IWeTheyのwikiページでは、最新の情報と、よりよいクロス・リファレンスをぜひとも必要としている。これらの情報を利用すれば、予想よりも早く、SCOを打ち負かすことができるだろう。

私は、今週の前半にも、何人かのリーダーたちと電話会議を行い、今後の対応について話し合う予定だ。もう少し辛抱してほしい。現在検討中の計画には、皆を驚かすような要素が含まれているので、まだ発表できないのだ。われわれは、自分たちが選んだ時と場所で反撃し、勝利を収めるのだ。

反乱軍臨時指令、通信終わり。

[注1]http://www.infoworld.com/article/03/08/08/31OPcringely_1.html

[注2]http://www.nwfusion.com/news/2003/0825scoatta.html

[注3]http://www.catb.org/esr/writings/mcbride.html

[注4]http://www.opensource.org/sco-vs-ibm.html

[注5]リサーチ・チーム:私と、Rob Landley、Catherine Raymondの各氏。

[注6]http://www.lemis.com/grog/SCO/code-comparison.html

[注7]http://twiki.iwethey.org/twiki/bin/view/Main/SCOvsIBM

[注8]http://WeLoveTheSCOInformationMinister.org/

8月25日更新:たった今、SCOのネットワークに対してやはりDoS攻撃が行われていたという確認が取れた。これは、1人の熟練したインターネット・エンジニアによって計画された、比較的高度な攻撃であった。この人物は、私の請願[注1]に応える形で攻撃を中止することに同意してくれたが、彼のプログラムはタイマで制御されているため、実際に攻撃が終了するのはまだ先だ。

私はこの攻撃者が誰なのか知らない。知りたいとも思っていない。私に電話をくれたのは彼自身ではなく、彼の代理人であった。攻撃者がスクリプトキディでないことは明らかで、SCOをホスティングしているサブネットのうち、一部のサイトだけを対象とし、外部からはサイトが停止中であるかのように見せるという、巧みで選択的な攻撃を行っていた。

私はこの攻撃が、(リーダーの1人が希望すれば攻撃を中止するという意思を除いては)オープンソース・コミュニティとは直接関係がない、どこかの若いクラッカによって行われたものであってほしいと望んでいたし、実際そうだろうと思っていた。しかしそうではなかった。私はこの攻撃者のバックグラウンドや、その攻撃方法を知り、彼がわれわれの仲間であることを確信した。そして私はこのことを非常に恥じている。

この攻撃は間違った行為であり、われわれの目標を脅かすものだ。しかし、SCOの挑発が度を越していたのも事実だ。3月以来SCOは、オープンソース・コミュニティとわれわれの行ったすべての仕事に対して、脅し、口汚い侮辱、攻撃を繰り返してきた。この攻撃を行った人物に対して、同情していないと言えば嘘になる。

しかし、この過ちは二度と犯してはならない。SCOだけでなく、ほかの略奪者に対してもだ。挑発がいかに悪辣であっても、違法行為によって彼らと戦おうとすれば、現在SCOを経営している泥棒や嘘つきたちと同じレベルに成り下がってしまう。これは非倫理的であるだけでなく、戦略としても非常に不利だ。

世間の評判は、時には判決にも影響するほどの力を持っている。SCOや、その背後で糸を引いている巨悪に打ち勝つためには、われわれは正しい行いをし、さらに、それを印象付ける必要がある。このような情報戦では、最も強力な武器は真実であるが、それに負けずとも劣らないのが、美徳と誠実さに関する評判だ。これを失うような行動は慎もう。

最後にもう1つお願いがある。少なくとも公開フォーラムで、SCOとMicrosoftの共謀を理論的に実証する努力を続けてほしい。SCOは今、Microsoftの操り人形のようにふるまっているが、訴訟に先立って共謀があったという証拠はつかめておらず、また、これが両社の行動を説明するものだとする理由もない。彼らがずっと昔から陰謀を企てているなどと憶測しても、被害妄想のように見えるだけだ。あくまでも事実にこだわろう。略奪者、そして独占企業としてすでに断罪されているMicrosoftは、自らの唯一の敵を相手取ってSCOが起こした訴訟に、60万ドルを超える巨額の資金を提供している。そして、これがSCOの唯一の収入なのだ。憶測など必要ないほどの事実ではないだろうか?

反乱軍臨時指令、えー…、ご協力に感謝する。すぐに次の指令を出す。上空に注意せよ。

[注1]http://lwn.net/Articles/46229/

編集部注:この記事に含まれる意見はRaymond氏のものであり、NewsForge編集部やOSDNの経営陣の見解と一致するとは限りません。ただし、Raymond氏と同様、NewsForgeの編集者やライターも、SCOの行動に関して執筆する(または執筆しない)ようIBMから買収または強制されているという事実はありません。