SCOのCEO、Darl McBrideへの公開書簡

McBride殿
私は昨晩遅く、SCOはIBMが企てた陰湿な謀議の犠牲者であるとあなたが主張しているのを知った。Open Source InitiativeやFree Software Foundation、Red Hat、Novellなどのオープンソース推進派がいま立ち上がっているのは、自分たちの信念や利益のためではなく、アーモンクの黒幕がそそのかしたからだとマスコミや大衆に思い込ませようとしているのだ。「わはははは!マインド・コントロール光線を発射せよ!」

SCOと現実との間に存在するギャップを理解するには、自分の会社がいかに迫害されているかを訴えるあなたの言葉に耳を傾けるのが一番だ。この騒動は、3月6日、IBM相手の訴訟を起こすための手段として、あなたがオープンソース・コミュニティの犯罪性と無資格を告発したときに幕を開けた。以来あなたは、会社の排他的な利益のために、われわれの自発的労働を我が物にしようとし、弁護士たちは、GPLだけでなく、われわれのコミュニティが拠って立つすべてのオープンソース・ライセンスを抹殺するという計画を発表した。まるでわれわれが、SCOに対抗するためにIBMから資金提供や指示を受ける必要があったかのような話をでっち上げたことは、私の理解を超えている。IBMはむしろ、われわれが決起するのを止めようとして、失敗したのだ。

次の2つの、どちらが痛ましいだろうか。SCOのCEOとして、戦略上の理由から心にもない嘘をついていると考えることと、正当な怒りをあなたが本当に理解できていないと考えることだ。情報操作をする人から見れば、すべての行動が操作のように思えるはずだし、策謀家にとっては、すべての異議が策謀に見えることだろう。あなたもそうなのだろうか?人々が、誠実さや道徳観念、あるいは単なる自衛目的から、共通の利害を見出すことがあるのを、あなたは本当に忘れてしまったのだろうか?あなたが考える真実とは、そんなにゆがんだ、醜いものなのだろうか?

私は、現在SCOが問題にしている人物や組織の大部分と、ほぼ定期的に連絡を取っている。われわれの間に陰謀があるとすれば、それはオープンソース・コミュニティがSCOの強欲と自暴自棄によってつぶされるのを防ぐという共通の利益のためだ(さらにわれわれは、あなたがSCOforumで自らの正当性を証明しようとして、SCOに関するマスコミの報道を持ち出していることからも、SCOがいかに自暴自棄になっているかを判断できる。私の知る限り、製品ではなく、報道内容で自らの正当性を主張しているのはSCOぐらいのものだ)。

私が連絡を取っている組織の中には、実はIBMも含まれている。なんと、IBMはあなたよりも賢いのだ。IBMは理解しているがあなたは理解していないことが1つある。それは、SCOとIBMの間で起きているような対立においては、追従者やサクラの支援者などよりも、個人の自発的な連合のほうがはるかに価値があるということだ。連合は主導権を持ち、しかも柔軟だ。追従者が本部からの指示を待っている間に、連合ではあなたを困らせる方法を考え出すことができる。このような方法は、心配性の本部では使いたがらないだろう。IBMの弁護士がこの手紙を承認したらどうなるか、考えてみてほしい。

連合の理想的な形は、各自の強力な信念や主義、友人や知人、そして将来のために形成されるものだ。IBMにはこのような連合が数多くあるが、あなたの傲慢さやうぬぼれ、侮辱、脅しが、それらを誕生させたのだ。

あなたはこれらのすべてを、被害妄想的な誇張によって封じ込めようとしている。なんとも古典的な手段だ。最後には退治されてしまう、B級映画の悪漢のような役回りを演じるのは、あなたの本望なのか?悪者を演じるのは楽しいか?あなたの手下はみな、思い通りにへつらっているか?「Torvaldsさん、死んでもらおう」あなたの恐怖の要塞にふさわしい、不毛の土地は見つかったかどうか訊きたいところだが、それには及ぶまい。あなたはユタにいるのだから。

こんなことにならずに済む方法はあるはずだ。健全さは勝利できるはずだ。SCOforumにJeff Gerhardtが投稿したメッセージを引用する。

かつてCalderaという社名で知られ、現在はSCOとして営業している企業が、近ごろ、Linuxカーネル2.4の一部のコードは不正に流用されたものだと主張している。しかし、われわれオープンソース・コミュニティのメンバは、知的財産権を尊重しており、自分たちの問題は自分たち自身のコードで解決できると自負している。Linuxカーネルの中に不正流用されたコードが含まれている場合には、われわれのコミュニティはその一部も必要としないため、削除する。

われわれはSCOに、流用の疑いを持たれているコードのファイル名や行番号、そして権利を侵害しているという根拠を示すよう要求した。仮に不適切な部分があったとしても、この情報の公開がない限り、それを正すことはできない。SCOが自らの所有権を保護しようと本当に考えているのなら、株価を上昇させるためや、嫌がらせをしたことに対する報酬をMicrosoftから受け取るための単なる告訴という形ではなく、できるだけ早く、問題が深刻化しないうちに問題が解決するよう努力するはずだ。それならば、われわれも喜んで協力する。

しかし、オープンソース・コミュニティは、SCOがLinuxに関して、プロプライエタリ化やライセンス料の徴収権を主張するのを黙って見ていることはしない。これは、何千人もの有志のプログラマたちの作業を乗っ取ろうとする許されざる行為であり、食い止めなければならない。

SCOが今後、誠意を持ち、協力的な対応を取れば、われわれもそれに応える。しかし、そうでない場合は、これまでと同様、コミュニティを略奪から守るためには対立的な手段を取ることも辞さない。

Linus Torvaldsは、この方針を支持している。ほかのリーダーたちや、Unix哲学の大家たちも支持してくれるだろう。問題になっている部分を示してほしい。われわれが作ったものの中にSCOのコードが含まれているなら、削除しよう。あなたに脅されたからではない。その部分がIBMから提供されたものであろうと、そうでなかろうと、それが正しい対応だからだ。そうすれば、あなたは弁護士を解雇でき、全員がハッピーエンドを迎えることができるはずだ。

この提案を受け入れるなら今のうちだ。あなたの言う「証拠」は検閲済みだ。支持者が1人もいなくなる前に降参した方がいい。あなたが考えなければならないのは、IBM相手に仕掛けた、契約に関する争いにどうやって決着を付けるかだ。私が考えなければならないのは、OSIの会長として、略奪者や詐欺師からオープンソースのハッカーたちをどうやって守るかだ。Linuxや、われわれが作成したその他のコードを抹殺しようとするのをやめないならば、こちらも黙ってはいない。

念のため付け加えておくと、3月6日以降に(それ以前であっても、この問題に関して)私が発言または執筆したもののうち、IBMから命令されたり、検閲を受けたものは1つとしてない。すべては私が、オープンソースへの貢献者を守るために最善を尽くした結果だ。IBMもあなたも、私を買収してこれをやめさせることはできない。金額の問題ではなく、金に換えることができないのだ。私を侮辱するような提案は一切受け付けない。

あなたには選択肢が2つある。悪人を演じるのをやめ、公平な、人間らしい態度でわれわれに対応するか、それとも現在のような態度を取り続けるかだ。後者の場合、われわれも迷惑をこうむる可能性があるが、あなたやSCOの幹部にとっては完全な破滅を意味する。詐欺、知的財産権の侵害、訴訟教唆、株価操作などの容疑で収監される可能性さえあるのだ。あなたは私の電子メールアドレスを知っているし、お望みなら電話番号をお知らせしてもいい。あなたが真実を語ろうとするならば、誠意をもって聞くことを誓おう。

Eric S. Raymond
esr@thyrsus.com
Open Source Initiative会長
2003年8月22日(金)

編集部注:この記事に含まれる意見はRaymond氏のものであり、NewsForge編集部やOSDNの経営陣とは無関係です。ただし、NewsForgeの編集者やライターが、SCOの行動に関して執筆する(または執筆しない)ようIBMから買収または強制されているという事実はありません。

編集部注(2):もし、McBride氏が主張しているとおり、コンピュータ関連の報道にSCOが登場する回数がSCOの正当性に比例しているならば、少なくとも今週は、sobig.fウィルスの作者のほうが、SCOよりはるかに正当性が高いことになります。