SCOはLinuxの開発を放り出して、Linuxユーザを脅している

米SCO GroupはLinuxビジネスから手を引いて、法廷に活動の場を移す。それが、今週SCOが顧客宛に送付している 手紙の趣旨である。同社は、「Linux関連の活動」を停止する一方で、保有するUnixの知的所有権を積極的に保護することを発表した。同時に、SCOは「Linuxの開発プロセスに起因する法的責任は、エンド・ユーザにも及ぶ可能性がある」として、Linuxのユーザはだれもが訴訟の対象になり得ることをにおわせている。

1つの会社の経営陣が、これほど間違った考えにとらわれることがあるものだろうか?

2か月前にSCOは、米IBMが「SCOの知的所有権下にあるソフトウェアを悪用および不正流用し、他者を誘導、助長して、不正流用の機会を与え、SCOの知的所有権下にあるソフトウェアをオープンソース ・ソフトウェア製品に組み込んでいる(また、他者を誘導、助長して、組み込む機会を与えている)」として、このコンピュータの巨人を相手取って訴訟を起こした。

SCOがUnix System Vの権利を保有していることは事実である。SCOの前身にあたるCalderaが、1995年にNovellからその権利を獲得している。1960年代にUnixを生み出したAT&TからNovellが権利を購入した2年後のことである。また、SCOがこの権利を活かしてビジネス上の優位性を維持したいのであれば、権利を強く主張する必要があることも事実である。

けれども、SCOが非難しているような行為をIBMが行ったかどうかははっきりしていない。LinuxはUnixのクローンだが、だからといって同じソースコードが使われているわけではない。ビジネスの世界では、成功した製品をリバース・エンジニアリングする会社のことは昔からよく知られている。今回の事例では、IBMは何千人ものオープンソース・プログラマ――いずれもSCOが10億ドルの訴訟を仕掛けるには、あまりに数が多く、あまりに金のない人々――の成果を利用している。

裁判官はソースコードを調べて、どの部分が不正流用を構成するのかに関する主張を聞く必要があるだろう。仮にSCOの主張を認める判決が出たとしても、適切な刑罰が確定するまでに何年もかかる可能性がある。(Microsoftの反トラスト法違反訴訟が良い例だ。)

法律上の意味合いだけでなく、最新の声明はオープンソース開発自体に対する辛辣な攻撃になっている。曰く、

商用ソフトウェアは、独自開発の安全なソフトウェアを作るために努力する、慎重に選りすぐられたプログラマのチームによって作成されている。このプロセスは、セキュリティ、およびコードに付随する知的所有権の帰属を監視するしくみになっている。

これに対して、Linuxの大部分は、非常に多くの、つながりのない未知のソフトウェア開発者が個々に提供したコードの一部を基に作成されている。Linuxの開発プロセスには、知的所有権、機密保護、またはセキュリティが守られているかどうかを検証するしくみが備わっていない。Linuxのプロセスでは、公然と盗まれたコードや、知的所有権で保護された方法と概念を不正に使用して開発されたコードの混入を防ぐことができない。

オープンソース開発者は、知的所有権の盗用を防ぐように作られた企業プロセスに従っていないというSCOの主張は正しい。その代わり、もっと強い力が働いている――誇りである。オープンソース開発者は、コードでのみ評判を得ている――収入でも職種でもない。良い仕事をするという誇り、他人に正当に帰属する成果物を盗まないという誇りは、オープンソース開発者が良心を持ち続けるうえで、いかなる企業ポリシーよりも有効に働いている。

SCOが最終的に何を目指しているかを見極めることは難しい。多くの企業は、ほかに存続する道がないことを悟ると、訴訟に最後の望みをかけて収入を得ようとする。それがSCOのもくろみかもしれない。SCOは今月末に四半期の順調な収益を発表する見込みだが、この会社の収益は悪化の一途をたどっている。

あるGartnerのアナリストは、このIBM訴訟を、買収候補としてのSCOの魅力を高めるための手段だと断定している。しかし、それはありそうにない――SCOの顧客ベースよりはるかに人数の多いオープンソース・コミュニティの全員が、SCOに関連するものすべてを軽蔑の目で見るようになっている。面倒を避けるためにIBMがSCOを買収する可能性はほとんどない。

SCOの年次株主総会が、金曜日にユタ州の本社で開催される。現在のこうした動きについて、報道陣からも顧客からも必ず投げかけられる質問にSCOがどのように応対するかを見るのは興味深いことに違いない。

SCOには、Linuxビジネスを停止する理由はほとんどない。私は、IBM訴訟を発表して以来、Linux製品の売り上げが厳しくなっていたのではないかと勘ぐっている。現在OpenServerとUnixWareを使用している顧客は、この動きを警鐘と見るべきである。法廷闘争が長期化して会社の財源が枯渇する一方で、愛想を尽かした顧客が離れてゆけば、SCO Linuxが消えたように、ほかのオペレーティングシステムも今後消えてゆくだろう。SCOの顧客は、将来起こり得る移行に備えるために、今すぐサーバ・プラットフォームのほかの選択肢を検討すべきである。